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14話 海と霊 三
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急に、裕太のボートがゆさゆさと揺れ出した。
「キャァ、な、何? ど、どうして?」
春子の悲鳴と不安の声が聞こえた。
「わからない、俺もどうしてこんなに揺れるのか・・・」
裕太も焦っている。
波も静かで風もないのに、裕太のボートだけが大きく揺れているのだ。
「大変だわ。春子のボートが、このままでは転覆してしまう。」
「すぐ横につけよう。」
卓弥は急いで、かつ慎重にボートを近づけて行く。
「春子、じっとしてて。今助けに・・・」
私はここで絶句した。
海から上がって来た白い服を着た髪の長い女が、春子の背にへばりつき、彼女の首を絞め始めたのだ。
「は、春子!」
「麗奈、何が見える?」
「春子が、女の霊に首を絞められている。」
「それは悪霊だ。近づくに連れて、禍々しい邪悪な気が濃くなっている。」
私たちのボートは、裕太のボートに並んだ。
「く、苦しい・・・」
春子が首をかきむしるようにして苦しんでる。
「春子、今助けに・・・」
「麗奈、これほどの邪悪な気を放つ悪霊に説得は無理だ。アイツらは春子を自分の世界に引き込もうとしている。」
卓弥は黒水晶の数珠を、胸ポケットから取り出した。
「今から、除霊する。」
春子の後ろに感じる禍々しい気に向かって、卓弥は呪文を唱え始めた。
「ノウマク サマンダバザラダンセンダマカロシャダソワタヤウンタラタカンマン ノウマク サマンダバザラダンセンダマカロシャダソワタヤウンタラタカンマン・・・」
すごい集中力だ。
卓弥の放つ気が、悪霊を包み込み、女の霊は苦しそうな顔をしている。
「悪霊退散!」
卓弥が悪霊に手をかざした。
「ギャッ」
悪霊は叫び声をあげて、霧のように消えた。
悪霊が消えると同時に、ボートを揺らしていた無数の手も消えた。
「ふう、終わった・・・」
卓弥は安堵の声を上げて、ほっとした顔で私を見た。
「もう、いなくなっただろ? 俺は見えないけど、気は感じるからわかるんだ。」
「ええ、いなくなったわ。」
揺れが収まったボートの中で、裕太も春子もガタガタと震えていた。
「春子、もう大丈夫よ。」
「れ、麗奈・・・、今の何だったの? 私、すっごく苦しくなって、海に引っ張られているみたいだった。」
「お、俺も・・・、急にオールが動かせなくなって、ボートが転覆するんじゃないかって怖かった。」
「ここは悪霊の住処だったってわけだ。早くこの場から逃げよう。」
卓弥の言葉に、裕太も春子も驚いていたが、すぐに納得していた。
あれだけ怖い思いをしたのだから当然である。
私たちは急いで浜辺に戻り、二度と海に近づかなかった。
旅行が終わった後、裕太が私たちを呼び出したので、学校近くのファミレスに集合した。
「この前は悪かったな。あんな場所にボートで行くなんて・・・」
裕太が断崖絶壁から撮った写真の中から、大きくプリントした1枚を見せてくれた。
崖の上から海を写した写真だった。
「カメラの小さな画像では、俺、気が付かなかったんだ。知ってたら、絶対にあの場所には行かなかったのに・・・。」
テーブルに置かれた写真の海には、数えきれないほどの手が、にゅっと伸びていた。
まるで崖の上の私たちに向かって、おいでおいでと誘うように・・・。
「キャァ、な、何? ど、どうして?」
春子の悲鳴と不安の声が聞こえた。
「わからない、俺もどうしてこんなに揺れるのか・・・」
裕太も焦っている。
波も静かで風もないのに、裕太のボートだけが大きく揺れているのだ。
「大変だわ。春子のボートが、このままでは転覆してしまう。」
「すぐ横につけよう。」
卓弥は急いで、かつ慎重にボートを近づけて行く。
「春子、じっとしてて。今助けに・・・」
私はここで絶句した。
海から上がって来た白い服を着た髪の長い女が、春子の背にへばりつき、彼女の首を絞め始めたのだ。
「は、春子!」
「麗奈、何が見える?」
「春子が、女の霊に首を絞められている。」
「それは悪霊だ。近づくに連れて、禍々しい邪悪な気が濃くなっている。」
私たちのボートは、裕太のボートに並んだ。
「く、苦しい・・・」
春子が首をかきむしるようにして苦しんでる。
「春子、今助けに・・・」
「麗奈、これほどの邪悪な気を放つ悪霊に説得は無理だ。アイツらは春子を自分の世界に引き込もうとしている。」
卓弥は黒水晶の数珠を、胸ポケットから取り出した。
「今から、除霊する。」
春子の後ろに感じる禍々しい気に向かって、卓弥は呪文を唱え始めた。
「ノウマク サマンダバザラダンセンダマカロシャダソワタヤウンタラタカンマン ノウマク サマンダバザラダンセンダマカロシャダソワタヤウンタラタカンマン・・・」
すごい集中力だ。
卓弥の放つ気が、悪霊を包み込み、女の霊は苦しそうな顔をしている。
「悪霊退散!」
卓弥が悪霊に手をかざした。
「ギャッ」
悪霊は叫び声をあげて、霧のように消えた。
悪霊が消えると同時に、ボートを揺らしていた無数の手も消えた。
「ふう、終わった・・・」
卓弥は安堵の声を上げて、ほっとした顔で私を見た。
「もう、いなくなっただろ? 俺は見えないけど、気は感じるからわかるんだ。」
「ええ、いなくなったわ。」
揺れが収まったボートの中で、裕太も春子もガタガタと震えていた。
「春子、もう大丈夫よ。」
「れ、麗奈・・・、今の何だったの? 私、すっごく苦しくなって、海に引っ張られているみたいだった。」
「お、俺も・・・、急にオールが動かせなくなって、ボートが転覆するんじゃないかって怖かった。」
「ここは悪霊の住処だったってわけだ。早くこの場から逃げよう。」
卓弥の言葉に、裕太も春子も驚いていたが、すぐに納得していた。
あれだけ怖い思いをしたのだから当然である。
私たちは急いで浜辺に戻り、二度と海に近づかなかった。
旅行が終わった後、裕太が私たちを呼び出したので、学校近くのファミレスに集合した。
「この前は悪かったな。あんな場所にボートで行くなんて・・・」
裕太が断崖絶壁から撮った写真の中から、大きくプリントした1枚を見せてくれた。
崖の上から海を写した写真だった。
「カメラの小さな画像では、俺、気が付かなかったんだ。知ってたら、絶対にあの場所には行かなかったのに・・・。」
テーブルに置かれた写真の海には、数えきれないほどの手が、にゅっと伸びていた。
まるで崖の上の私たちに向かって、おいでおいでと誘うように・・・。
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