団長様、再婚しましょう!~お転婆聖女の無茶苦茶な求婚~

甘寧

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 感動の再会から三日経ったが、シャルルは殆ど食事も摂らずにずっと部屋に閉じ籠っていた。

「姉御、そろそろ何か食べてください」
「そうっスよ。体壊しちゃいますって」
「今日はケインが作ったんですよ」

 あれやこれやと手を討ってみるが、シャルルからの返事はない。困ったように顔を見合わせる三人の前に、がやって来た。

 同時に、布団に包まっているシャルルの耳にコンコンと軽いノックが聞こえてきた。しかし、返事を返す様子はない。コンコンとノックは続くが、布団をぎゅっと耳に押し当てて聞こえないようにする。

(しつこいですわね)

 そのうち、コンコン……がドンドン!に変って来た。

「ちょ、ちょっと、なんですの!?」

 流石に黙っている事は出来ず顔を出すと、ドンッ!!と一際大きな音共に部屋のドアが吹き飛んだ。

「な、ななななななッ!」
「失礼しますよ」

 吹き飛んだドアを足蹴にしながら入って来たのは、満面の笑みを浮かべたラリウス。その背後ではダグらが口を開けたまま茫然としている。

「おやまあ、随分と酷い顔をしてますね」
「い、いくら貴方でもやっていい事と悪い事がありますわ!」

 ベッドの上で睨みつけるが、気にせずに距離を詰めてくる。

「一体何しに来たんです!?」
「傷心中の貴女の隙に付け入ろうとしに来ました。……と言ったら?」
「卑怯で卑劣だと罵りますわ」

 そっとシャルルの頬に手を添えながら伝えるが、付け入る隙のないシャルルに「ハハッ」と笑みがこぼれた。

「良かった。いつもの貴女だ」
「え?」
「これでも心配していたんですよ。因みに、先ほどの言葉も三割は本気です」

 そう付け加えられ、シャルルは「ふはっ」と吹き出した。

「あははははは!!三割って!貴方にしては良心的ですわね!ああ~、面白い」

 涙をこぼしながら笑うシャルルの姿が、ラリウスの目を奪ってくる。

 彼女が私に笑顔を向けることはあったが、それは張りぼてのように作られたような笑顔だと常々思っていた。こんな風に笑う所を見たことがない。

 子供のように無邪気で楽し気に笑う姿を見て──彼女が欲しい。率直な想いが込み上げてきた。

(ああ、まずいな)

 ポスン

 気付けば、シャルルを押し倒していた。

「……なんのつもりです?」

 シャルルが冷静に問いかけてくる。

 この人は、こんな状況でも強気な態度を崩さない。騎士としては褒めるべきところだが、男としては面白くない。

「すみません。先ほどの言葉を撤回いたします。卑怯だと言われても構いません。こうでもしなければ貴女は私を見てくれないでしょう?」
「必死過ぎて醜いですわよ?」
「何とでも言ってください」

 ラリウスはシャルルの手を拘束して逃がさない意思を前面に出している。いつもと違う雰囲気に、ようやく本気なのだと危機感が湧いてきた。

(どどどどどどうしましょう)

 額に汗を滲ませながら目を泳がせている。こういう時、手慣れた女性ならばどうやって回避するのだろうか。とか色々頭を働かせるが、残念なことにこういった状況が初体験のシャルルには回避方法はもとより、この後の展開すら思い浮かばない。

「ッ!!」

 不意打ちで首筋にキスされ、反射で身体が跳ねた。

「ら、ラリウス様……」

 一度だけでは飽き足らず、首筋、頬、腕と身体中に口をつけてくる。その度に、触れたところが熱くなってくる。

「ああ……いい表情になりましたね」

 トロンと惚けた顔に変わり、子供の様な雰囲気から一気に大人の色気を匂わせる。女性の扱いに慣れているラリウスすらも、息を飲むほど妖艶で美しい……

「ねぇ、私にしましょ?私なら寂しい思いはさせません」

 頭では断らなきゃと思っていても、言葉が出てこない。この人は女にダラシはないが、大事にはしてくれる。それを分かっていて返事を返さないなんて、私も大概だなと思ってしまう。

「……シャルル」

 ドキッとした。

 名を呼ばれたからじゃない。ラリウスの真っ直ぐな眼が、心の中に残っているレオナードの姿を、自分の姿へと上書きさせようとしている。そう感じた。

 ゆっくりとラリウスの顔が近付いてくる。唇に熱い息がかかる。

 ──キスされる。

 咄嗟に目を閉じた。

「コホンッ…」

 あと数ミリと言うところで、乾いた咳払いが二人の耳に届いた。

「白昼堂々と聖女様を誑かすのはやめて頂きたいのですが?」

 声のする方に顔を向けてみると、汚物を見るような目を向けているルイスと、顔を赤らめているダグ、エドガー、ケレンの姿があった。一番若いマルクスに至っては、刺激が強すぎたのか鼻血を出したまま伸びている。

「ッ!!」

 一部始終見られていた恥ずかしさと罪悪感が一気に押し寄せてくる。

「残念……時間切れの様ですね」

 ラリウスは気にする素振りもなく、真っ赤になって燃え尽きそうなシャルルの額に口付けた。

 辛うじて残っていた意識の糸もプツンと切れ、そのまま気を失ってしまった。

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