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74話外伝 あなたの腕の中で12 婚約者
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「あら、その顔じゃ、婚約者のこと、知らなかったのね。」
「まあ、殿下ったら、大事なことを話さないなんて・・・。」
「フィオナ様はね、それはそれは、うっとりするほどお美しいお方で、殿下にお似合いの侯爵令嬢なのよ。」
「あなたなんかとは違うのよ。」
「あなたは所詮、殿下に弄ばれているってだけなのよ。」
令嬢たちは、まるで鬼の首を取ったかのような勝ち誇った顔で、これでもかとアデルに言葉の攻撃を浴びせ続けた。
だが、アデルの耳には途中からまったく届いていなかった。
エドに婚約者がいた・・・
あまりの衝撃に、頭の中が真っ白になっていた。
何も考えられない頭の中で、本能が叫んでいた。
この場にいてはいけない。一刻も早くこの場から逃げなくては・・・。
アデルは自分を取り囲む令嬢の隙間を手でこじ開けて、無我夢中で令嬢たちから逃げた。
そして出口を目指して走った。
周りの人々が驚いてアデルに振り向いたが、アデルには周りを見る余裕なんてなかった。
恥ずかしい!
婚約者がいる人のことを、愛しているなんて言ってしまった・・・。
ただただ、この場から消え去りたい、その思いだけで会場から出て行った。
走り去るアデルの背中を目で追っている銀髪の男性がいた。
隣国ノースロップ王国の第二王子であり、エドワードの親友でもあるビクターである。
それから少したって、ようやくエドワードが戻ってきた。
国王がエドワードを呼んだ理由は、外国から来た貴賓が、王太子にも挨拶がしたいと言い出したからなのだが、この客の挨拶が長くて、エドワードは思ったよりも長い時間拘束されてしまったのだ。
「まったく話が長くて困る・・・」
独り言を言いながらアデルの元に戻ってきたのだが、肝心のアデルがいない。
この場で待っているようにと頼んだのだが、会場内をぐるりと見渡しても、ピンクブロンドの髪色の令嬢はいなかった。
「ア、 アデル・・・?」
アデルの姿を見つけられずに途方に暮れていると、ビクターが近寄って来た。
「エド、君はとても大切なことを、まだ話していなかったのだな。」
「大切なことって? ビクター、お前は何か知っているのか?」
「ああ、偶然聞いてしまってね。アデル嬢は嫉妬深いご令嬢たちに、君の婚約者のことを聞かされていたよ。かなりの悪意を込めてね・・・。」
「ア、 アデルはどこに?」
エドワードが真っ青になってビクターに問う。
ビクターは出口を指さした。
「早く行ってあげるといい。きっとアデル嬢は泣いていると思うぞ。」
「わかった。ありがとう。ビクター、恩に着る。」
エドワードは急いで舞踏会会場を出て、アデルを探した。
会場の外は、所々に松明の灯りが灯っているが、明るいのはそこだけで、少し離れれば、暗くてよく見えない。
仄かな月明かりだけが頼りだった。
アデル、何処にいるんだ・・・?
エドワードは庭中を駆け回って探した。
エドワードがアデルのために手配した馬車は、馬車を持たない平民や下級貴族がよく利用する馬車で、迎えの時間になるまでは王宮に来ない。
だから、この夜道をアデルが一人で帰るとは思えず、馬車が来る時間まで、きっとどこかに隠れているはずだ。
それまでに何とか見つけなくてはと、エドワードは焦っていた。
舞踏会会場からずいぶんと離れた庭を探している最中、エドの耳に女性のすすり泣きが聞こえた。
しくしくとした泣き声に、時折り鼻をすする音も混じっている。
すすり泣きは大木の陰に隠れているベンチから聞こえていた。
エドワードはそうっと近づき、大木の幹からベンチを覗くと、そこには俯きハンカチで涙を拭いながら泣いているアデルの姿があった。
「ア・・・、アデル?」
アデルが顔を上げると、目の前にエドワードが立っていた。
「エ、エド・・・」
一瞬、エドワードの顔に視線を向けたアデルであったが、すぐに顔を背けて下を向く。
「アデル、俺の口から話すつもりだったのだが・・・、本当にすまなかった。」
「・・・・・・」
アデルはぎゅっと両手の拳を握り、ただ黙って下を向いている。
まるで身体全身で、エドワードの言葉を聞きたくないと叫んでいるようだ。
「アデル。お願いだ。俺の話を聞いてくれ。婚約者がいるのは本当だが、決して遊びのつもりであなたと付き合っていたわけじゃないんだ。俺は本気なんだ。どうか俺の気持ちを信じて欲しい。」
アデルは俯いたまま、フルフルと首を横に振り、またハンカチで涙を拭った。
「アデル、今から俺と婚約者のフィオナ嬢の話しをするから、聞いて欲しい。」
エドワードはアデルの隣に座ると、静かに、そして噛み締めるようにゆっくりと、子どもの頃の話を語り出した。
王太子エドワードと、ラードナー侯爵家の長女であるフィオナとの婚約はエドワードが七歳、フィオナが五歳の年に正式に成立した。
ラードナー侯爵家は財力で右に出る者はなく、何よりも貴族に対する影響力がもっとも強い家門であった。
それゆえ、王室にとってこの婚約は、何としてでも成立させたい案件であった。
ラ―ドナー侯爵にしても、娘の婚姻により王族と強い結びつきができることは願ってもないことだった。
これにてお互いの利益を考えた政略婚約が成立したのである。
しかし、あまりに早く幼い二人が顔を合わせるのは得策でないと思った両家は、分別が付く頃に初顔合わせをさせようと計画を立てた。
エドワードが十歳、フィオナが八歳の年に、王城の庭の一画にテーブルと椅子を用意して、二人のための初顔合わせのお茶会を開いた。
十歳のエドワードは、初めて会う婚約者に心躍らせていた。
十歳ともなれば、可愛らしい女の子に興味を持ち始める年ごろである。
フィオナ嬢は妖精のように可愛らしい女の子だと聞いていたから、そのワクワク感はなおさらであった。
お互いが椅子に座り、顔を見合わせた瞬間、エドワードは本当に妖精みたいだ、いや、天使かも・・・と本気で思った。
フィオナの水色の髪色、ピンク色の瞳、白い陶器の人形を思わせる滑らかな肌とさくらんぼのような唇。
聞きしに勝る可愛らしさだ。
こんなに可愛らしい令嬢が、僕のお嫁さんになるだなんて・・・。
だが、その思いは長くは続かなかった。
目の前に座っているフィオナが、一秒たりとも笑顔を見せないのだ。
無表情と言った言葉がぴったりするかもしれない。
にこりと微笑むこともなく、いったい何を考えているのかわからない・・・。
「初めまして、エドワード・ハウエルズです。これからよろしく。」
エドワードは王子スマイルで挨拶をしたが、
「初めまして、フィオナ・ラードナーです。」
フィオナは無表情でこれだけ口にすると、黙り込んだ。
エドワードと目を合わせたのは、挨拶をしたときだけで、それからはエドワードと目を合わそうともしなかった。
それでも、エドワードは会話のきっかけを作ろうともがいた。
「あの、あなたの好きなものは何ですか?」
その問にもフィオナは目を合わせずに答える。
「私が好きなもの・・・」
しばらく考えた末に、やっと出てきた答えが「特にございません。」
そして沈黙が流れる。
さすがにこれではまずいと思ったのか、フィオナも聞いてきた。
「あの・・・、殿下の好きなものは何ですか?」
だが、問いかける瞬間も、目を合わせる気持ちはないようだ。
「僕は、剣術が好きです。それから、木登りなんかも得意ですよ。」
「・・・剣術・・・、木登り・・・そうですか・・・。」
結局、それだけ口にしただけで、また沈黙が流れた。
フィオナの冷え切った対応に、彼女の侍女が青くなっていた。
「お嬢様は、どうもお加減が優れぬようですわ。もうそろそろお開きにしてもよろしいでしょうか。」
この問いに、エドワードの侍従も賛成した。
「そ、そのようですね。無理なされるとお身体に響きます。では、今日はこれにて・・・」
わずか十五分ほどの冷え切ったお茶会が終了した。
淹れたお茶は、まだほんのり温かかったと言うのに・・・。
これが一回目の最悪の出会いだった。
エドワードは、あんな令嬢と会話をするぐらいなら、乳兄弟で親友のフレッドと、剣術の稽古をしている方がよっぽどマシだと思った。
その翌年、二回目のお茶会が催された。
丸一年も経てば、フィオナも成長しているだろうと、淡い期待を寄せてはみたが、結果はまったく同じだった。
エドワードがどんなに笑顔で話しかけても、フィオナは相変わらず目を合わさず、にこりともしない。
聞いたことには最低限の短い言葉で答えるだけ。
そこには好意と言うものが微塵も感じられなかった。
俺は嫌われているのか?
エドワードの心の中に、フィオナに対する不信感が宿り始めた。
「まあ、殿下ったら、大事なことを話さないなんて・・・。」
「フィオナ様はね、それはそれは、うっとりするほどお美しいお方で、殿下にお似合いの侯爵令嬢なのよ。」
「あなたなんかとは違うのよ。」
「あなたは所詮、殿下に弄ばれているってだけなのよ。」
令嬢たちは、まるで鬼の首を取ったかのような勝ち誇った顔で、これでもかとアデルに言葉の攻撃を浴びせ続けた。
だが、アデルの耳には途中からまったく届いていなかった。
エドに婚約者がいた・・・
あまりの衝撃に、頭の中が真っ白になっていた。
何も考えられない頭の中で、本能が叫んでいた。
この場にいてはいけない。一刻も早くこの場から逃げなくては・・・。
アデルは自分を取り囲む令嬢の隙間を手でこじ開けて、無我夢中で令嬢たちから逃げた。
そして出口を目指して走った。
周りの人々が驚いてアデルに振り向いたが、アデルには周りを見る余裕なんてなかった。
恥ずかしい!
婚約者がいる人のことを、愛しているなんて言ってしまった・・・。
ただただ、この場から消え去りたい、その思いだけで会場から出て行った。
走り去るアデルの背中を目で追っている銀髪の男性がいた。
隣国ノースロップ王国の第二王子であり、エドワードの親友でもあるビクターである。
それから少したって、ようやくエドワードが戻ってきた。
国王がエドワードを呼んだ理由は、外国から来た貴賓が、王太子にも挨拶がしたいと言い出したからなのだが、この客の挨拶が長くて、エドワードは思ったよりも長い時間拘束されてしまったのだ。
「まったく話が長くて困る・・・」
独り言を言いながらアデルの元に戻ってきたのだが、肝心のアデルがいない。
この場で待っているようにと頼んだのだが、会場内をぐるりと見渡しても、ピンクブロンドの髪色の令嬢はいなかった。
「ア、 アデル・・・?」
アデルの姿を見つけられずに途方に暮れていると、ビクターが近寄って来た。
「エド、君はとても大切なことを、まだ話していなかったのだな。」
「大切なことって? ビクター、お前は何か知っているのか?」
「ああ、偶然聞いてしまってね。アデル嬢は嫉妬深いご令嬢たちに、君の婚約者のことを聞かされていたよ。かなりの悪意を込めてね・・・。」
「ア、 アデルはどこに?」
エドワードが真っ青になってビクターに問う。
ビクターは出口を指さした。
「早く行ってあげるといい。きっとアデル嬢は泣いていると思うぞ。」
「わかった。ありがとう。ビクター、恩に着る。」
エドワードは急いで舞踏会会場を出て、アデルを探した。
会場の外は、所々に松明の灯りが灯っているが、明るいのはそこだけで、少し離れれば、暗くてよく見えない。
仄かな月明かりだけが頼りだった。
アデル、何処にいるんだ・・・?
エドワードは庭中を駆け回って探した。
エドワードがアデルのために手配した馬車は、馬車を持たない平民や下級貴族がよく利用する馬車で、迎えの時間になるまでは王宮に来ない。
だから、この夜道をアデルが一人で帰るとは思えず、馬車が来る時間まで、きっとどこかに隠れているはずだ。
それまでに何とか見つけなくてはと、エドワードは焦っていた。
舞踏会会場からずいぶんと離れた庭を探している最中、エドの耳に女性のすすり泣きが聞こえた。
しくしくとした泣き声に、時折り鼻をすする音も混じっている。
すすり泣きは大木の陰に隠れているベンチから聞こえていた。
エドワードはそうっと近づき、大木の幹からベンチを覗くと、そこには俯きハンカチで涙を拭いながら泣いているアデルの姿があった。
「ア・・・、アデル?」
アデルが顔を上げると、目の前にエドワードが立っていた。
「エ、エド・・・」
一瞬、エドワードの顔に視線を向けたアデルであったが、すぐに顔を背けて下を向く。
「アデル、俺の口から話すつもりだったのだが・・・、本当にすまなかった。」
「・・・・・・」
アデルはぎゅっと両手の拳を握り、ただ黙って下を向いている。
まるで身体全身で、エドワードの言葉を聞きたくないと叫んでいるようだ。
「アデル。お願いだ。俺の話を聞いてくれ。婚約者がいるのは本当だが、決して遊びのつもりであなたと付き合っていたわけじゃないんだ。俺は本気なんだ。どうか俺の気持ちを信じて欲しい。」
アデルは俯いたまま、フルフルと首を横に振り、またハンカチで涙を拭った。
「アデル、今から俺と婚約者のフィオナ嬢の話しをするから、聞いて欲しい。」
エドワードはアデルの隣に座ると、静かに、そして噛み締めるようにゆっくりと、子どもの頃の話を語り出した。
王太子エドワードと、ラードナー侯爵家の長女であるフィオナとの婚約はエドワードが七歳、フィオナが五歳の年に正式に成立した。
ラードナー侯爵家は財力で右に出る者はなく、何よりも貴族に対する影響力がもっとも強い家門であった。
それゆえ、王室にとってこの婚約は、何としてでも成立させたい案件であった。
ラ―ドナー侯爵にしても、娘の婚姻により王族と強い結びつきができることは願ってもないことだった。
これにてお互いの利益を考えた政略婚約が成立したのである。
しかし、あまりに早く幼い二人が顔を合わせるのは得策でないと思った両家は、分別が付く頃に初顔合わせをさせようと計画を立てた。
エドワードが十歳、フィオナが八歳の年に、王城の庭の一画にテーブルと椅子を用意して、二人のための初顔合わせのお茶会を開いた。
十歳のエドワードは、初めて会う婚約者に心躍らせていた。
十歳ともなれば、可愛らしい女の子に興味を持ち始める年ごろである。
フィオナ嬢は妖精のように可愛らしい女の子だと聞いていたから、そのワクワク感はなおさらであった。
お互いが椅子に座り、顔を見合わせた瞬間、エドワードは本当に妖精みたいだ、いや、天使かも・・・と本気で思った。
フィオナの水色の髪色、ピンク色の瞳、白い陶器の人形を思わせる滑らかな肌とさくらんぼのような唇。
聞きしに勝る可愛らしさだ。
こんなに可愛らしい令嬢が、僕のお嫁さんになるだなんて・・・。
だが、その思いは長くは続かなかった。
目の前に座っているフィオナが、一秒たりとも笑顔を見せないのだ。
無表情と言った言葉がぴったりするかもしれない。
にこりと微笑むこともなく、いったい何を考えているのかわからない・・・。
「初めまして、エドワード・ハウエルズです。これからよろしく。」
エドワードは王子スマイルで挨拶をしたが、
「初めまして、フィオナ・ラードナーです。」
フィオナは無表情でこれだけ口にすると、黙り込んだ。
エドワードと目を合わせたのは、挨拶をしたときだけで、それからはエドワードと目を合わそうともしなかった。
それでも、エドワードは会話のきっかけを作ろうともがいた。
「あの、あなたの好きなものは何ですか?」
その問にもフィオナは目を合わせずに答える。
「私が好きなもの・・・」
しばらく考えた末に、やっと出てきた答えが「特にございません。」
そして沈黙が流れる。
さすがにこれではまずいと思ったのか、フィオナも聞いてきた。
「あの・・・、殿下の好きなものは何ですか?」
だが、問いかける瞬間も、目を合わせる気持ちはないようだ。
「僕は、剣術が好きです。それから、木登りなんかも得意ですよ。」
「・・・剣術・・・、木登り・・・そうですか・・・。」
結局、それだけ口にしただけで、また沈黙が流れた。
フィオナの冷え切った対応に、彼女の侍女が青くなっていた。
「お嬢様は、どうもお加減が優れぬようですわ。もうそろそろお開きにしてもよろしいでしょうか。」
この問いに、エドワードの侍従も賛成した。
「そ、そのようですね。無理なされるとお身体に響きます。では、今日はこれにて・・・」
わずか十五分ほどの冷え切ったお茶会が終了した。
淹れたお茶は、まだほんのり温かかったと言うのに・・・。
これが一回目の最悪の出会いだった。
エドワードは、あんな令嬢と会話をするぐらいなら、乳兄弟で親友のフレッドと、剣術の稽古をしている方がよっぽどマシだと思った。
その翌年、二回目のお茶会が催された。
丸一年も経てば、フィオナも成長しているだろうと、淡い期待を寄せてはみたが、結果はまったく同じだった。
エドワードがどんなに笑顔で話しかけても、フィオナは相変わらず目を合わさず、にこりともしない。
聞いたことには最低限の短い言葉で答えるだけ。
そこには好意と言うものが微塵も感じられなかった。
俺は嫌われているのか?
エドワードの心の中に、フィオナに対する不信感が宿り始めた。
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