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17話 ライブハウスと霊 三
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「あっ、ちょっと聞いてみただけ。気にしないでね。」
「うん、わかった。」
春子はそれ以上聞いてくる気配はなく、もう、次の演奏に夢中になっていた。
こういうところも、春子の良いところだと思う。
ここから先、私の意識はベースのイケメン幽霊にくぎ付けになった。
一生懸命に演奏しているのに、何故か悲しそうに見える。
いったい何が彼を悲しませているのだろう。
このライブハウスから離れられないのは、何故なんだろう・・・。
すべての演奏が終わり、グループの皆から終わりの挨拶と、物品販売の宣伝があった。
会場の客たちは、物品販売のコーナーへと流れて行く。
「すごく良かったわ。私ファンになっちゃった。絶対このバンド、メジャーになるよね。」
春子は興奮してそう言うが、ロックの良しあしなんてわからない私は、何と答えて良いのかわからず、「そうなったらいいね。」と答えた。
「私、物品販売に行ってくる。麗奈は?」
「うーん、疲れたし、私はここで待ってるわ。」
演奏が終わった後にドリンクをもらいに行って、疲れたのか床に座って飲んでいる人がいる。
同じように座っていれば、きっと目立たないだろう。
私は壁を背にして床に座り、魂を飛ばした。
ステージの上では、まだベースの幽霊が演奏を続けている。
私はベースの幽霊に対面した。
「演奏中、ごめんなさい。ライブは終わったのに、どうしてまだ弾いているのですか?」
「あんた、俺が見えるの?」
「はい。さっきのライブも、ずっとあなたを見てました。」
「俺、ここで仲間を待ってるんだ。だけど、俺、ライブが好きだからさ。待ってる間も、他のヤツラに混じって弾かせてもらってるんだ。」
「何故、待ってるんですか?」
「俺、ここに来る途中で事故っちゃって、俺のせいでライブできなくなったんだ。だから、皆に謝りたくて待ってるんだけど、アイツら来ないんだ。」
「あの・・・、グループ名は?」
「レッドリップス。俺はベース担当。」
「レッドリップス? すごい! あの・・・、レッドリップスは成功してメジャーになってて、ここを飛び立って、今はもっと大きい会場でライブしています。だから・・・、もうここには来ないと思います。」
「そっか・・・。アイツら、夢を叶えたんだ・・・。俺も一緒に飛び立ちたかったな・・・。」
「あの、レッドリップスは、今は世界のトップを目指してます。だから、もっと高いところから、皆さんを見守ってはいかがでしょうか。」
「そうか・・・、そうだよな。世界を目指すって、俺らの口癖だったもんな。お嬢さん、ありがとう。俺、もう行くわ。もっと高いところへ。」
ベースの幽霊は、私の目の前からフッと消えた。
しばらくすると、汗を拭き拭き春子が戻って来た。
「いやーすごいのなんのって。ファンのエネルギーはすごいわ。麗奈、見てこれ。タオルと缶バッチ買っちゃったあ。」
嬉しそうな顔ではしゃいでいた春子が、誰もいないステージを見て目を細めた。
「このステージで、レッドリップスが演奏してたんだって思ったら、なんか感動しちゃうな。ねえ、麗奈、知ってる? レッドリップスが俺たちは世界を目指すってよく言ってるの、あれって、死んじゃった元メンバーの口癖が移っちゃったんだって。」
「ベースの?」
「あれ、麗奈、そんなことまで知ってたの? メジャーになる前に死んじゃったからね。アイツの分も俺たちは頑張って世界を目指すって、リーダーが言ってた。今日のグループも、どんどん売れてメジャーになったらいいのになぁ。」
「春子が応援したら、世界のトップを目指せるようになるかもよ。」
「そうなったらいいなあ。」
ニコニコしながらそう話す春子の肩には、もうおじいさんは乗っていなかった。
「うん、わかった。」
春子はそれ以上聞いてくる気配はなく、もう、次の演奏に夢中になっていた。
こういうところも、春子の良いところだと思う。
ここから先、私の意識はベースのイケメン幽霊にくぎ付けになった。
一生懸命に演奏しているのに、何故か悲しそうに見える。
いったい何が彼を悲しませているのだろう。
このライブハウスから離れられないのは、何故なんだろう・・・。
すべての演奏が終わり、グループの皆から終わりの挨拶と、物品販売の宣伝があった。
会場の客たちは、物品販売のコーナーへと流れて行く。
「すごく良かったわ。私ファンになっちゃった。絶対このバンド、メジャーになるよね。」
春子は興奮してそう言うが、ロックの良しあしなんてわからない私は、何と答えて良いのかわからず、「そうなったらいいね。」と答えた。
「私、物品販売に行ってくる。麗奈は?」
「うーん、疲れたし、私はここで待ってるわ。」
演奏が終わった後にドリンクをもらいに行って、疲れたのか床に座って飲んでいる人がいる。
同じように座っていれば、きっと目立たないだろう。
私は壁を背にして床に座り、魂を飛ばした。
ステージの上では、まだベースの幽霊が演奏を続けている。
私はベースの幽霊に対面した。
「演奏中、ごめんなさい。ライブは終わったのに、どうしてまだ弾いているのですか?」
「あんた、俺が見えるの?」
「はい。さっきのライブも、ずっとあなたを見てました。」
「俺、ここで仲間を待ってるんだ。だけど、俺、ライブが好きだからさ。待ってる間も、他のヤツラに混じって弾かせてもらってるんだ。」
「何故、待ってるんですか?」
「俺、ここに来る途中で事故っちゃって、俺のせいでライブできなくなったんだ。だから、皆に謝りたくて待ってるんだけど、アイツら来ないんだ。」
「あの・・・、グループ名は?」
「レッドリップス。俺はベース担当。」
「レッドリップス? すごい! あの・・・、レッドリップスは成功してメジャーになってて、ここを飛び立って、今はもっと大きい会場でライブしています。だから・・・、もうここには来ないと思います。」
「そっか・・・。アイツら、夢を叶えたんだ・・・。俺も一緒に飛び立ちたかったな・・・。」
「あの、レッドリップスは、今は世界のトップを目指してます。だから、もっと高いところから、皆さんを見守ってはいかがでしょうか。」
「そうか・・・、そうだよな。世界を目指すって、俺らの口癖だったもんな。お嬢さん、ありがとう。俺、もう行くわ。もっと高いところへ。」
ベースの幽霊は、私の目の前からフッと消えた。
しばらくすると、汗を拭き拭き春子が戻って来た。
「いやーすごいのなんのって。ファンのエネルギーはすごいわ。麗奈、見てこれ。タオルと缶バッチ買っちゃったあ。」
嬉しそうな顔ではしゃいでいた春子が、誰もいないステージを見て目を細めた。
「このステージで、レッドリップスが演奏してたんだって思ったら、なんか感動しちゃうな。ねえ、麗奈、知ってる? レッドリップスが俺たちは世界を目指すってよく言ってるの、あれって、死んじゃった元メンバーの口癖が移っちゃったんだって。」
「ベースの?」
「あれ、麗奈、そんなことまで知ってたの? メジャーになる前に死んじゃったからね。アイツの分も俺たちは頑張って世界を目指すって、リーダーが言ってた。今日のグループも、どんどん売れてメジャーになったらいいのになぁ。」
「春子が応援したら、世界のトップを目指せるようになるかもよ。」
「そうなったらいいなあ。」
ニコニコしながらそう話す春子の肩には、もうおじいさんは乗っていなかった。
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