竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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第四章 獣人の国に咲いた魔女の毒花(竜人王祭編)

第16話

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 青桜の精霊を呼び、毒花を枯らした……やりきった、わたしの体はその場に倒れた。

 そして、今は真っ白な空間にいる。

 姿は高校の制服を着たわたし、上村花だ。
 なんだか、やりきって清々しい気分。


「あなた、なっていませんわ!」


 背後に聞こえた、このセリフは⁉︎ 
 なんと目の前に今世のシャルロットがいた。彼女は消えていなかった。

 だったら、後はシャルロットに任せて。
 わたし、上村花は前世の記憶として、シャルロットの中に残ればいい。

 本当は、そうなる筈だったんだもの。

「後はよろしく、シャルロットに任せるね」
「ちょっとあなた! 何、勝手に消えようと、なさっているのですか?」

 彼女は私の手を掴んだ。

「それは、わたしの役目が終わったからだよ。わたしはただの前世の記憶。今世のあなたに任せて消えるだけだよ」

 シャルロットは手を離さず、首を横に振った。

「消えてはダメよ。今まであなたはクレア王子の言葉で、消えかけた私を助けたのよ。あなたが私を救ったの」

 そんなこと言われても。

 トラックに引かれた次の瞬間に、王城の薔薇の庭園にいて、シャルロットになっていた。

 ではなく。

 シャルロットが学園に入ってから、なんらかの衝撃を受けて、前世の記憶を思い出す。

 あ、これって。昔に遊んでいた乙女ゲームだ、として。記憶の中だけに存在するだけの、わたし。

 しかし、ヒロインが出会いの時間軸を壊したおかげで。クレア王子の一言にショックを受けた、今世のシャルロットが消えてしまい。
 シャルロットの中には、上村花しかいなかった。

 わたしは消える事が嫌で、シャルロットに扮した。ただ、シャルロットが初めから持つ力を借りて、足掻いていただけ。

「シーラン様はどうするのですか? 好きなのでしょう?」

「好きだよ。大好き! わたしは精一杯やったから、次はシャルロットがシーラン様を幸せにしてあげて、わたしはあなたの中で、二人の幸せを祈るよ」

 

「「馬鹿なことを言わないで!」」



 シャルロットが何も無い空間を叩いた、そこの壁が崩れて、映像が浮かび上がる。

 ベッドに眠るシャルロットを見てる彼らは、疲れた様な、泣き疲れた様な顔をしていた。


「あなたが倒れて一ヶ月は経つわ」


 一ヶ月⁉︎ そんなに経っているんだ。


「シーラン様、リズ様、リオさん」


 みんな暗い表情に頬がこけてる……それに、寝ていないのか、目の下にクマが見えた。


「これでわかったでしょう? みんなは私ではなく、あなたを待ってるの。それなのに見ていただけの、私が現れてどうなるのです? あなたは竜人の国を救い。今回はこの国々を救ったのですわ」

「救えたの? そっか、わたしは救えたんだ……あぁ、よかった」

「何も、よくありませんわ。目を開いて見なさいよ! あなたの周りには、多くの人があなたの目を覚ますのを、待ってるの!」

 
 シーラン様達だけではなく、アル様、ラーロさん、エシャロットさん。

 お師匠様、アオさん、フォルテ様とヘルさん。竜人王様、スノー王妃。

 マリー、コッホ騎士団長、騎士団のみんな、チャコちゃん達。

 それにお父様とお母様がいた。


「わかったかしら? 目を覚ますのは何もしていない私ではダメなの。これまで必死にやり遂げた、あなたじゃなくてはならないわ」

「でも、ここは、シャルロットの世界でしょ?」

「何度も言うけど、クレア王子の時に私の心は壊れたの。もう生きていたくないとさえ思っていた。絶望の時。そこにあなたが現れたの。全然私らしくなくて、おバカで、馬鹿正直で、自分よりも周りしか見えないあなた」

 
「……シャルロット」


「頑張るあなたを見て、私もと、思ったわ。だから、私は消えずに今まで残れた」

 
「でも、欠片は壊れてしまった」

「それなら、先程。女神様が来て置いて行ったわ。お疲れ様と言ってね」


 シャルロットの手の中に、張りぼての様にくっ付いた。崩れてしまった半分の欠片があった。

 
「私があなたの中で、私では見れない世界を、これからも見せて欲しいの」


 半分の張りぼてが光り、シャルロットの半分とくっ付き、一つの球になっていく。


 シャルロットの影が薄くなる。


「シャルロット、わたしでいいの?」

「いいですわ。頑張り屋で、おバカなあなたを、私は好きなのですもの」 

 いつも見ているわ、しっかりおやりなさい。
 
 ……

 ……


 ……あ、暗闇が開ける、わたしの目が覚める。
 
 上村花だった時の記憶。シャルロットの子供の頃の記憶、クレア王子との記憶、今までのわたしの記憶、全部覚えてる。


 もう、わたしは前世の上村花ではなく、シャルロットなんだ。

 そして、真っ先に愛しい人の名を呼んだ。


「シーラン様、おはよう」

 その声に目を見開き、彼の肩は震えた……口を噛みしめ、笑おうとして、困った様な表情を見せた。

「あぁ……っ、おはよう、シャルロッ……ト」

 やつれた彼の目に涙が光る。それは周りのみんなの瞳にも……。

 
 シーラン様の手が恐る恐る伸びて、わたしの頬に触れた。


「温かい。この世界に神はいた。シャルロット! シャルロット! シャルロット!」


 名を呼んで、わたしを痛いくらいに抱きしめた。
 久しぶりに感じた彼の香り、わたしもシーラン様の背に手を回した。


「よかった、うえっ、、ほんとうによかったぁ、、シャルロットちゃん」
「えぇ、奇跡が起きました……ぐっ、、ほんとに、よかったシャルロットさ、、ま」


「わたしもまたみ……うぇ…っ、会えて……よがっだよーー!」


 次にお父様とお母様が側に来て、頭を撫でてくれて、抱きしめてくれた。わたし達よりも先に行くことは許さん! うんうん、わかってるよお父様。

 アル様、ラーロさん、エシャロットさん達は、言うことを聞かなかったと、怒られた後に「よくやりました」とアル様は褒めてくれた。

 フォルテ様とヘルさんは、わたしのお陰で毒花に悩まされることは無くなったと、喜んでくださった。

 お師匠様と目がパンパンに腫れたアオさん。ごめんね、ごめんねって、たくさん謝って。

「シャルロットちゃん……うわーぁぁぁぁん」

 また泣いてしまった。
 アオさんのせいじゃない、わたしが望んでやった事なんだよ。

「泣かないで、アオさん」
「シャルロットぢゃぁんん」

 どうやら、彼女の涙は止まらないみたいだ。近くにお師匠様がいるから平気かな。

「シャルロット様」

 チャコちゃん達、せっかく衣装を作ってもらったのに……汚してしまった。

「衣装、ごめんね」

「ううん、気にしないで。シャルロット様が目を覚ましてよかったぁ!」

 彼女達と調理場で知り合ってから、二回行われた、竜人王祭りには二回ともに参加出来なかった。
 来年こそは終わりまで、みんなと楽しみたいね。

 竜人王様とスノー王妃様。よくやった小娘と頷いている。


 その日は、みんなでたくさん泣いて、たくさん笑った。


 ひょんなことからシャルロットになった、わたしは、これからもシャルロットとして生きていく。


 思いっきり、この世界を楽しむわ。
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