俺の固有スキルはあったけぇ!『母からの仕送り(手紙付き)』

深月カナメ

文字の大きさ
5 / 5

五話

しおりを挟む
「あ、あの犬っころどもめ! 喰らった壊死毒の解毒に必死で気が付かなかった……。下半身を鼻先で突いているかと思えば、まさか、下着を咥えて持ち去っていたとは……」

 彼女は、ご立腹のせいか、おにぎりのせいか、プクッと頬を膨らませながらそう話す。

 ゴクンと飲み込んで口の中が空になると、彼女は目を閉じ、再び口を開けて大人しく待っている。
 
〈『おにぎり』が気に入ったんだな……。しかし何だこの仕草、超可愛いな……〉

 二つ目のおにぎりを彼女の口へと運ぶ。

「み、見てしまったものは仕方がない。謝らずとも其方に非は無い。そもそも、私は其方に生かされた身である故、生かすも殺すも其方のひとこえ次第じゃな」
「そんな、殺すなんて……」
「私は其方の所有物として、生涯この身を捧げても構わない。私の事は煮るなり焼くなり其方の好きにするがいい。ご、ご所望とあらば、毎晩、私の身体を存分に陵辱し弄んでもかまわないんだが」

〈なんとも美人さんからの嬉しい提案だが、相手は未知なる異種族だし、基本的に渡すモノ(子種)はあっても、貰うモノ(病気)は避けたい……が、しかし、生まれてくる子が女の子なら、超絶可愛いんだろうな……ん? いや、そもそもこれは何の話?〉

「何を顰めっ面になっておる? 案ずるな、ヒューマン(人間)とエルフがまぐわったとしても、呪われたり、授かった子が怪物として生まれる事は決して無いぞ? 私としては、3人くらい居ると賑やかで愉しい夫婦生活を送られるはず、女の子ならなお良いぞ」
「ま、まぐわいませんっ! ってなんで、楽しい家族計画の話になってるのさ! 特にどうこうしませんって! 〈え? 何、怖い怖い! 心の声聞こえるのこの人?〉」
「そうか……」

 彼女は、少しガッカリした感じの表情を見せる。

「本来、ダークエルフとは、人との接触を避け姿は絶対に見せぬもの……」
「そうなんだ〈色々とご開帳させてたヤツが言うんだ……〉」
「そ、それは不可抗力じゃ! 刺客に麻痺毒と壊死毒の攻撃を貰ってしまってな。このエルフの森へ這いずりながら逃げ切ったものの、全身麻痺で身動きできず、魔力枯渇と引き換えに壊死毒の解毒が精一杯じゃったわ」
「刺客! そ、それは大変な目に遭いましたね〈やっぱり、心の声聞こえてるよな……〉」
「そんな『人』と『エルフ』が遭遇する事など、無いに等しいエルフ種も希少種であるダークエルフにあの様な無様で気品のかけらもない、アレも無防備な状態で其方の目に晒されたのも何かの縁! 責任をとって、私を飼い慣らすが良い!」
「飼いませんって!〈何言ってるのこの人……〉」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。 ----- ※小説家になろう様にも掲載中。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...