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39話 虹の女神
私の問いに、キャロルは一瞬青ざめ、言葉に詰まったが、自分にとっての最適解を導き出した。
「えっ? あ、あの……。ア、アスラスとは、何もありません。誓って本当です」
まあ、アスラス様のことだけなら、嘘ではないものね。
「それは良かったです。あなたは純潔なのですね。早速、僕の花嫁として、国にいる両親に連絡するといたしましょう。ああ、やはり、あなたこそ、僕の運命の乙女だったのですね」
「は、はい。私たちはお互いに運命の相手なのですわ」
話が終わった後、私は馬車までキャロルをエスコートし、笑顔で見送った。
種はばらまいた。
後は、この種が芽を出すのを、私はじっと待つだけ……。
ロウタス侯爵邸を出て行ったキャロルと入れ替わりに、ジェニファが報告にやって来た。
「王女がいない間に、種は芽を出した。師匠の方も、抜かりなくやってくれている」
「やっぱりね。おそらくそんなことだろうと思ったわ。これから大変なことになるから、私もすぐに王宮に戻るわ」
私は、キャロルがここへきている間に、ジェニファとステイクにある任務をお願いしていた。
この二人のことだから、初めから安心して任せていたのだが、ものの見事に予想は的中したと言うわけだ。
「今日まいた種は、どうなるのかしらね。楽しみだわ」
私が王宮に戻ると、王宮は上を下への大騒ぎになっていた。
キャロルの泣き叫ぶ声が、廊下にまで響いている。
「ない、ないのよ。ベリード様からいただいた虹の女神がないのよ。いったい誰が盗んだの?」
キャロルが自室に戻った後、嬉しさのあまり、虹の女神を握って願い事をしようとしたら、箱ごと消えていた。
毎日願い事をするために、王宮の金庫にしまわず、自室に置いていたのが仇になってしまったのだ。
「メイド長、私がいない間に私の部屋に入ったのは誰なの?」
メイド長アンナが、スンとした顔で報告をする。
「王女様のお部屋に入ったのは五人でございます。ただし、それ以外の者が入ったのかどうかは残念ながらわかりかねます」
「じゃあ、その五人と、私の部屋に入れそうな使用人を全員呼んでちょうだい」
早速、メイド長の指示で多くのメイドが広間に集められた。
当然その中に、私も入っている。
一番疑われている五人のメイドは、口々に身の潔白を叫んだ。
「私は何も知りません。いつも通りに王女様のお部屋の掃除をしただけでございます」
「私も、知りません。私はベッドのシーツを取り換えただけでございます」
五人がそれぞれ知らない、関係ないと主張するのだが、キャロルの怒りは収まらなかった。
「王女様、ここに集めた者たちは、その時間に城から出た記録がございません。ですから、城の外に持ち出すのは不可能だと思われます」
アンナが無表情で淡々と言う。
「王女様、どうか、私たちの部屋をお探しください。身体検査をしていただいてもかまいませんので、どうか身の潔白を証明させてくださいませ」
メイドの一人が威勢よく叫ぶと、皆もそれに続いた。
結局、五人のメイドを裸にしても、全ての部屋をくまなく探しても、虹の女神は見つからなかった。
私の部屋も捜索されたが、もちろんあるはずがない。
すべての部屋を探す人も大変だったと思う。
だが、探したところで見つかりっこないのだ。
虹の女神は、とっくのとうに城の外に持ち出されたのだから。
翌日の夜、私はロウタス侯爵邸に戻り、ベリードに変装して、客間で兄ボガードと話をした。
メイドたちが、ボガードと私のためにお茶やお菓子を用意し、いつでも用事を言いつけられても良いように、部屋に控えてくれている。
「ベリード、君は本当にキャロル王女と結婚するつもりなのか?」
「ああ、そのつもりだ。彼女は清い乙女だとわかったから、僕の両親も反対することはないだろう。それでだ、彼女のために、今度は指輪を贈ろうと思うのだが、どこの宝石店が良いのだろうか?」
「ああ、それなら大通りにあるアダマス宝石店がいいだろう。格式の高い老舗の宝石店だ」
「わかった。ありがとう。では、明日、そこに行ってみるとしよう」
私と兄は、ワイングラスを掲げて、チンと合わせて乾杯した。
「えっ? あ、あの……。ア、アスラスとは、何もありません。誓って本当です」
まあ、アスラス様のことだけなら、嘘ではないものね。
「それは良かったです。あなたは純潔なのですね。早速、僕の花嫁として、国にいる両親に連絡するといたしましょう。ああ、やはり、あなたこそ、僕の運命の乙女だったのですね」
「は、はい。私たちはお互いに運命の相手なのですわ」
話が終わった後、私は馬車までキャロルをエスコートし、笑顔で見送った。
種はばらまいた。
後は、この種が芽を出すのを、私はじっと待つだけ……。
ロウタス侯爵邸を出て行ったキャロルと入れ替わりに、ジェニファが報告にやって来た。
「王女がいない間に、種は芽を出した。師匠の方も、抜かりなくやってくれている」
「やっぱりね。おそらくそんなことだろうと思ったわ。これから大変なことになるから、私もすぐに王宮に戻るわ」
私は、キャロルがここへきている間に、ジェニファとステイクにある任務をお願いしていた。
この二人のことだから、初めから安心して任せていたのだが、ものの見事に予想は的中したと言うわけだ。
「今日まいた種は、どうなるのかしらね。楽しみだわ」
私が王宮に戻ると、王宮は上を下への大騒ぎになっていた。
キャロルの泣き叫ぶ声が、廊下にまで響いている。
「ない、ないのよ。ベリード様からいただいた虹の女神がないのよ。いったい誰が盗んだの?」
キャロルが自室に戻った後、嬉しさのあまり、虹の女神を握って願い事をしようとしたら、箱ごと消えていた。
毎日願い事をするために、王宮の金庫にしまわず、自室に置いていたのが仇になってしまったのだ。
「メイド長、私がいない間に私の部屋に入ったのは誰なの?」
メイド長アンナが、スンとした顔で報告をする。
「王女様のお部屋に入ったのは五人でございます。ただし、それ以外の者が入ったのかどうかは残念ながらわかりかねます」
「じゃあ、その五人と、私の部屋に入れそうな使用人を全員呼んでちょうだい」
早速、メイド長の指示で多くのメイドが広間に集められた。
当然その中に、私も入っている。
一番疑われている五人のメイドは、口々に身の潔白を叫んだ。
「私は何も知りません。いつも通りに王女様のお部屋の掃除をしただけでございます」
「私も、知りません。私はベッドのシーツを取り換えただけでございます」
五人がそれぞれ知らない、関係ないと主張するのだが、キャロルの怒りは収まらなかった。
「王女様、ここに集めた者たちは、その時間に城から出た記録がございません。ですから、城の外に持ち出すのは不可能だと思われます」
アンナが無表情で淡々と言う。
「王女様、どうか、私たちの部屋をお探しください。身体検査をしていただいてもかまいませんので、どうか身の潔白を証明させてくださいませ」
メイドの一人が威勢よく叫ぶと、皆もそれに続いた。
結局、五人のメイドを裸にしても、全ての部屋をくまなく探しても、虹の女神は見つからなかった。
私の部屋も捜索されたが、もちろんあるはずがない。
すべての部屋を探す人も大変だったと思う。
だが、探したところで見つかりっこないのだ。
虹の女神は、とっくのとうに城の外に持ち出されたのだから。
翌日の夜、私はロウタス侯爵邸に戻り、ベリードに変装して、客間で兄ボガードと話をした。
メイドたちが、ボガードと私のためにお茶やお菓子を用意し、いつでも用事を言いつけられても良いように、部屋に控えてくれている。
「ベリード、君は本当にキャロル王女と結婚するつもりなのか?」
「ああ、そのつもりだ。彼女は清い乙女だとわかったから、僕の両親も反対することはないだろう。それでだ、彼女のために、今度は指輪を贈ろうと思うのだが、どこの宝石店が良いのだろうか?」
「ああ、それなら大通りにあるアダマス宝石店がいいだろう。格式の高い老舗の宝石店だ」
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私と兄は、ワイングラスを掲げて、チンと合わせて乾杯した。
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