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40話 宝石店
私は翌日の午前中に、早速アダマス宝石店に向かった。
大通りにある店の中でも、店構えは一際ゴージャスで、ウインドウに飾られている宝石たちが競い合うようにキラキラと輝いている。
王都でも一、二を争う有名宝石店だと言われているだけのことはある。
中に入ろうとした瞬間、私は背後から呼び止められた。
「ベリード様、少しお話がございますが、よろしいでしょうか?」
振り返ると、私を呼び止めたのはグリックだった。
金髪に新緑のような緑の瞳、バランス良く整った目鼻立ちは、そこに立っているだけで人目を引く。
ましてや、私という美男子も一緒だから、大通りを歩いている人の注目の的になってしまった。
「あなたは、どなたですか?」
「私はグリック・ブラカリア、伯爵家の息子です。ここではなんですから、場所を変えませんか?」
「ふむ、僕の護衛が一緒でもかまわないのなら」
「もちろんです。では、こちらへ」
私は、護衛に扮したジェニファと一緒に、グリックの案内で近所にある高級レストランに足を踏み入れた。
ここで食事でもするのかと思ったが、グリックはホールを抜け、奥へと進んで行く。
私たちは、その先にある個室の中に入って、やっと腰を落ち着けることができた。
テーブルも椅子も、部屋に置かれている絵画や壺なども、全てが一流品で、大公の息子をもてなすに相応しい部屋である。
「お時間をとらせて申し訳ないが、これから話すことは、ベリード様にとって、とても大切なことなのです」
グリックが指を組みながら、もったいぶって言った。
「そうですか。初対面のあなたが、いったい何を教えてくれると言うのでしょう?」
「べリード様は、キャロル王女と婚約をすると聞きましたが、それは考え直した方がよろしいと思います」
「不思議ですね。何故、見ず知らずのあなたが僕にそのようなことを?」
「ベリード様のご家門は、純潔の乙女でないと結婚できないと聞きました。それが答えです」
「そうですか。あなたの言いたいことはわかりました。ですが、それを信じろと言われても、証拠があるわけではなし、難しいですね。あなたが、ただ、やっかんでいるとしか思えませんね」
「証拠は……」
「ストップ!」
私はグリックが言いかけた言葉を遮った。
「それ以上は、ここで言うのはお控えください。僕が聞いたところで、正否の判断などできませんから。もし、本当に証拠があるのなら、僕だけに教えるのではなく、キャロル様と一緒にいるときに、聞きたいですね」
「はあ、そうですか。あまり大げさにはしたくなかったのですが……。わかりました。では、そのようにいたしましょう。もうすぐお茶が来ると思いますが、飲んでいかれますか?」
「いえ、お話が終わったのなら、僕はこれにて失礼いたします」
私はグリックを残してレストランを出て、アダマス宝石店に入った。
数多い指輪の中から、派手で目立つ指輪を数点見せてもらって、その中で特に気に入ったものを手に取った。
ベリードの瞳の色の大粒のサファイヤの周りにダイヤが三重にあしらわれている何ともゴージャスな指輪である。
キャロル好みの派手なデザインなので、絶対に喜ぶはず。
値段は張るが、こんなところでケチる気はない。
店主がニコニコしながら話しかけてきた。
「お客様、そちらの商品は当店自慢の最高品質の指輪でして、贈り物には最適でございます。指のサイズに合わせてお直しいたしますが?」
「いや、ちょうど彼女の指のサイズと同じだから、このまま購入することにしよう」
「さようでございますか。それでは早速お包みいたします」
私はキャロルの指のサイズを知っている。
彼女のメイドをしていたことが、こんなところで役に立つとは……。
私はサファイヤの指輪を買い、内ポケットにしまった。
そしてジェニファと一緒に宝石店を出て、馬宿に向かう。
人通りの多い大通りに馬車を停めるのははばかられ、馬宿に馬車を預けていたのだが、その場所は大通りから少しばかり外れた場所にある。
私とジェニファは、大通りを外れたところで、見るからにガラの悪そうな男たちに囲まれた。
大通りにある店の中でも、店構えは一際ゴージャスで、ウインドウに飾られている宝石たちが競い合うようにキラキラと輝いている。
王都でも一、二を争う有名宝石店だと言われているだけのことはある。
中に入ろうとした瞬間、私は背後から呼び止められた。
「ベリード様、少しお話がございますが、よろしいでしょうか?」
振り返ると、私を呼び止めたのはグリックだった。
金髪に新緑のような緑の瞳、バランス良く整った目鼻立ちは、そこに立っているだけで人目を引く。
ましてや、私という美男子も一緒だから、大通りを歩いている人の注目の的になってしまった。
「あなたは、どなたですか?」
「私はグリック・ブラカリア、伯爵家の息子です。ここではなんですから、場所を変えませんか?」
「ふむ、僕の護衛が一緒でもかまわないのなら」
「もちろんです。では、こちらへ」
私は、護衛に扮したジェニファと一緒に、グリックの案内で近所にある高級レストランに足を踏み入れた。
ここで食事でもするのかと思ったが、グリックはホールを抜け、奥へと進んで行く。
私たちは、その先にある個室の中に入って、やっと腰を落ち着けることができた。
テーブルも椅子も、部屋に置かれている絵画や壺なども、全てが一流品で、大公の息子をもてなすに相応しい部屋である。
「お時間をとらせて申し訳ないが、これから話すことは、ベリード様にとって、とても大切なことなのです」
グリックが指を組みながら、もったいぶって言った。
「そうですか。初対面のあなたが、いったい何を教えてくれると言うのでしょう?」
「べリード様は、キャロル王女と婚約をすると聞きましたが、それは考え直した方がよろしいと思います」
「不思議ですね。何故、見ず知らずのあなたが僕にそのようなことを?」
「ベリード様のご家門は、純潔の乙女でないと結婚できないと聞きました。それが答えです」
「そうですか。あなたの言いたいことはわかりました。ですが、それを信じろと言われても、証拠があるわけではなし、難しいですね。あなたが、ただ、やっかんでいるとしか思えませんね」
「証拠は……」
「ストップ!」
私はグリックが言いかけた言葉を遮った。
「それ以上は、ここで言うのはお控えください。僕が聞いたところで、正否の判断などできませんから。もし、本当に証拠があるのなら、僕だけに教えるのではなく、キャロル様と一緒にいるときに、聞きたいですね」
「はあ、そうですか。あまり大げさにはしたくなかったのですが……。わかりました。では、そのようにいたしましょう。もうすぐお茶が来ると思いますが、飲んでいかれますか?」
「いえ、お話が終わったのなら、僕はこれにて失礼いたします」
私はグリックを残してレストランを出て、アダマス宝石店に入った。
数多い指輪の中から、派手で目立つ指輪を数点見せてもらって、その中で特に気に入ったものを手に取った。
ベリードの瞳の色の大粒のサファイヤの周りにダイヤが三重にあしらわれている何ともゴージャスな指輪である。
キャロル好みの派手なデザインなので、絶対に喜ぶはず。
値段は張るが、こんなところでケチる気はない。
店主がニコニコしながら話しかけてきた。
「お客様、そちらの商品は当店自慢の最高品質の指輪でして、贈り物には最適でございます。指のサイズに合わせてお直しいたしますが?」
「いや、ちょうど彼女の指のサイズと同じだから、このまま購入することにしよう」
「さようでございますか。それでは早速お包みいたします」
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私はサファイヤの指輪を買い、内ポケットにしまった。
そしてジェニファと一緒に宝石店を出て、馬宿に向かう。
人通りの多い大通りに馬車を停めるのははばかられ、馬宿に馬車を預けていたのだが、その場所は大通りから少しばかり外れた場所にある。
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