悪役令嬢は、貴方を絶対に愛さない。

深月カナメ

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「いて、いててっ。チュチュ何しやがるんだ」

 飛ばされた男の子の近くに行き、ネズミさんは小さな足でゲシゲシ蹴っている。

「ライチ! お嬢さんが怖がってる。何があってもいきなりはダメだチュ。ライチまだお前はまだ十三歳のくせに、なんて事をしているんだチュ。俺が十三歳の時はまだ、女の子とは手も繋げなかったチュ」

「それはお前だけだろ!」

「やめて、二人とも……」

 ネズミさんと彼の言い争い止めようとしたけど、足に力が入らなくて。
 カクンと膝が崩れ落ちそうなのを、男の子は慌てて手を伸ばして。壊れ物を大切に扱う様に抱きとめてくれた。

「大丈夫か、カトリーナ?」
「大丈夫チュか?」

「はい」


 最後の年は十八だっだけど、経験がなく無垢だったから。一度上がってしまった息と、鼓動は直ぐには治らない。顔も熱いし恥ずかしい。

 彼に抱えられながら叫んだ。

「やだって言ったのに、恥ずかしい。自己紹介もしていない、私はあなたの名前知らないわ!」

「ごめんな、ライチが悪いんだチュ」
「カトリーナが俺と店を思い出したって聞いて、我慢出来なかった俺が悪い」

 そう叫ぶと男の子は私を抱きかかえたまま、ボフっとソファーに沈んだ。

「…きゃっ」
「ライチ、ダメだチュ!?」

「嫌だね、カトリーナ」

 そんなに優しく見つめないで。


「あなたは私のことが、許せないんじゃないの?」


「そこは複雑。でもさ、告白したから言うけど、俺は初めて店に来た時から、カトリーナが好きなんだ。また、会えるなんて思っていなかった……カトリーナ」

 ギュッと抱きしめて離さなくなった。力が強くきつくて、トントンと背中を叩いても、力を抜いてくれない。

 ネズミさんがピョンと私の肩に乗り、ゴニョゴニョ耳元で内緒の話をした。私はわかったと合図した。

「ねぇ、ライチ君?」
「へぉっ……なんだ、カトリーナ?」

 名前を呼ばれると顔を上げて、青い瞳を大きくした。ジッと顔を見つめると……ライチ君は段々と、頬を赤くして困った顔をになった。

「ライチ君?」
「ほおぁっ…おっ、俺が悪かったカトリーナ。いきなりキスしてごめん」

「うん」

 面白い事を見つけた……ライチ君と名前を呼ぶと、ぶるっと体を揺らして面白い。

「ライチ君」
「うわぁ」

 ぶるぶるっ。

「ねえ、ライチ君」
「おっ、おう」

 ぶるぶるっ。

「ふふっ……ライチ君」
「おいカトリーナ、俺をからかったな」

 顔を真っ赤にして怒ってる。
 ネズミさんにライチ君と呼んで、甘えて見ると良いチュとも言われたんだ。

「ライチ君、私、飲み物が欲しいわ」

 ぶるっとして

「ああっ? 仕方ねな。カトリーナは紅茶でいい?」

 私を離してソファーにキチンと座らせてくれた。ガシガシ頭をかいて、キッチンへと向う。
 そこにピョーンとネズミさんが、ジャンプをしてライチ君の肩に飛び乗った。

「チュチュは何にするんだ?」
「ミルクにするっチュ。後、お腹がすいたっチュ」

「チュチュ、それは自分で用意しろ」

「パンを切ってくれチュ」
「あー、わかったよ」

 二人であーだこうだと、言いながら紅茶の準備が始まった。ライチ君が淹れてくれた紅茶を受け取った。

「ありがとう」
「いいや……チュッチュにはパンにチーズを挟んだからな」

「やったチュ」

 ライチ君の肩から机に降り、チュッチュはパンにかぶりついた。それを楽しそうに見ながら、ライチ君は自分の紅茶のコップを持って、私の横に座った。

「カトリーナ、王城に入るためには、すげぇ嫌だけど……王子の婚約者候補になってもらうしかない」

 だと、少し不機嫌に言う。

「わかってる。もうすぐ私は十二歳。前と同じなら殿下の婚約者候補の一人に選ばれるわ」
「……そうか」

 私もライチ君のおじいさんの病気を助ける手伝いをしたい。だから「頑張るね」と彼を見て微笑んだ。
 それを見たライチ君はイライラして、乱暴に頭をガシガシかいた。

「アーーックソッ。俺はおじーを今度こそは助けたい。でも、平民の俺では王城なんて入れないだから……」

 ライチ君は最後まで言わず、眉を潜めた。

「私は平気よ。私も手伝いたいから、ライチ君は何も気にしなくていいんだよ」
「気にするよ。気にさせてくれ、俺は好きな、カトリーナに王子と会えと言っているんだ、カトリーナだって会うの嫌だろう?」

「うん、会わずに済めばいいと思ってる。できれば、婚約者候補になりたくなかったの、だから自分の全財産を持って、屋敷から逃げてきちゃったの」

 ライチ君は飲みかけの紅茶を、ぶっと吹き出した。

「はあ? ゴホッ……カトリーナは家から逃げてきたのか」

「うん、逃げてここに来たの」

「それはさっきも言ってた。あのさ、店には俺とチュチュだけしかいない、ここに泊まるのか?」

「ライチ君が泊めてくれるんだったら」

 ライチ君は顔を真っ赤にした。だめ? だと首を傾げたら、肩を掴まれてソファーに押し倒された。

「俺の家はここだ……それは、わかってるな」
「うん、わかってる」

「ここには二人が寝れるベッドなんてない。あの扉の奥は研究室だけだ。カトリーナはこのソファーで、俺と一緒に寝ることになるんだぞ、いいのか? 俺はお前が好きなんだぞ」

 意味を理解して真っ赤になる。
 ライチ君とソファーで一緒に寝る。でも、前の歳だったら危な買ったかもしれないけど、今は十一歳と十三歳で、成人もしていない。


「大丈夫だ、カトリーナお嬢さん。このチュチュがライチから君を守る」

 小さな胸を張る、チュチュが頼もしく見えた。
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