「悪役令嬢は愛おしきモフモフ♡へ押しかけたい‼︎」(完結)

深月カナメ

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 薄暗い森の中、颯爽と歩く青みがかったシルバー色の髪の少女は、目の前に生い茂る木々を見上げてため息をついた。

「あ~っ、このドレス、歩きにくい!」

 ひらひらドレスの長い裾は足にまとわりつくし、レースとリボンは無駄に枝に引っかかって邪魔。貴族はこんなに歩くのに不便なドレスをよく着れるよ。

 今日は婚約候補として第3回目となる、第2王子と王城の庭園での昼食の日。
 早朝からこのドレスを着る為に準備で朝食は抜き。昼食だって王子とご一緒だったから、全然食べた気がしなかった。

 ぐ~っ、先程からお腹が空いたと空腹を主張するし。

 お腹と気力が……

「もう、限界!」

 そこに生える赤いキノコは食べれる? ごくり。
 この紫の木の実はどう? じゅるり。
 周りに実るキノコが、木の実がどれも美味しそうに見えてきた。

 ごくっ、空腹は考えを鈍らす。
 このままでは空腹に負けて、危険な食べ物を食べてしまいそうだ。

 いま1度、屋敷に戻って彼を探すのは、明日でもいい気がしてきた。

 ……。

(あーだめ、だめよ)

 気持ちを振り払うかのように、ぶんぶん頭を振った。
 すでに屋敷を出るときに「家を出ま~す」って、置き手紙を書いたばかり。
 
 今頃、屋敷は私を探して大騒ぎのはず。

 そこにへらへら笑いながら「嘘でしたぁ~っ」て戻ったら。
 いくら温厚なお父様でも、鬼のような形相でわたしを捕まえられて、部屋に閉じ込められる。

 怖い、怖い。

 今日の日から外にも出してもらえなくなって、王子の婚約者になってしまう。
 絶対に嫌だ、それだけは避けたい!
  

「王子の婚約者なんて、嫌だよ!」

 ほんとマークレ王子なんて嫌い。

「イケメンだからって、いい気になるなぁ~!」

 盛大な独り言を撒き散らし、落ち葉を踏み進んでいる。
 わたしの名前は、カルノ・ダンテェはさっきまで、公爵令嬢で乙女ゲームの悪役令嬢でした。

 それら全てを捨てて、普通の女の子になりました(多分)

 先程、王城でマークレ王子の婚約者候補としてお会いしたとき。
 ビビビッと身体中に電気が走り。何故か前世の記憶を思い出しました。

(あ、あれっ?)

 この場面何処かで見たことがないかしらと。
 そうだ。昨日、寝る前に遊んでいた乙女ゲーム。
 中世風で、音楽が舞台の乙女ゲーム『花と歌、音楽が奏でる恋の道しるべ』

 そのゲームのストーリーが気に入らなくて、やけ酒をして寝て。

 気付けば乙女ゲームの世界だなんて……


(まじですかぁ~)


 あぁ、次の日は初めてのボーナスとお給料日だったのに。
 買いたい漫画の本とゲームをお気に入りに、たくさん入れておいたのにと、落ち込んだのだけど。

 わたしはオタクで立ち直りが早いはず。

 カルノになっちゃったものは仕方がない。
 この後に、楽しいことを見つければこの世界にすぐに溶け込めるはず。

(ところで、このゲームってどんな話だったかな?)

 王子の話に「おほほほっ」微笑み、相槌を返しながら、この乙女ゲームを思い出していた。
 わたしは公爵令嬢で、悪役令嬢のカルノ・ダルーテ。
 ゲームの彼女は音楽に絶対なる自信を持っていた。

 婚約者のマークレ王子とヒロインが仲良くなるにつれて、彼女は嫉妬する。
 ヒロインの楽譜を破り、彼女が使うピアノに細工したりと、音楽面でたくさんの嫌がらせをする。

 王子が悪いのだけど、所詮ゲームだから悪役令嬢のカルノが悪者になっていく。

 そして。

 彼女は得意楽器のバイオリンでヒロインとの争い負けてしまう。
 学園最後の舞踏会で、婚約者のマークレ王子に『カルノ・ダルーテ嬢、あなたに婚約破棄を言い渡す』とカルノは婚約破棄をされた。

 物語の最後。彼女は王子に『初めから俺はお前の音楽は好きではないし、お前の事もなんとも思って居なかった』国王陛下ーー父上に頼まれて仕方がなくお前と婚約したと。

 カルノは婚約者候補になる前から、マークレ王子の演奏するバイオリンの音色に憧れて、彼が好きだった。
 それなのに音楽を否定されて、自分の事は初めから好きではないと言われてしまう。

 でも、カルノは妖艶に笑うんだ。

『さすがね、マクーレ殿下は音楽だけてはなく、演技力も高くてらっしゃる』と、マークレ王子に背を向けて舞台を去っていく。
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