【R18】復讐を決意した傷もの令嬢は、魅惑の王弟殿下に甘く翻弄される 〜契約結婚の条件に夜伽が含まれていたなんて聞いてません!〜

ウリ坊

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日常 4


 王都から戻って一週間ほど経った。

 オリビアは相変わらず領地で忙しく過ごしていた。
 リュビーナ国との交渉で必要になった有毒物質を無毒化する作業に取りかかっていた。
 ルードヴィッヒ三世はきちんと人を送り、ライヤーロードの運河付近では人が多く行き交っていた。

「オリビア様! 掘り出しが完了いたしました!」

「ご苦労さまです。では、掘り出した鉱物を次々運んでください。必ず素手ではなく、手袋を使い、マスクも外さないよう気をつけてください!」

 この作業を行っているのは所謂いわゆる受刑者だ。
 牢に入れられた者たちを労働者として使っている。
 もちろん人道的に扱っているし、彼らに害が及ばないよう、逃げ出さないように細心の注意を払っていた。
 
 作業は順調で滞りなく進んでいた。
 掘り出した鉱物を近くの広場へと運び、特殊な液体を振りかけ、無毒化作業を進めていく。
 
(これで無毒化は成功だ。あとはこの作業を繰り返して、この鉱物をリュビーナ国まで運べばいい)

 毎日のように現場に足を運んでいた。
 この鉱物は鉄のように熱で変化し、他の鉱物と結合すると様々な用途に使える。
 
 大役を任され、気の抜けない日々を送っていたが、ようやくゴールが見え始め、息を抜けるようになってきた。

「ひとまず無毒化作業は順調に進んでいます」

「ライアン卿、いつもご協力いただき感謝しております。あとは掘削くっさく作業班と無毒化作業班、さらに加工班の三編成に部隊を分けましょう。掘削、無毒化班は常に防具を身に着けてもらい、加工班は手先の器用な者を選りすぐってください」

「かしこまりました」

 運河を見下ろしながら指示を出しているオリビアに、ライアンと呼ばれた騎士は膝を折って返事をしていた。
 このライアンは国王陛下が手配してくれたオリビア付きの騎士だ。
 
 ライアン・ディルック。彼は騎士としての腕もさることながら、出身は公爵家の次男という高爵位だ。
 銀色の髪に深い群青色の瞳、一目で女性を虜にするような甘いマスクに、騎士団長という高い地位。
 さすがのオリビアも、騎士団長にこんな作業を手伝ってもらうのは申し訳なく思っていた。

 自分で書いた作業表を見ながら、不備がないか確認し、実際に働いている人たちを何度も見に来ていた。
 
「オリビア様。毎日現場に来られてお疲れではありませんか? 我々に任せて、たまにはお休みになられたほうがよろしいのではないでしょうか?」

 作業表を見ていたオリビアの隣に並び、声をかけたライアンを見上げた。
 年は二十四だと聞いた。仕事熱心なのだが特殊な性格のせいか、まだ婚約者は決めていないと聞いたことがある。

「作業が軌道に乗っている今こそ気を抜いてはいけません。それに作業している人たちは毎日働いているんです。私だけ休むのは間違っています」

「ですが、彼らは犯罪者で……」

 きっぱりと発言するオリビアに、ライアンは戸惑いの言葉を漏らしている。
 オリビアは作業している受刑者を見下ろしながら、淡々と話していく。

「犯罪者でも同じ人間です。人権を無視することはしません。彼らなくしてこの作業は進まないのですから」

「っ! そう……ですね。ははっ、なんだか恥ずかしいです」

 オリビアは隣で突然笑い出したライアンに視線を向けた。

「何がですか?」

「私は……犯罪者というだけで、彼らを見くだしていました。ですがオリビア様は、どんな人間でも同じだと考えるのですね」

 そう言われてしまうと、なんだか自分がとても高尚な人間だと思われてしまう。
 自分は復讐者で、もしこここに元婚約者のジャンがいたとしたら、冷静には扱えないだろう。
 だからといって酷く扱うこともきっとできない。

「……私はただ、人道的に人を扱っているだけで、彼らを許しているわけではありません。彼らは彼らなりに罪を償わなければいけません。無関係だからこそ、このように扱えるのです」

 真面目に答えたオリビアに、ライアンは瞳を輝かせて話を聞いていた。
 
「オリビア様は恥ずかしがり屋なのですね」

「――は?」

 今の台詞のどこに、恥ずかしがり屋の要素があったのか理解できない。
 隣にいるライアンを怪訝けげんな表情で見ていると、ライアンは突然オリビアの手を取り、両手で握ってきた。

「ちょっ!」

「オリビア様はいつも冷静で淡々と話されていますが、言葉の端々に優しさが伺えます。本来の貴女はとても照れ屋でシャイな女性なのですよね?」

「はあ……??」

 ライアンと一緒にいてわかったことは、ライアンが天然だということだった。
 たまに意味のわからないことを言い、オリビアを混乱させている。

 このように手を握ることもやましい気持ちがあるわけではなく、自分の思った心のままに行動しているだけなのだろう。

(ダメだ、この人……地位も高くて顔も良いのに、ただの残念イケメンだ。だから今でも婚約者も決まらないのか……)

 自分の周りにはどうしてまともな男がいないのだろうとげんなりしながら、ライアンに握られた手をやんわりと振りほどいた。

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