団長様、再婚しましょう!~お転婆聖女の無茶苦茶な求婚~

甘寧

文字の大きさ
9 / 23

9

しおりを挟む
「さあ!遊びますわよ!」

 役目を終えたシャルルは、露店が立ち並び賑わいを見せる街中へとやって来た。

「あまり遠くへ行っては駄目ですよ」

 後ろからルイスが、子供に言い聞かせるように声を掛けて注意を促している。
 その横ではラリウスがクスクス笑ってるが、気分が上がっているシャルルの視界には映りもしない。

「姉御!待ってください!」

 ダグら新米護衛達が、人混みに紛れるシャルルを見失わないように必死で追いかけている姿は、昨年の自分を見ているようだとルイスがしみじみと呟いた。

「正直、あのゴロツキ達を護衛にするのは反対だったんです。団長様が承認してしまったら仕方ないと、渋々教会へ入れたんですが、こうして見ると彼らも役には立つようですね」
「彼女のお世話は大変そうですしね」

 そんな話を交わしながらも、ラリウスは周りからの黄色い声に手を振って応えている。そんなラリウスを見て、貴方も大変そうだとルイスは心の中で呟いた。



 一方、シャルルはいつの間にかルイスとラリウスの姿は見えなくなり、ダグ達が息を切らして来たところで立ち止まった。

「ここまで来れば大丈夫ですわね」
「はぁ…はぁ、はぁ……ちょ、ちょっと休憩……」

 人混みから外れ、その場にしゃがみこんで息を整える。

「だらしないですわねぇ。そんなんじゃ、私の護衛は務まりませんわよ?」

「無茶苦茶だ」と文句を口にしたいが、息が切れて言葉にならない。

 シャルルがワザと人混みに紛れたのは、口煩いルイスを撒くため。ついでにラリウスも撒けたのは好都合。

 本来なら護衛であるレオナードの横を歩きながら、楽しく祭りを回る予定だったのだが……

 チラッと視線を向けた先には、横たわる新米騎士達の姿。

「本当はレオナード様と街を散策したかったのですけど……仕方ありませんわ。彼も忙しい身。大人しく引くのも、いい女の在り方です」

 ウンウンと自分の意見に頷いていると「あっ!」と シャルルの耳に明るい声が聞こえた。

 もう見つかったのかと驚きながら振り返ると、玩具を見つけた子猫のように目を輝かせているリオネルが立っていた。

「おじさん!」

 リオネルはシャルルなど目にも留めずに横を通り過ぎ、真っ直ぐダグの元へ駆け寄った。

「おお、坊主!久しぶりだな!」

 こちらも嬉しそうに飛びついたリオネルを高々に持ち上げて、その場は一気にリオネル中心となっている。彼らは一応聖女付の護衛となっているが、つい先日までただのゴロツキだったので、剣の腕前がめちゃくちゃ。その為、時間の余っている騎士達が基礎から教えてくれている。基礎を教えるならとリオネルも一緒に稽古をつけてもらっているので、自然と仲が深まったらしい。

 そんな感じで、完全に蚊帳の外に放り投げられたシャルル。自分よりも先にリオネルに懐かれて悔しくないと言えば嘘になる。

(口惜しいですわ……!)

 ギリッと唇を噛みしめながら恨めしそうに見るが、その輪に入る手段がない。

「あれ?シャルルいたの?」

 いつもならイラっとする言葉も今は気づいてもらえたことに喜びすら感じる。ダグもようやくシャルルの存在に気付いたらしく「すいやせん!」と頭を下げていた。

「もういいですわ……折角ですから貴方も一緒にどうです?」

 断られるだろうと思いつつ、リオネルに声をかけると「いいの!?」と何とも子供らしい顔をしてくれた。これにはシャルルも驚いたが、笑顔で頷くと迷子にならないようにと手を差し出した。

「僕、おじさんとがいい!」

 ……だと思いました。

 苦笑いを浮かべたダグに肩車され、ご機嫌のリオネル。傍から見れば親子だと見間違える光景に、シャルルは涙が込み上げてくる。

「これがレオナード様だったら……」

 どんなに最高だったか……

「おいおい、俺だって中々だろう?」
「私はレオナード様がいいんですの!」

 グズグズと嘆いているシャルルに物申すが、それは火に油を注ぐ様なもの。頭上から「諦めが悪いなぁ」とリオネルの冷たい言葉が降り注ぐ。

「ほ、ほら、姉御!西洋のお菓子だって!」
「こっちは呪いの人形スっよ!」

 他の二人が寄って集ってご機嫌を取ろうとしてくるが、シャルルはムッと頬を膨らませたまま。

 さて、困ったと顔を見合せた時──

「魔獣だ!魔獣が襲ってくる!急いで逃げろ!」

 顔面蒼白の騎士が、息絶え絶えになりながら駆けて来た。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります

樹結理(きゆり)
恋愛
突然異世界に召還された平々凡々な女子大生。 勇者になれと言われましたが、嫌なので引きこもらせていただきます。 平凡な女子大生で毎日無気力に過ごしていたけど、バイトの帰り道に突然異世界に召還されちゃった!召還された世界は魔法にドラゴンに、漫画やアニメの世界じゃあるまいし! 影のあるイケメンに助けられ、もふもふ銀狼は超絶イケメンで甘々だし、イケメン王子たちにはからかわれるし。 色んなイケメンに囲まれながら頑張って魔法覚えて戦う、無気力女子大生の成長記録。守りたい大事な人たちが出来るまでのお話。 前半恋愛面少なめです。後半糖度高めになっていきます。 ※この作品は小説家になろうで完結済みです

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

引きこもり少女、御子になる~お世話係は過保護な王子様~

浅海 景
恋愛
オッドアイで生まれた透花は家族から厄介者扱いをされて引きこもりの生活を送っていた。ある日、双子の姉に突き飛ばされて頭を強打するが、目を覚ましたのは見覚えのない場所だった。ハウゼンヒルト神聖国の王子であるフィルから、世界を救う御子(みこ)だと告げられた透花は自分には無理だと否定するが、御子であるかどうかを判断するために教育を受けることに。 御子至上主義なフィルは透花を大切にしてくれるが、自分が御子だと信じていない透花はフィルの優しさは一時的なものだと自分に言い聞かせる。 「きっといつかはこの人もまた自分に嫌悪し離れていくのだから」 自己肯定感ゼロの少女が過保護な王子や人との関わりによって、徐々に自分を取り戻す物語。

男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~

百門一新
恋愛
男装の獣師ラビィは『黒大狼のノエル』と暮らしている。彼は、普通の人間には見えない『妖獣』というモノだった。動物と話せる能力を持っている彼女は、幼馴染で副隊長セドリックの兄、総隊長のせいで第三騎士団の専属獣師になることに…!? 「ノエルが他の人にも見えるようになる……?」 総隊長の話を聞いて行動を開始したところ、新たな妖獣との出会いも! そろそろ我慢もぷっつんしそうな幼馴染の副隊長と、じゃじゃ馬でやんちゃすぎるチビ獣師のラブ。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。

「偽聖女」と追放された令嬢は、冷酷な獣人王に溺愛されました~私を捨てた祖国が魔物で滅亡寸前?今更言われても、もう遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢フィーア・エメラインは、地味で効果が現れるのに時間がかかる「大地の浄化」の力を持っていたため、派手な治癒魔法を使う異母妹リシアンの嫉妬により、「偽聖女」として断罪され、魔物汚染が深刻な獣人族の国へ追放される。 絶望的な状況の中、フィーアは「冷酷な牙」と恐れられる最強の獣人王ガゼルと出会い、「国の安寧のために力を提供する」という愛のない契約結婚を結ぶ。

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

【完結】裏切られ婚約破棄した聖女ですが、騎士団長様に求婚されすぎそれどころではありません!

綺咲 潔
恋愛
クリスタ・ウィルキンスは魔導士として、魔塔で働いている。そんなある日、彼女は8000年前に聖女・オフィーリア様のみが成功した、生贄の試練を受けないかと打診される。 本来なら受けようと思わない。しかし、クリスタは身分差を理由に反対されていた魔導士であり婚約者のレアードとの結婚を認めてもらうため、試練を受けることを決意する。 しかし、この試練の裏で、レアードはクリスタの血の繋がっていない妹のアイラととんでもないことを画策していて……。 試練に出発する直前、クリスタは見送りに来てくれた騎士団長の1人から、とあるお守りをもらう。そして、このお守りと試練が後のクリスタの運命を大きく変えることになる。 ◇   ◇   ◇ 「ずっとお慕いしておりました。どうか私と結婚してください」 「お断りいたします」 恋愛なんてもう懲り懲り……! そう思っている私が、なぜプロポーズされているの!? 果たして、クリスタの恋の行方は……!?

男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副隊長が過保護です~

百門一新
恋愛
幼い頃に両親を失ったラビィは、男装の獣師だ。実は、動物と話せる能力を持っている。この能力と、他の人間には見えない『黒大狼のノエル』という友達がいることは秘密だ。 放っておかないしむしろ意識してもらいたいのに幼馴染枠、の彼女を守りたいし溺愛したい副団長のセドリックに頼まれて、彼の想いに気付かないまま、ラビは渋々「少年」として獣師の仕事で騎士団に協力することに。そうしたところ『依頼』は予想外な存在に結び付き――えっ、ノエルは妖獣と呼ばれるモノだった!? 大切にしたすぎてどう手を出していいか分からない幼馴染の副団長とチビ獣師のラブ。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...