【R18】ルーシェの苦悩 ~貧乏男爵令嬢は乙女ゲームに気付かない!?~

ウリ坊

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本編

休日のハプニング 2

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 街に行く時はお屋敷の正門を通ってから出る。念のため出る前に、バレないとは思うが顔見知りがいないか十分確認する。 
 門番のキースさんにお菓子を渡すと喜んでくれた。甘い物なんて大の男の人が食べるのかと思ったのだが、前に聞いてみたところ案外好きらしい。それからというもの、こうして休日出掛けるときには作ったお菓子を差し入れしていた。

「さてと…図書館に行く前に少しブラっとしよ♪」

 ルーシェは男性の格好をしている。茶色の短いカツラに帽子をかぶり、麻布のくたびれた平民のような服。これは兄のお古だ。これはいつも下町にいるときにしていた服装。
 初めこの格好でお屋敷の正門を出ようとしたときにはキースに驚かれた。その時の様子を思い出し、クスリと笑う。
 ルーシェは上機嫌でクロウド侯爵家を後に下町へと繰り出した。




 ◇◇◇


「おぅ、ルークじゃねぇか!久しぶりだな~」
「あ…ロウさん!お久しぶりです!」

 下町の大通りを歩いていたルーシェは、声をかけられた。ルークとはルーシェの下町での偽名だ。ここでは一応、安全のために男性で通している。
 
「親父さんに聞いたが、店辞めちまったんだって!?」
「えぇ、新しい職場が見つかったので…。」
「そうかい……お前さんの料理が食えなくなっちまったのは残念だがな……。」

 心底残念そうに言われてしまった。
ルーシェはルークとして定食屋の厨房でお手伝いをしていた。忙しい時には注文を取ったりと、料理を配ったりと色々こなしていた。
 ロウはその中の常連の1人だった。

「皆さん良くしてもらったのに、すみません。」
「いやいや、お前さんのことだから何か事情があるんだろうさ。…親父さん達も寂しがってたぞ。」
「はい。僕も本当にお世話になりましたから、寂しいです。でも、もう会えない訳じゃないですからね!」
「そうさな。ま、新しい所でも頑張れよ!じゃあな。」
「はい、ありがとうございます!」

 ルーシェが街に歩くと、色々な人に声をかけられる。大体は先ほどロウに聞かれたことと同じ内容だ。そして事情を説明すると、深いため息とともに落胆の言葉が漏れていた。
 
 ルーシェが働いていた定食屋と酒場は、下町でも中々の人気店なのだ。この中にはルーシェの発案した料理も多々ある。
 辞める際には迷惑にならない様にレシピを置いてきた。
 
 しばらく歩くと目的地の王立図書館に着いた。休日なのに人はまばらだ。空いている席にカバンを置き授業の資料を探しだす。
 すると遠くにピンク色っぽいモノが視界の端に映った。

 (んん?……随時珍しい髪色。)

 この国でピンク色はかなり珍しい、初めて見たかもしれない。
 ルーシェは現在男性の格好をしている。あまり不躾に見るのは勘違いされそうで良くない。
 だが、何となく気になって視線で追っていると、そのピンク色の娘が、棚の上の本を取ろうと一生懸命手を伸ばしているが、身長が足りないので取れない。すると長身の男性が現れて、背後からスッと本を抜いて渡した。
 ピンク娘は顔を赤らめながらお礼を言ってペコペコしている。
 その光景に内心ドキドキした。

(何か、前の世界の恋愛小説みたいな場面だな……。)

 遠目でもその長身の男性の正体がわかった。あれはアルビオン学園の三年生で、生徒会長をしている公爵令息のジュリアン=バンハウントだ。王族の血が交じっている見事な銀髪を、後ろで一つに結わえている。吸い込まれそうな蒼翠色の眼。容姿端麗、才色兼備の完璧な人物だ。

 (休みの日に図書館にいるなんて…会わない様に気をつけないと……)
 
 今のルーシェの格好でバレるとは考え難い。だか、万が一あの観察力の優れた生徒会長に見つかると厄介なのでカバンを取るとその場を離れた。
 王立図書館はとても広い。二階に登って来たのでもう大丈夫だろう。
 ようやく席につき、安心して勉強を始めた。


 ◇◇◇

 
 帰り道。
 試験勉強も終え、下町を再び歩いていると、また先ほどのピンク色の娘がいた。今度は顔立ちもはっきりとわかる。
 良く見るとピンク色というか、さらさらの肩甲骨辺りまであるストロベリーブロンドだった。榛色の少し垂れたつぶらな瞳、プックリとした瑞々しい唇。シンプルな淡い水色のワンピースを着ていて、小動物の様な庇護欲のそそる容姿はかなり人目を引く。
 アイリスが綺麗系の美人さんなら、この娘は可愛い系の美少女だ。
 
 (わぁ、可愛い………。)

 中々見ない可愛さにルーシェも思わず立ち止まる。
 噴水の前に腰掛けていた彼女は、立ち上がろとした時に目眩が起きたのか、フラッと倒れかけた。
 
 (──っ、危ない!)

 ルーシェが咄嗟に駆け寄ろうとした瞬間、それは無駄足に終わる。
 
「おい、大丈夫か!?」
「す、すみません……急に立ち眩みが……。」
「間一髪だな。危ないとこだった…。」

 少女はまたもや男性に助けられた。今度は先ほどとは違う人物。
 そしてまたまたルーシェの知っている相手だ。
 
 王国騎士団長の息子で伯爵家の嫡男、グレン=イグルスだ。こちらも騎士団長の息子というだけあり将来は騎士を目指しいるらしい。普段から鍛えているだろう逞しい身体に、短い赤茶色の髪に灰色の瞳、凛々しい顔付きをしている。
 そんな細マッチョの胸元にすがり付く様に身を預けている。立ち眩みの割りと平気そうだ。

(え…?…さっきのといい…これって何か………。)

 まるで、前世で流行っていた乙女ゲームの様な秀麗な人物達と、イベントの様な出来事。
 
 
(まあ…私はやったことないから、わからないんだけどね。)

 
 少女も無事の様だし、帰ろ。

 楽天家のルーシェは興味が無くなったとばかりにお屋敷へと歩き出した。


  ◆◆◆◆◆◆◆◆

 
 読んで頂き、ありがとうございます!

 今日、明日と2話ずつ更新する予定です。宜しくお願いしますm(_ _)m
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