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夜になると、雨風はより一層酷くなり窓が今にも割れそうだ。
ブラウが急いで窓を板で補強し始めた。
それを見たアルベールも「タダで泊めてもらう訳にはいかん」と、ブラウと一緒になって補強してくれた。

こういう時に男手は役に立つ。

「──しかし、これは嵐になるぞ」

「ああ、こりゃ、結構酷くなりそうだ」

私が外を見ながら言うと、アルベールも不安そうに外を見た。

──嫁さんが心配なんだな。……だから、早く帰れと言ったのに。

まったくこの男は人の言うことを聞かんから困る。
嫁さんからしたら、こんな日に一人と言うのは心細いのもあるかも知らんが、それ以上にお前の心配していると思うぞ?

呆れたようにアルベールを見ていると、ピカッ!!!と窓の外が光った。
その後すぐ、大きな音が鳴り響いた。

その音に驚いたブラウとリラ、猫の姿のクロが私にくっついて来た。

「お前ら!!雷ぐらいでなんだ!?」

「む、無理です……」

「怖い……」

引き剥がそうとするが、ガッチリくっついて離れない。

「なんだ、なんだ?雷ぐらいで」

私にくっついているブラウとリラ、クロに向かって呆れたようにアルベールが言った。

そんな事言ってないで、助けてくれ。

「……だが、少し羨ましい……」

おいおい!!今そんなこと言っている場合じゃない!!
こいつらを早く退かしてくれ!!動けん!!

そんな事をやっている間にも稲光は収まる様子がない。
本格的な嵐になりそうだ……

バンッ!!

「コルネリア!!」

扉が開き、びしょ濡れのラルスが飛び込んできた。

「なんだ!!びしょ濡れじゃないか!!」

「すみません。嵐になりそうで、森を見回ってきたんですよ」

ああ、そうだな。危険箇所がないか調べるに越したことはない。用意周到な所は流石だな。

リラがタオルを持ってきてくれ、それで頭を拭きながらラルスが話し出した。

「このまま降り続くと地盤が危ないですね。山崩れが起こる可能性もあります。それを見越して、ルー達親子は私の屋敷に避難させました。──パウルとバジャーも避難するよう言ったんですが、頑なに洞窟を出なくて……」

パウルとバジャーはヴィンを匿っているからな。置いて行けないんだろう。

それにしても、山崩れか……
少々厄介だな。大規模じゃないとは思うが、一応用心しておくか。

「ラルス。この雨の中、ご苦労だったな」

早めに対応出来るのは、この雨の中見回ってくれたラルスのおかげだ。

「ん~、森の獣達が騒ぎ出したッスね。これはヤバそうッスよ」

ドランが飛び回りながら、私達に伝えて来た。

その言葉を聞いて外を見ると、沢山の獣達が森から出ようと街の方に向かって行くのが見えた。

「おい!!街はまずい!!」

アルベールが叫んだ。
このまま森の獣や魔獣が街に行けばそれこそ厄介だ。
街がパニックになる。

「ラルス!!全員集めろ!!ここで止める!!」

「はいっ!!!」

ラルスが皆を呼びに行ってる間にも、続々と獣や魔獣が森を降りてくる。

私はすぐさま外に出て、獣達の行く手を阻んだ。

土壁フムス

突然現れた巨大な壁に行く手を阻まれ、獣達は怒り狂っている。

「すまん!!お前達も必死なのは分かる!!だが、ここから下は人間の住処だ。お前達が踏み入れていい場所ではない!!」

『……おかしな事を言う人間だ。人間は我らの森に勝手に出入りしているではないか。そんな都合のいい話は聞けん』

私の頭に直接話しかけてきたのは、猛猪あらじし

こいつは、名の通り獰猛で面倒臭い奴だ。
こんな奴が街に出たらひとたまりもない。

「……それを言われると私も何も言えんが、お前達が街に降りたら街はパニックになる。お前達も狩られるやもしれん!!」

『ふっはははははは!!!!我が人間ごときに負けるわけがなかろう?……さあ、そこを退け小童』

これは、一筋縄では行かんな……
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