団長様、再婚しましょう!~お転婆聖女の無茶苦茶な求婚~

甘寧

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 その日の夜、何の前触れもなくレオナードがやって来た。

「リオネルは来ているか!?」

 随分と焦った様子に、何事かと人がホールに集まってくる。

「いきなりやって来て何ですか?」

 ナイトキャップを被ったルイスが先頭に立って、問いかけた。まず、その格好はいいのか?と誰もが心の中で突っ込んだに違いない。

「突然の訪問すまない。リオネルがまだ帰って来ていないんだ。こちらに来ていないだろうか?」
「え!?」

 これにはシャルルが驚いた。
 小屋から教会までは一本道。道に迷うはずはない。そう思ってしまった。相手はまだ五歳の幼い子供だというのに……完全に私の失態。

(彼の身に何かあったら……)

 さぁーと全身の血の気が引く音がする。

「おやまあ、こっちらにもいない様ですね」

 リンファがレオナードの背後からひょっこり顔を出した。レオナードとは相対する様に、平然としていて何処か他人事の様に言うリンファに、嫌悪感が湧く。

「仕方ない。他を探そう」

 踵を返し、外に出ようとするとレオナードをリンファが止めた。

「別にいいじゃないですか。子供などまた作れば」
「は?」
貴方との子が欲しいわ。折角だから、今晩なんて……」

 リンファはレオナードを誘うように、逞しい腕に指を絡め熱の篭った瞳を向けている。

 色々と問いただしたい事はあるが、まずリオネルを見捨てるような発言をした事が何よりも許せない。

 再会した時に起こった感動の名シーンは、もはや幻だたのではないかと疑ってしまう。

(女狐にも程がありますわよ…)

 騙された方も悪いが、あれが演技だとしたら演者になった方がいい。

「お前──ッ!」
「お待ちなさい」

 レオナードが怒鳴りつけようとしたのを遮る様にして、シャルルが声を上げた。

「自分の子供を見捨てるような発言……そればかりか、新たに子をもうけようと迫るなど一国の皇女として有るまじき行為。恥を知りなさい!」

 あまりも真っ当な物言いに、シーンとその場が鎮まる。

(あ、あら?)

 これにはシャルルが戸惑った。

 珍しく聖女らしく進言したのに、誰も反応を示さない。やっぱり皇女様相手にまずかったか?なんて不安が頭をよぎる。だけど、言わずには言われなかった。

「シャルルの言う通りだ」

 威勢を失っているシャルルの肩を抱き寄せ、レオナードが強い口調で言い切った。

「何度も言うが、貴女の気持ちには応えられない。それに……俺には、もう決めた人がいる」
「え?」

 真っ直ぐ私の目を見ながら言ってくる。迷いのない輝きを放った瞳に、呆けている自分の姿が映り込んでいる。

 その言葉の意味を知りたい。自惚れかもしれないが、もしかして私の事を……?

「行くぞ」
「あ、ちょ、ちょっと待ってください!」

 聞き返す間もなく、レオナードは外へと駆け出して行ってしまった。その後を追うようにしてシャルルも駆け出して行った。

 その場に残ったリンファは悔しそうにギリッと唇をかみ締め、声をかけようとしたルイスの手を跳ねのけた。

「触らないで!」

 殺気立った鋭利な眼光で睨み付けていた。


 ***


『シャル!こっちこっち!あの子の匂いがするよ!』

 シャルルを案内するようにユキが先頭してくれる。

「本当にこっちでいいのか!?」

 どんどん奥に進んで行くユキにレオナードが苛立ちながら問いかけてきたが、私にも分からない。けど、今はユキの嗅覚を信じるしかない。

 しばらく走っていくと、草が生い茂る平地へと出た。

「……ここ?」
『うん。ここ』

 ユキはここだと言っているが、見渡す限りリオネルの姿はない。草に埋もれて顔が見えないのかもしれないが……

「リオネル!!何処にいる!!」

 レオナードが大声で呼ぶが返答はなく、草を掻き分けながらリオネルを探し始めた。

「リオネル様!」

 シャルルも探し始める。草とはいえ、中には堅く鋭利な葉もあるので掻き分けていく内に手や腕、頬に切り傷が増えて行く。血が滲む頬を拭いながら、先を進む。

『シャル!危ない!』
「え……──ッ!!」

 ユキの声で足を止め下を見て見ると、切り立った岩壁が視界に広がっていた。

「あ、あ、あああああぶっあぶっ危なッ!!」

 あと一歩踏み出していたら確実に足を滑らせていたところだった。一気に血の気が引き、足が竦んで腰が抜けた。

 ドキドキと未だ落ち着きのない心臓を落ち着かせようと、深呼吸をする。

 ユキがいてくれて助かった。切にそう思った。

『あ、シャル!あの子がいる!』
「え!?」

 ユキが視線を向けた先は崖の下。恐る恐る下を見て驚いた。中腹程の高さの場所にできた足場に蹲っているリオネルの姿があった。

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