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求婚
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休憩なしで馬車を乗り継いできたオリビアに、これからの馬に乗っての移動はかなりハードたったが、今はイクシオンに自分の話を信じてもらう最大のチャンスだった。
たとえ疲れていてもこの機会を逃すわけにはいかない。
「じゃあついてこい」
「はい」
「ロイズ、馬の準備をしろ」
「は、はいっ! わかりました」
それからオリビアの脇を通り過ぎたイクシオンの後をついて行く。
ロイズと呼ばれた側近もあとに続き、三人で部屋を出た。
馬に乗り、山道を駆けていく。
側近のロイズは少し遅れて後ろを走っていた。
「お前っ、ずいぶん乗り慣れてるじゃないか!」
結構なスピードで馬を操りながら、イクシオンは余裕でオリビアに話しかけてきた。
隣を並走していたオリビアはそこまでの余裕はなく、しっかり前を見ながら集中している。
「子どもの頃から乗っていたのでっ」
馬の駆ける音がうるさく声を張り上げて話すが、あまり喋っていると舌を噛みそうなので短く答えた。
「よし! 来いっ!」
どこか楽しげに話すイクシオンは、さらに馬のスピードを上げた。まるで競争でもしているように山道を猛スピードで駆けていく。
(もうっ、イクシオンは何がしたいの?! レースしてるわけじゃないんだから! こっちはついていくのがやっとなのに!)
どうにかイクシオンの後ろをついていくと、開けた草原が出てきた。
その奥には川が流れている。
ようやくイクシオンもスピードを落とし、川の手前で馬を止めた。
「見ろ。ここから飲み水を供給している」
目の前にはそこまで大きくはない川が広がっていた。見た感じでは綺麗な水が流れているように見える。
「もう少し上流へ行きましょう。おそらく崩落した地点はここより上ではなかったですか?」
「あぁ、そうだ。この辺り一帯は崩落が酷く、領民たちを立ち入り禁止にしている。俺も災害があったあと、しばらくここには近寄っていなかった」
「では現場を見に行きましょう」
まだ側近は来ていなかったが、とりあえず二人で川沿いを歩き出した。
「――なっ!」
しばらく歩き上流へ辿り着くと、そこは悲惨な光景が広がっていた。
川で泳いでいた魚はプカプカと浮かび息絶えていた。そして周りの草木は一部を残し茶色に変色し、枯れてしまっていた。
(やっぱり、ゲームと一緒だ。アフロディーテはこの光景を見て衝撃を受けてた)
「見てください、殿下。これが体調不良の原因です。周りの生態系にも影響が出ています」
同じくイクシオンも言葉を失っていたが、オリビアの問いかけに重い口を開いた。
「……しかし、ここを堰き止め、水路を変えたとしても、すでに長い期間毒物を摂取していた領民たちは――」
「お任せください。そちらも解毒効果のある薬を作ることができます」
川を見たまま言葉を詰まらせたイクシオンは、オリビアの言葉に即座に反応した。
「本当か?!」
「えぇ。ですが、一つ条件があります」
「条件? なんだ? なんでも叶えてやるぞ。好きなだけ褒美は取らせる!」
解決策を提案されたイクシオンは、食い気味にオリビアへ迫っている。
だがオリビアは冷静さを崩さず、必死に話しかけるイクシオンを見上げた。
「いいえ。褒美はいりません」
「では、何が条件だ?」
オリビアは近くに咲いていた白い花を一輪手折るとその場で跪き、片手を胸に当て、その花をイクシオンの前へと捧げた。
「――イクシオン・アーク・ライアー王弟殿下、どうか私と結婚してください」
たとえ疲れていてもこの機会を逃すわけにはいかない。
「じゃあついてこい」
「はい」
「ロイズ、馬の準備をしろ」
「は、はいっ! わかりました」
それからオリビアの脇を通り過ぎたイクシオンの後をついて行く。
ロイズと呼ばれた側近もあとに続き、三人で部屋を出た。
馬に乗り、山道を駆けていく。
側近のロイズは少し遅れて後ろを走っていた。
「お前っ、ずいぶん乗り慣れてるじゃないか!」
結構なスピードで馬を操りながら、イクシオンは余裕でオリビアに話しかけてきた。
隣を並走していたオリビアはそこまでの余裕はなく、しっかり前を見ながら集中している。
「子どもの頃から乗っていたのでっ」
馬の駆ける音がうるさく声を張り上げて話すが、あまり喋っていると舌を噛みそうなので短く答えた。
「よし! 来いっ!」
どこか楽しげに話すイクシオンは、さらに馬のスピードを上げた。まるで競争でもしているように山道を猛スピードで駆けていく。
(もうっ、イクシオンは何がしたいの?! レースしてるわけじゃないんだから! こっちはついていくのがやっとなのに!)
どうにかイクシオンの後ろをついていくと、開けた草原が出てきた。
その奥には川が流れている。
ようやくイクシオンもスピードを落とし、川の手前で馬を止めた。
「見ろ。ここから飲み水を供給している」
目の前にはそこまで大きくはない川が広がっていた。見た感じでは綺麗な水が流れているように見える。
「もう少し上流へ行きましょう。おそらく崩落した地点はここより上ではなかったですか?」
「あぁ、そうだ。この辺り一帯は崩落が酷く、領民たちを立ち入り禁止にしている。俺も災害があったあと、しばらくここには近寄っていなかった」
「では現場を見に行きましょう」
まだ側近は来ていなかったが、とりあえず二人で川沿いを歩き出した。
「――なっ!」
しばらく歩き上流へ辿り着くと、そこは悲惨な光景が広がっていた。
川で泳いでいた魚はプカプカと浮かび息絶えていた。そして周りの草木は一部を残し茶色に変色し、枯れてしまっていた。
(やっぱり、ゲームと一緒だ。アフロディーテはこの光景を見て衝撃を受けてた)
「見てください、殿下。これが体調不良の原因です。周りの生態系にも影響が出ています」
同じくイクシオンも言葉を失っていたが、オリビアの問いかけに重い口を開いた。
「……しかし、ここを堰き止め、水路を変えたとしても、すでに長い期間毒物を摂取していた領民たちは――」
「お任せください。そちらも解毒効果のある薬を作ることができます」
川を見たまま言葉を詰まらせたイクシオンは、オリビアの言葉に即座に反応した。
「本当か?!」
「えぇ。ですが、一つ条件があります」
「条件? なんだ? なんでも叶えてやるぞ。好きなだけ褒美は取らせる!」
解決策を提案されたイクシオンは、食い気味にオリビアへ迫っている。
だがオリビアは冷静さを崩さず、必死に話しかけるイクシオンを見上げた。
「いいえ。褒美はいりません」
「では、何が条件だ?」
オリビアは近くに咲いていた白い花を一輪手折るとその場で跪き、片手を胸に当て、その花をイクシオンの前へと捧げた。
「――イクシオン・アーク・ライアー王弟殿下、どうか私と結婚してください」
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