霊能少女 麗奈 ―霊と対面する少女―

矢間カオル

文字の大きさ
14 / 19

14話 海と霊 三

しおりを挟む
急に、裕太のボートがゆさゆさと揺れ出した。

「キャァ、な、何? ど、どうして?」
春子の悲鳴と不安の声が聞こえた。

「わからない、俺もどうしてこんなに揺れるのか・・・」
裕太も焦っている。

波も静かで風もないのに、裕太のボートだけが大きく揺れているのだ。

「大変だわ。春子のボートが、このままでは転覆してしまう。」

「すぐ横につけよう。」
卓弥は急いで、かつ慎重にボートを近づけて行く。

「春子、じっとしてて。今助けに・・・」
私はここで絶句した。

海から上がって来た白い服を着た髪の長い女が、春子の背にへばりつき、彼女の首を絞め始めたのだ。

「は、春子!」

「麗奈、何が見える?」

「春子が、女の霊に首を絞められている。」

「それは悪霊だ。近づくに連れて、禍々しい邪悪な気が濃くなっている。」

私たちのボートは、裕太のボートに並んだ。

「く、苦しい・・・」
春子が首をかきむしるようにして苦しんでる。

「春子、今助けに・・・」

「麗奈、これほどの邪悪な気を放つ悪霊に説得は無理だ。アイツらは春子を自分の世界に引き込もうとしている。」

卓弥は黒水晶の数珠を、胸ポケットから取り出した。

「今から、除霊する。」
春子の後ろに感じる禍々しい気に向かって、卓弥は呪文を唱え始めた。

「ノウマク サマンダバザラダンセンダマカロシャダソワタヤウンタラタカンマン ノウマク サマンダバザラダンセンダマカロシャダソワタヤウンタラタカンマン・・・」

すごい集中力だ。

卓弥の放つ気が、悪霊を包み込み、女の霊は苦しそうな顔をしている。

「悪霊退散!」
卓弥が悪霊に手をかざした。

「ギャッ」
悪霊は叫び声をあげて、霧のように消えた。

悪霊が消えると同時に、ボートを揺らしていた無数の手も消えた。

「ふう、終わった・・・」
卓弥は安堵の声を上げて、ほっとした顔で私を見た。

「もう、いなくなっただろ? 俺は見えないけど、気は感じるからわかるんだ。」

「ええ、いなくなったわ。」

揺れが収まったボートの中で、裕太も春子もガタガタと震えていた。

「春子、もう大丈夫よ。」

「れ、麗奈・・・、今の何だったの? 私、すっごく苦しくなって、海に引っ張られているみたいだった。」

「お、俺も・・・、急にオールが動かせなくなって、ボートが転覆するんじゃないかって怖かった。」

「ここは悪霊の住処だったってわけだ。早くこの場から逃げよう。」

卓弥の言葉に、裕太も春子も驚いていたが、すぐに納得していた。

あれだけ怖い思いをしたのだから当然である。

私たちは急いで浜辺に戻り、二度と海に近づかなかった。



旅行が終わった後、裕太が私たちを呼び出したので、学校近くのファミレスに集合した。

「この前は悪かったな。あんな場所にボートで行くなんて・・・」

裕太が断崖絶壁から撮った写真の中から、大きくプリントした1枚を見せてくれた。

崖の上から海を写した写真だった。

「カメラの小さな画像では、俺、気が付かなかったんだ。知ってたら、絶対にあの場所には行かなかったのに・・・。」

テーブルに置かれた写真の海には、数えきれないほどの手が、にゅっと伸びていた。

まるで崖の上の私たちに向かって、おいでおいでと誘うように・・・。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

「お前のカメラ、ずっと映ってるよ」〜ホラースポット配信者が気づいた時には、もう遅かった〜

まさき
ホラー
ホラースポット専門のYouTuber・桐島悠は、霊も怪異も一切信じない合理主義者だ。 ある廃病院での配信中、今まで感じたことのない「違和感」を覚えた。しかし撮影は無事終了。その後も普通に配信を続け、あの夜のことなど忘れかけていた頃——深夜、金縛りにあう。 疲れてるだけだ。 しかし、それは始まりに過ぎなかった。 記憶の空白。知らない足跡。動画に毎回映り込む、同じ女の姿。そして——「やっと、見つけた」という声。 カメラが映し続けていたのは、心霊スポットではなかった。もっとずっと、近いところにいるものだった。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/3/2:『いおん』の章を追加。2026/3/9の朝頃より公開開始予定。 2026/3/1:『のぞいてくる』の章を追加。2026/3/8の朝頃より公開開始予定。 2026/2/28:『そうしき』の章を追加。2026/3/7の朝頃より公開開始予定。 2026/2/27:『でんしゃ』の章を追加。2026/3/6の朝頃より公開開始予定。 2026/2/26:『てがみ』の章を追加。2026/3/5の朝頃より公開開始予定。 2026/2/25:『くもりのゆうがた』の章を追加。2026/3/4の朝頃より公開開始予定。 2026/2/24:『ぬかるみ』の章を追加。2026/3/3の朝頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

処理中です...