悪役令嬢は、貴方を絶対に愛さない。

深月カナメ

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 彼の口元は弧を描いている。

「知っているも何も、カトリーナお嬢様はここで色々買っていったじゃ無いか……金に糸目をつけずに毒薬草に猛毒蛇。調合器具などたくさん買っていたよな」

 この子の話しは前の私の事だわ。
 でも、彼に名乗った覚えはない、どうして前の私のことを知っているの?

「当時もバレバレだったよ。公爵令嬢カトリーナお嬢様。当時のあんたはこの国の王太子の婚約者。国民は誰でも知ってる有名人だ……それよりも、これを見ろよ」

 彼は着ていたローブをバサッと脱ぎ捨てた。黒いローブの下からはサラサラな金髪、青い切れ長の目が見えた。

 次に彼はシャツにまで手をかてる。彼が何をするのか分からなくて、目を逸らした。

「やだ、何をしているの?」
「こうしないと見えないからな、カトリーナお嬢様こっちを見ろ」

 彼はシャツをめくり上げて、私に腹部を見せた。

「あ、ああ。それは……」

 私はそれみて驚きを隠せなかった。

 私の胸にある赤い薔薇と同じ痕。無意識に自分の胸の傷痕を抑えていた。あの神様が言った、もう一人とは彼のことだ。
 
「見たか? カトリーナお嬢様」

 私はその痕を見ながら、頷くことしかできなかった。彼は脱ぎ捨てたローブを持ち、私を呼ぶ。

「立ち話もいいが。カトリーナお嬢様来い。久しぶりにあったんだ、お茶に付き合ってくれよ」

 奥の部屋で話そうと言われた。

「……わかったわ」

「チュチュ、お客が来たら呼んでくれ」
「わかったチュ」

 どこに居たのか小さなネズミがピョンと、レジカウンターの上に飛び乗った。
 ツカツカとレジカウンターの上を歩き、この子の椅子なのかな、小さなソファーに座り店番を始めた。
 青い蝶ネクタイを締めた可愛いネズミさん。近くにはおやつなのか、ヒマワリの種が置いてあった。

「どうした? カトリーナお嬢様。怖気づいたのか?」
「そんなこと、あるわけないじゃない」

 私は彼に案内されて店の奥に入った。中は足の踏み場もない大きな部屋だ。
 彼は隅っこに置かれた、革のソファーに座った。部屋の中は使ったままの、お茶碗がそのままの汚れたキッチン。
 壁には吊るした草に、本が溢れた本棚。部屋の真ん中には二人掛けのダイニング。
 本棚と本棚の間に扉を見つけた、奥の扉はなんだろう? この部屋の中は薬品や薬のような匂いがしていた。

「独特の匂いがする」
「……そうか? くくくっ、お嬢様にはここは無理かな」

 むっ! ツカツカと歩き、男の子が座るソファーに座った。

「無理じゃないわ、さあ、あなたの話って何?」

 男の子の切れ長の青い目が私を見た、やはり口元はやはり笑ってる。

「そうだな俺の話か。俺はお前のせいで、死んだんだ」

「……私のせい?」

「あれは多分お前が死んだ後だ。夜遅くに俺の所に騎士が大勢やって来た。俺がお前に毒薬を売ったせいで、王子と姫は殺されたとか言っていた……こんな、裏路地の奥の奥の店が見つかるなんて、お前が残した手書き地図さえなかったら、俺は死ぬことはなかったんだ」

 手書きの地図。ここに来るために忘れないように地図を書いた。

 私が死んだ後に部屋の中を探されたんだ。

「その時俺は寝ていてね。驚いている間に騎士の剣が腹にひと刺しだった。すげえー痛かったよ」

 さっき見せた傷の所さすった。

「薄れていく意識のなか聞こえた騎士達に話では、俺はお前の共犯者と思われたようだ。そして死んだはずなのに。目が覚めると何故か、子供の頃の俺になって生き返った。時間も遡っている癖にさ、記憶は昔のまま残ってる」

 神様は彼にも記憶を残して生き返らせた。なぜ? でも、全ては私のせいだ。

 私のワガママが、この人を巻き込んだんだ。
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