【R18】ルーシェの苦悩 ~貧乏男爵令嬢は乙女ゲームに気付かない!?~

ウリ坊

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旅行編

独白

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 ウィルソンに促され、ソファーに腰をかけた。隣に向かい合うようにウィルソンも腰を下ろす。

「どういうことだ?何故君があの子供と同じ経験があるんだ?」

 怪訝そうなウィルソンの言葉に、ルーシェは悲痛な顔をしながら、ポツポツと話し出す。

「……私がまだ、王都に来たばかりの頃…学園に入りたくて出稼ぎにやって来たんです。田舎から出て来たばかりで…都会なんて初めてでしたから…右も左も解らず、舞い上がってました。ただ、前世の知識もあったので、仕事も住む場所も直ぐに見つかると楽観的に考えていました」

「ですが、その考え自体が甘かったと直ぐに後悔しました。仕事がなかなか決まらず、持って来たお金もすぐに底をつきました。焦れば焦る程うまくいかなくて………その内食べる物もなくなり、路頭に迷ってしまいました」

「領地に戻ろうとはしなかったのか?」

 ルーシェは首を横に振る。

「両親に心配をかけたくなくて……それに、その時にはうちの領地に戻るお金すらなかったですから……」

 少し気まずそうに下を向きながら、ルーシェはボソボソ話す。

「その……仕事もあるにはあったんですよ?……でも、男の人を相手にする仕事とかは、絶対に嫌だったので……選んでいる場合ではなかったんですが」

 それを聞いたウィルソンはあからさまに嫌そうな顔になる。

「それは絶対にダメだ」

 ルーシェは慌てて首を振る。

「はい、大丈夫です。私も選択肢にはいれていません………ですが、そうこうしてたらある日、とうとう限界が来まして…道端で倒れてしまったんです」

 ルーシェはスカートをギュッと握りこむ。

「そんな時に助けてもらったのが、私がお世話になっていた定食屋の女将さんと親父さんなんです」

「……そんな事があったのか」

 ウィルソンはスカートを握っているルーシェの手を、上から包むように手を重ねる。

「はい……でもその時、女将さん達も店が繁盛していなくて困っていたんです……」

「そういえば以前行ったときに、店を畳もうとしていたと言ってたな」

「そうなんです。……それなのに、ですよ……私みたいな、どこの誰かもわからない人間に…お腹いっぱいご飯を食べさせてくれました…自分達だって…苦しくて、大変な状態…だったのに………」

 ルーシェの瞳から再びボロボロと涙が溢れ出す。

「その時…に…思い…ました……誰も…助けてくれない……あの状況で……女将さん達の優しさが、こんなにも……嬉しくて、ありがたくて……どれ程、救われたことか……もし、あの時……手を差し伸べて…もらわなければ……私は、どうなって…いたか……わかりません……」

「だから!……だから、私は……」

「もういい!!」

 ウィルソンがルーシェを腕の中に強く抱きしめる。
 感情が溢れてしまったルーシェは、涙が止まらなかった。


「もう、わかった……私が浅はかだった……君の事情もろくに聞かず、自分の意見ばかり押し付けて、君の気持ちを蔑ろにしてしまった!」

 ルーシェはウィルソンの腕の中で嗚咽を漏らしながら、首を横に振る。

「君があれ程までに怒った理由が、良くわかった……本当にすまない………私を、許してくれ……」

 ウィルソンを責めたい訳じゃない。おかしいのは自分の方なのだから。
 ただ自分の思いをわかって欲しかった。

「ウィル様は…何も悪くありません……全然貴族らしくない私がいけないんです………この事を話して、貴方に嫌われるかもしれないと思うと……怖くて言えませんでした……」

 ウィルソンから身体を離し、ようやく治まってきた涙を服の袖で拭う。
 ウィルソンはルーシェの肩を手で掴む。

「私が君を嫌になる時が来るとしたら、それは私が人の価値もわからない、愚かな人間に成り下がった時だけだ」

 座りながら隣のウィルソンを見つめる。

「……ウィル様」

「私を見くびらないでくれ。これでも人を見る目はある」

「そんなことは……思っておりません……」

 ウィルソンはルーシェの頬に両手を添え、真剣に見つめる。

「ルー……君はもう一人じゃないんだ。今度からは私にもちゃんと相談してくれ。出来る限り君の意見を尊重する……もうあんな思いをするのは懲り懲りだ」

 ウィルソンの言葉に、感動と共に負い目のようなものも感じてしまう。

「は…い……申し訳ございません」

「謝らないでくれ。私の立つ瀬がない」

「では、ありがとうございます」

 今度こそ笑顔になったルーシェを見て、ウィルソンも微笑み、唇を重ねた。













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