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第二章

第12話 緑に光る鍵

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「シャルちゃんもう暗いしひよこ豆は明日の朝に収穫にして休もう、今日は疲れただろう?明日の為に体力を温存してもう寝よう」

ひよこ豆を大きく育てた後に屋敷に戻ると直ぐにラーロさんに言われた。

「はーい、ラーロさん、お父様、マリーさんおやすみなさい」

「おやすみ、シャルちゃん」
「シャルロット、おやすみ」

「シャルロットお嬢様、おやすみなさいませ」

みんなに就寝前の挨拶を済ませて、私は部屋に戻りマリーさんが用意をしてくれた、パジャマに着替えてベッドに潜り込んだ。

明日だ!必ず明日は竜人の国に行ってみんなに会う。

私は怒っているんだから、シーラン様、リズ様、リオさんの尻尾をさわさわしちゃうんだから待っていてね…後は。

「みんなが元気で怪我をしていませんように」

と、願い私はベッドに深く潜り体も疲れていたこともあって、その夜は夢も見ずにぐっすりと眠った。

次の日の朝は目覚めもよく体調も良かった。
背筋を伸ばしてベッドから出ようとすると、控えめに扉を叩く音がして、それに返事を返すと直ぐに扉を開けマリーが入ってきた。

「おはようございます、シャルロットお嬢様」
「おはようマリーさん」

マリーさんが持って来た朝一番の蒸しタオルで顔を拭き、朝の支度を手伝ってもらう。

「マリーさんお団子にして」
「畏まりましたシャルロットお嬢様」

動いたりして髪が邪魔にならないように、ぴっちり目のお団子ヘアーにして貰った。
マリーさんが用意してくれた半袖の水色のワンピースを着る前に一応魔女の秘薬を身体中に塗って、ベッド近くに置いといたヘアピンを付けた。

私の準備が終わるとマリーは厨房に朝食の準備に行き、私は庭に出て昨日の夜に育てたひよこ豆の莢を収穫し始めた。

ひよこ豆の収穫を始めると、ざっざっと足音がして前を向く

「ふわぁぁっ、おはようシャルちゃん」
「おはようございます、ラーロさん」

いま起きたばかりなのかな?
後頭部の寝癖にまだ眠そうなラーロさんが大欠伸をして、シャツにズボンのラフな格好で庭に出て来て私の横にしゃがむと前のひよこ豆の莢を見た。

「前よりも大きく、まん丸に育ったなひよこ豆」

「はい、沢山の願いをひよこ豆に込めました…もしかすると育てる時にいっぱい泣いちゃったから、このひよこ豆は食べると少ししょっぱいかな?…ふふ」

一粒一粒パンパンに膨れたひよこ豆を採り、朝一に屋敷の裏で荷馬車の準備を始めていたお父様が貸してくれた採取カゴに入れていく。
それを見たラーロさんは「俺も手伝うかな」と言ってくれ、ひよこ豆の莢を採るのを隣で手伝ってくれた。

一粒一粒とひよこ豆の莢をカゴに入れて

「シャルちゃんの涙でしょっぱいひよこ豆か…それなら尚更のことチビ竜達にはこのひよこ豆を食べさせないとな」

「はい、必ず食べてもらいます」

今日会えたらみんなはどんな表情をするの?と思いながらひよこ豆を収穫していると、屋敷の玄関からエプロン姿のマリーさんが出て来た。

「ラーロさん、シャルロットお嬢様お疲れ様です。朝食の準備が整いました」

「はーいマリーさん、ひよこ豆の収穫がねもう直ぐ終わるから終わったら直ぐに食べに行くね」

「わかりました。では、終わりましたら直ぐにいらしてください」

マリーさんは厨房に戻り私達は残りのひよこ豆の莢を収穫して、ひよこ豆の莢が入ったカゴはラーロさんに持ってもらい荷馬車に乗せた。

「朝食を食べたら直ぐにでも出発をしよう」

「わかりました、お父様」

朝食も食べ終え出発の最後のチェックを部屋の中でマリーさんと始めた、箒に魔女の秘薬にアル様からもらったアル様特製ポーション、ひよこ豆の莢が入ったカゴはお父様の荷馬車にラーロさんが乗せてくれたから大丈夫。

後はアル様からもらった茶色の細長いガラスの瓶のポーションを、割れないように大事に持っていくためにはどうする?
これでいいかなとハンカチに包んで、胸元に魔女の秘薬も一緒に仕舞おうとすると、マリーさんに見られて止められた。

「シャルロットお嬢様、そこに閉まってはダメです、ここにお入れください」

マリーさんは手に持って来ていた竹製の小さな小物入れの蓋を開けた、中を覗くとそこには櫛に手鏡、ハンカチといった私の物が入っていた。

「ありがとう、マリーさんここに入れるね」

小物入れの開いた場所にハンカチにくるんだ、ポーションと魔女の秘薬を仕舞った。

「お嬢様、髪などが崩れましたら直ぐに私におっしゃってください、直させていただきます」 

「はい、その時はマリーさんにお願いしますね」

これで全部の準備が出来た、後は畑に行って反対側の竜人の国に繋がるだろう扉を開ける。

マリーさんと連なって部屋を出て玄関に向かう途中に、何時もの黒いローブを着て箒を持ったラーロさんが立っていた。

「ではラーロさん畑に行ってきます。あの、魔女の秘薬と箒を私にしばらく貸してくだい、それとほんの少しだけ箒に乗る許可をください」

ラーロさんの目を見てそう伝えると、目を細めてラーロさんは頷いてくれた。
 
「そう言うと思ったよ、仮弟子のシャルちゃん箒に乗ることをほんの少しだけ許そう。もし破ったら他の魔法の使用も禁止する、俺は国と国との国境まで見送りについて行くよ」

「はい、ラーロさんありがとうございます」

私はラーロさんにお辞儀をした、ほんの少し箒に乗ることが許された。

「シャルロット、ラーロ君、マリーそろそろ畑に行くぞ」

玄関前に荷馬車を止めたお父様は私たちを呼んだ。


私は荷馬車ではなくラーロさんの箒に乗せてもらった、昨日の練習をしたことを忘れない為に。

ラーロさんと一緒に飛ぶイメージと魔力を体に感じた、ふわっと浮く私とは違い、ぶわぁっと一気に魔力を感じ高く空中に飛び上がる箒。
その後の安定した箒の進みスピードの具合。

「やっぱりラーロさんと私では、高さも安定感が違うな」

「そりゃ当たり前だよ、俺は長年魔法使いをやっていてシャルちゃんとは箒に乗る回数も年数も違う、そう簡単に箒を操られては仮弟子とはいえ教える立場の俺が困るよ」

「そうだよね、でもいつかはラーロさんみたいに、綺麗にスピードを出し飛びたいな」


「シャルちゃんなら練習さえすれば大丈夫だよ、俺の本弟子になってもいいからね」


ラーロさんの本弟子か…竜人の国の事が終わったら考えてみようかな?

「シャルちゃん国境が見えてきたね、降りるからしっかり掴まっていてね」

「はい」

ラーロさんの箒はすーっと高度を落とし私を国境前で下ろしてくれた箒での移動が方が早かったみたいで、お父様の荷馬車は少し先に小さく見える。

「シャルちゃん落ち着いて行動するんだよ、君には出来ると俺は信じているよ」

微笑みポンとラーロさんの手が頭に乗り撫でてくれた。

「ありがとうラーロさん…あ、お父様の荷馬車が追い付いたみたいだから行くね」

ラーロさんに手を振り、私は近くに止まった荷馬車に走って近付き、後ろに乗っているマリーさんに手を掴んでもらい荷馬車に乗った。

「またね、ラーロさん」

「ああ、またなシャルちゃん、デュック、マリーさんもまた!」

手を挙げたラーロさんに手を振り国境でお別れをすると、ラーロさんは箒に跨り元来た道を飛んで戻って行った。

私達は国境を超えた直ぐに見えて来る大きな森に向かう。

あの森の奥には竜人の国がある。
シーラン様、リズ様、リオさんに早く会いたい。

国境を超えて数分で森の前に着いた荷馬車を降りているとお父様が近寄り

「シャルロット…この森の門の鍵はいくら魔力があって見えていても、いま私が受け継ぎ持っている、この魔法の鍵でしか開かないシャルロットよく見てみなさい」

とお父様は右手の甲を私に見せてくれた。

「緑色に光る鍵?」

鍵の持ち手の所にはドラゴンが横向きに座る模様が付いていた。こんなにはっきりと見たのは初めて、森の門を開ける時にお父様の右手が緑色の魔法陣が光っているのはわかっていたけど…。

「さあ、シャルロットにこの鍵を渡すから右手の甲を出しなさい」
「お父様!?」

「この森の後継者に…本当はシャルロットの旦那にしようと思っていたが、あの殿下とは無理だ…それに事がことだけに次の後継者にはシャルロットを選ぶ事にした」


森の次の後継者?


「本気なのお父様?」

「ああ、本気だともこの鍵を宿し反対側の扉を開けて竜人の国に行ってきなさい。私がシャルロットに出来るとしたらこれしかない、ただしちゃんと私達の元に帰ることだ私はリリヌと一緒にシャルロットの帰りを屋敷で待っているよ、終わったらみんなを連れて遊びに来たなさい」


「はい、お父様」


緊張でゴクリと喉が鳴った、鼓動は高鳴る私はいまからこの森を継承する。
遥か昔に竜人王が私の先祖に託した森を。

あなたが閉めた門をいまから開けさせてもらいます!

私が夢で見たとおりなら魔女の毒に苦しむあなたをみんなで力を合わせて助けるわ。


「シャルロット右手をここに出しなさい」


お父様の前に右手の項を出すと、お父様は両手で私の手を挟んだ途端に、緑色の魔法陣と緑の光が溢れた。


「【竜人の森の鍵とこの森の権限を私の娘シャルロットに渡す】」


お父様がそう唱えるとその魔法陣は消え緑色の光だけ徐々に大きくなり、森全体を覆う大きさな緑の光となった。

「いまから森の門の鍵がシャルロットに移るが、その時に少しチクっと痛みがあるが頑張るのじゃぞ」


(ええ、チクっと痛みがあるの!?)


私の手の甲の上に重ねた、お父様の緑色に光る手の甲の鍵が徐々に森の光と合わさり消えて行く、ぐぬぬっと額に汗をかき唸るお父様!

うわぁっ、かなり痛そうにお父様が顔を歪めているわ。

お父様の緑色に光る鍵が消え去ると私の手を離した、私の手の甲に緑色の魔法陣が表れ森を覆っていた緑色の光はその魔法陣を通して、私の甲に吸い込まれるように手の甲に入っていく。

お父様チクっとどころでは無いわ焼け付く感じ、熱くて手の甲がジリジリする!!

後どれくらい耐えればいいの?

「クッ!」

「もう少しだ頑張れシャルロット、最後のドラゴンの絵まで行けば終わる!」

「嘘っ、まだ鍵の途中よお父様、ジリジリと痛いわ!」

余りの痛さに声を上げた、そしてその後何分か耐え私の甲に緑色に光るドラゴンの鍵が写り、私はこの森の継承者となった。

「さあ、行ってきなさい」

「はい、行ってきますお父様」

お父様の荷馬車からひよこ豆のカゴを背中背負い、箒を持ちマリーさんの小物入れを持とうとしたら、横から手が出てきて小物入れをマリーが持った。

「マリーさん?」

「シャルロットお嬢様、お願いです私も連れて行ってください!」

「でも、危ないかもしれないよ」

「大丈夫です覚悟をしています。あの、私にも会いたい人が…その、いまして」

そう言って頬を赤らめたマリーさん…マリーさんにも思い人がいた。

(ええーーっ)

誰、誰なのだろう?私のマリーさんに好きな人がいた。凄く気になるから後で聞こう。

「そ、それならいいけど…危なくなったら逃げてね、もう、必死に走って逃げてね」

「はい!ありがとうございます。シャルロットお嬢様!」

私は緑に光る門に手をかざし手の甲の鍵を使って門を開ける。

「【解錠】」

私の手の鍵と魔法陣が光りガチャと音が鳴ると森の門が開いた。

「お父様行ってきます」
「旦那様行ってまいります」

「ああ、2人とも気を付けて行くんだぞ」

お父様と門の前で別れ私はマリーさんと森の中を歩くと畑が見えてきた、お父様のチシャの葉の畑から私のチシャの葉の畑に変わった。
となると此れからは私が育てて魔法協会にチシャの葉を卸す事になるのか。

だったら半分は私の大好物のひよこ豆を植えよう、と畑を横目に進み森の奥に着いた。

表の門と同じ緑色に光る門。
表の門は格子状の網目なのに比べて、この門は緑に光る壁のような門だった…その門にはデカデカと鍵と同じ横向きのドラゴンの絵が描かれていた。

その壁には触れるとビリっと体に電気が走る。

「いたっ、これを開けないとみんなには会えないのね」

門に手をかざし【解錠】と唱えては見たものをやはり緑色の鍵は光ったけど門は表の様には開かなかった。
叩いてみたり、パンチしてみたけど一向に電気が走るだけでビクりともしない。

どうやったら開くのかな?私は考えた。

竜人王が魔法でこの門を閉めたのならそれ以上の開ける為の魔力がいる、魔力を最大級までに高めて水魔法かな?
水鉄砲?バズーカ?大砲?をこの門にぶち当てれば開かないかな?

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