悪役令嬢は、貴方を絶対に愛さない。

深月カナメ

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「……ごめんなさい」

「済んじまったことだ、カトリーナお嬢様は謝らなくていい。所で今日、お嬢様はこの店に来た理由はなに? また……毒薬を買いに来たのか? 今度は誰を殺すんだ?」

 今度は誰を殺すんだと、彼に刺すような冷たい目で見られた。

 殺すだなんて……私はもう二度としたくない。

 目の奥が熱い。私は一度、人としての道を外して彼を巻き込んだ。


「私は……」

「私は? なに?」


 あの神様から貰ったチャンスを生かしたい。

「……しない」
「うん?」

「私は誰も殺さない、殺したくない。だから逃げた。どこに行こうかと悩んだときに、この店を思い出して来てしまったの」

「どこでもなく、俺の店を思い出したの?」

 私は頷いた。目を閉じれば溢れそうな涙、でもそれを流したくなくて、唇をもっと強く噛んだ。

「カトリーナお嬢様……辞めろ」

 えっ…。

 私に近づく彼の顔、切れ長な青い目、唇の端をペロッと舐めた⁉︎

「やだっ……何をするのよ!」
「それは、カトリーナお嬢様が唇を噛むからだろう。唇の端が切れて血が出てた……ここには拭くものがないだから、だから舐めた」

「拭くものがないからって、舐めるなんて」

 彼の突拍子のない行動で、驚き溜まっていた涙がポロポロと頬を流れた。

 もうこうなったら涙は止まらない。

 前の私は後のことを考えていなかった。自分のことしか考えていなかった。

 彼を私のエゴのせいで巻き込んだ。

「……うっうう、ごっ、ごめんなさい。ご、ごめん」

 私は必死に彼に頭を下げた。

「いや、俺も言いすぎた。急に時間が戻って混乱をしたのもある。嬉しいと思うけど、またかと胸が苦しくなる」

「なんでもする。私あなたのために、なんでもする」

 私に出来ることはそれしかない。

「なんでもか?」

「はい、なんでもします」
「だったらカトリーナお嬢様。おじーの病気を治す手伝いをしてほしい」

 おじー?

「俺さ両親いないんだ。小さい頃にカーラーの森に捨てられていた。そんな俺を魔法使いのおじーが拾ってくれたんだ。前回はあらゆる手を色々と尽くして治療を試みたけど、おじーを助けれなかった。今回はどうしても助けたい。俺は一人にはなりたく無いんだ」

 彼の真剣な瞳、それに頷く。

「わかった。私は何をすればいいの?」

「病気を治す詳しい資料が欲しい。俺を王城の書庫に連れて行け。そこに行けばおじーを治せる、何か手がかりがあるかもしれない」

「王城の書庫……」

 あらゆる蔵書が保存される場所。貴族でもおいそれと簡単には入ることができない。

 私が王城に入るとしたら一つしかない。

「私に王子の婚約者候補になれと言っているの?」
「ああ、そうすれば中に簡単に入れるだろう? 他の手もあるが、用意するまでに時間が掛かるし危険だ。俺は楽をして中に入りたい」

「……っ」

 王子の婚約者候補。
 あと一ヶ月で十二歳だから、何もなければ婚約者候補に選ばれる。

 私が王子を好きならなければいい、それだけの話だ。

 私を裏切る王子なんて……前回は好きにならないときめて、彼にあったのに結局は好きになってしまった。

 そして、あんな、最後を迎えた。

 だから、逃げたんだ。私は怖い。王子とまた会えば好きになってしまうかもしれない。

 今回、前回と同じになると、私はあなたをまた巻き込むことになる。

 それが、とても怖い。

「……あ」

 私の髪を優しく撫でてくれた。青い瞳が私を見つめる。

「わかってる、王子に会って好きになるのが怖いんだろ。カトリーナお嬢様は一人じゃない。同じ痕を持った俺がいる。俺にしなよ」

 彼が近づいてくる。

「えっ、どう……んっ……」

 強引に腰を引き寄せられて、今度は私の唇を奪った。ちゅ、ちゅっと小鳥のように啄まれた。

「やだ、やめて……」
「カトリーナ、俺を好きなれよ」

 嫌だと、離れてもまた奪われる。やめて、私はキスは初めてなの。王子とはまだ手を繋いだことしかないの。

 そのキスが深くなる、柔らかい彼の唇が幾度となく重なる。熱くなる体、怖い、待って……

 私はまだ、あなたの名前すら知らない。
 あなたのことを何にも知らない。

「んっ……」
「……カトリーナ」

 あぁ、青い目に見つめられると、目が離せなくなる。体が熱い……こんな熱を私は知らない。

「んんっ……やっ……だぁ」
「やめてなんかやらない……もっとだ、もっとお前を俺に寄越せ……気持ちも全部だ。王子になってやるな。俺を見て俺だけを好きにれ」


「だから……まって」


 これ以上は心臓がもたない

「はぁ、カトリーナ。ずっと、ずっと俺はお前を想っていた。この店に来た時から俺はお前が好きだ」

 私を好き?

「こら、ライチ辞めろ! やめるんだ! チュチュ……キィーークッ」

「グフッ」

 見事なネズミさんのキックが男の子の頬に決まった。そのネズミキックは体は小さいのに威力は抜群。男の子は壁まで吹っ飛んで行った。
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