竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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おまけ

電子書籍とレンタル版の配信記念。

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 それはある日の午後のこと。
 城のひよこ豆の畑で多くのひよこ豆が育った。それを、ご一緒したシーラン様とガゴに収穫した。

「マリー見て、見て」
「どうなされたのですか? シャルロットお嬢様?」

 入り口をシーラン様に開けもらい、叫ぶ私の声に掃除中のマリーが部屋から出てきた。マリーに採れたての、ひよこ豆を入れたカゴを見せた。

「まぁ、シャルロットお嬢様。たくさんのひよこ豆ですね」
「そうでしょう、シーラン様と育てたの。でね、採れたてを食べたいのだけど、どうやって食べる? 塩茹がいいかな?」

 採れたて、新鮮なひよこ豆のカゴを三人で覗く。

「俺も塩茹でがいいな」

 とシーラン様。

「では、こういうのはどうですか? お夕飯のときに、ひよこ豆をサヤのままでフライパンでオリーブ油と炒めて、塩胡椒で味付けしたものと、もう一つは茹でてサヤを剥き、豆サラダにいたしましょう」

「どっちも美味しそう、楽しみだわ!」
「そうだな、俺も早く食べたい。シャルロット、夕飯まではまだ時間があるから、一緒にルーン文字の勉強と図鑑を見ようか」

「いいですね、シーラン様早く行きましょう」

 シーラン様側の部屋にひよこ豆を運び、キッチンに置き、そのままキッチンで並んで立つ。シーラン様はストレートティーをいれて、私は甘めのをいれて貰った。

 ソファーに座り図鑑を開いて、スライムから順序にルーン文字の復習を始める。
 わからないところは、シーラン様がすべて教えてくれた。

「シャルロットは最初の頃よりも、スラスラ読める様になったな」

「そうですか? リオさんの教え方がわかりやすいのと、シーラン様がいつも一緒にルーン文字の復習に、付き合ってくれるからですよ」

「そっか……それは、よかった」

 そう言ってシーラン様は微笑んだ。実はシャルロットが部屋に帰った後に、リオに頼みルーン文字の復習をしていた。そうした、彼の努力が実ったのだ。

 ♢

 シーラン様とルーン文字の復習を続け、魔法陣に映し出されたレークス様見て思い出す。そうだ私はまだ、シーラン様が描いたレークス様を見ていないと……
 この前、彼はーーチビドラちゃんだったもの。

「どうしたの、シャルロット?」
「シーラン様にお願いがあります。ここに映し出されているらレークス様を描いてください」

 すぐに理解したのか彼はいいよと笑った。シーラン様はペンを持ち復習用のノートに描き出した。 
 
「出来るまで見てはダメだからな」
「分かってますよ」

 シーラン様が走らせるペンの音だけが、静かな部屋に聞こえる。わたしはその横に座り、穏やかな時間を彼の側で感じていた。数分が立ち彼は「出来た」とペンの音が止まった。
 
「どうだ、シャルロット見てくれ!」

 隣に座るわたしに描き上がった絵を、彼は自信ありげに見せてくれた。
 そこで見たものは……私の絵よりも数段上手いレークス様がいた。

「……シ、シーラン様、絵が上手いわ」
「だろう? シャルロットのあの絵よりはだけども……ふふっ」

 ーーあの絵? 

「酷いわ。シーラン様ったら、むう……私だって自分が絵が下手なのはわかってます」

 この、このっとシーラン様の胸を軽く叩くと、彼も笑いながら返してくる。

「おい、やめろって」
「嫌よ。わたし怒ってますの、やめませんわ……あっ!」 

 その手をシーラン様に掴まれ、引っ張られて、ぽふっと彼の引き締まった胸に抱きとめられた。
 驚きと一瞬で上がる体温に、彼の爽やかな香りがわたしを包む。
 
「シーラン様⁉︎」
「シャルロット、一つ提案があるんだ」
「提案ですか?」

「あぁ、兄上やリオはまだ帰らないし夕飯まで時間がある。このまま昼寝をしよう」

 シーラン様は微笑み、わたしを胸に捕まえたまま目を瞑った。すぐにスースーと彼の寝息が聞こえてきた。
 疲れているのに、無理をさせちゃったかな?

「ありがとう、シーラン様。その提案に乗ります」

 彼に寄り添い、彼の鼓動を聞き、しばらくはドキドキしていたけれど……すーっと眠りに落ちた。

……
……

 夕方になり、リズ様とリオさん。そしてマリーが夕飯の支度にやって来た。

「ただいま……おーい、シーラン。部屋に灯がついてないぞ? お、シーランとシャルロットちゃん?」

「ご一緒にソファーで眠ってらっしゃいますね」
「あらあら…シャルロットお嬢様」

 薄暗くなった部屋のソファーの上で、ぐっすり眠る二人を見つけた。

「二人で、ルーン文字の勉強をしていたんだな」

 リズは音を出さない様に、開きっぱなしの図鑑とノートを閉じた。
 マリーはキッチンで夕飯の支度に取り掛かり、リズとリオは自室に着替えに入っていった。

 そして、数分後。目が覚めた二人を待っていたのは出来上がった夕飯と、ソファーの反対側で寛ぎながらニヤニヤと笑うリズの姿だった。

 その後、夕食時に散々リズにからかわれたのは、言うまでもない。
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