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トラブル
鉱物の加工を始めて二週間が経とうとしていた。
この頃、イクシオンは王都を行ったり来たりしている。
どうやら国王陛下の容態があまり思わしくないようだった。
時折戻ってくると冗談を言いながらも、ふとした瞬間に沈んだ顔をしていることが多くなった。
「殿下、顔色がよくありません。ちゃんと休んで寝てください」
執務室で机に座ったまま、上の空で外の景色を眺めていた。
いつもサボっている時の表情とは違い、どこか翳りがあり、沈んでいるようにも見えた。
オリビアの言葉でハッとしていた。
「お前に心配されるとは、珍しいこともあるものだ」
「私だって心配くらいします」
「まぁ、大丈夫だ。俺のことは気にしなくていい」
そう言うと、また窓の外を見ている。
反対側にいたロイズと目を合わせるが、ロイズも目を瞑って首を横に振っていた。
そして領地をオリビアとロイズに任せて王都へ行ったきり、戻って来なくなった。
自分の部屋の窓から夜空を見ながら、オリビアはぼんやりと考えに耽っている。
(今日で六日目か……陛下はこのままどんどん病に蝕まれていく。たぶん、アフロディーテも看病してるけど陛下は良くならない)
最後に見たルードヴィッヒ三世は病などまったく感じさせず、元気そうにしていた。
実はオリビアはルードヴィッヒ三世の病が何かを知っている。
そしてその病の特効薬があることも知っていた。
だが――
(この病はある実を加工した薬を早い段階で定期的に摂取することで進行を遅らせることができる。完治は無理だけど、少なくともあと数年かそれ以上は生きることができる……)
オリビアが復讐のためにイクシオンを選んだのには様々な理由がある。
一番ストーリーに干渉せずに、復讐を果たせると思ったことも大きな一因だった。
どのルートでもルードヴィッヒ三世は崩御する。
そして後々その病が解明され、特効薬が生まれた。
この特効薬が生まれたのは、ルードヴィッヒ三世が病を患ったことで研究されて生まれるのだ。
それをオリビアの一存で変えてしまっていいのだろうか悩んでいた。
『癒しのアフロディーテ』では全てのルートで何かしらの病気や伝染病が発生し、それを医師を目指すアフロディーテが攻略対象者とともに原因を発見し、治していく過程で好感度を上げていくストーリーが多い。
この特効薬も最終的にアフロディーテが作り出す。
最近ずっとこのことで悩んでいた。
どんなに悩んでも答えは見つからず、時間だけが過ぎてしまった。
(ゲームの知識で特効薬を作ることは簡単だけど……、私が人の人生や、すべてのストーリーを変えてしまっていいの?)
何も知らなければ、仕方のないことだと見過ごすこともできたが、治す方法を知っているのにただ黙って見ていることが心苦しい。
かといって、また目立つことも出しゃばることもしたくない。
しかし、イクシオンはルードヴィッヒ三世を親のように慕い、とても心配している。
イクシオンは普段と変わらないようにオリビアに接しているつもりだと思うが、やはり言葉や態度の端々に落胆している様子が見受けられる。
時折イクシオンが一人でいる時に気落ちしている姿を見るのは辛かった。
出口の見えない迷宮のように、いつまでもオリビアを悩ませていた。
この頃、イクシオンは王都を行ったり来たりしている。
どうやら国王陛下の容態があまり思わしくないようだった。
時折戻ってくると冗談を言いながらも、ふとした瞬間に沈んだ顔をしていることが多くなった。
「殿下、顔色がよくありません。ちゃんと休んで寝てください」
執務室で机に座ったまま、上の空で外の景色を眺めていた。
いつもサボっている時の表情とは違い、どこか翳りがあり、沈んでいるようにも見えた。
オリビアの言葉でハッとしていた。
「お前に心配されるとは、珍しいこともあるものだ」
「私だって心配くらいします」
「まぁ、大丈夫だ。俺のことは気にしなくていい」
そう言うと、また窓の外を見ている。
反対側にいたロイズと目を合わせるが、ロイズも目を瞑って首を横に振っていた。
そして領地をオリビアとロイズに任せて王都へ行ったきり、戻って来なくなった。
自分の部屋の窓から夜空を見ながら、オリビアはぼんやりと考えに耽っている。
(今日で六日目か……陛下はこのままどんどん病に蝕まれていく。たぶん、アフロディーテも看病してるけど陛下は良くならない)
最後に見たルードヴィッヒ三世は病などまったく感じさせず、元気そうにしていた。
実はオリビアはルードヴィッヒ三世の病が何かを知っている。
そしてその病の特効薬があることも知っていた。
だが――
(この病はある実を加工した薬を早い段階で定期的に摂取することで進行を遅らせることができる。完治は無理だけど、少なくともあと数年かそれ以上は生きることができる……)
オリビアが復讐のためにイクシオンを選んだのには様々な理由がある。
一番ストーリーに干渉せずに、復讐を果たせると思ったことも大きな一因だった。
どのルートでもルードヴィッヒ三世は崩御する。
そして後々その病が解明され、特効薬が生まれた。
この特効薬が生まれたのは、ルードヴィッヒ三世が病を患ったことで研究されて生まれるのだ。
それをオリビアの一存で変えてしまっていいのだろうか悩んでいた。
『癒しのアフロディーテ』では全てのルートで何かしらの病気や伝染病が発生し、それを医師を目指すアフロディーテが攻略対象者とともに原因を発見し、治していく過程で好感度を上げていくストーリーが多い。
この特効薬も最終的にアフロディーテが作り出す。
最近ずっとこのことで悩んでいた。
どんなに悩んでも答えは見つからず、時間だけが過ぎてしまった。
(ゲームの知識で特効薬を作ることは簡単だけど……、私が人の人生や、すべてのストーリーを変えてしまっていいの?)
何も知らなければ、仕方のないことだと見過ごすこともできたが、治す方法を知っているのにただ黙って見ていることが心苦しい。
かといって、また目立つことも出しゃばることもしたくない。
しかし、イクシオンはルードヴィッヒ三世を親のように慕い、とても心配している。
イクシオンは普段と変わらないようにオリビアに接しているつもりだと思うが、やはり言葉や態度の端々に落胆している様子が見受けられる。
時折イクシオンが一人でいる時に気落ちしている姿を見るのは辛かった。
出口の見えない迷宮のように、いつまでもオリビアを悩ませていた。
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