処女で恋人もできず39歳で不慮の死を遂げた私が、冷遇妃に転生した今世で幸せになれるまで【R18】

ウリ坊

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本編

リオ

 皇宮まで戻ってきたリアトリスは、男の子を連れて部屋まで戻った。

「おかえりなさいませ、リアトリス様。この子供はどうされたのですか?」
「孤児院の子供ですか? それにしては、汚れが……」

 リーゼとハイネがリアトリスの後ろに隠れていた男の子を見て、不思議そうに質問している。
 
「紹介するわ、この子はリオというの。色々事情があるみたいで私が保護したのよ。話は後でするから、とりあえずこの子をお風呂に入れてくれるかしら」

 馬車の中で名前を聞いた。
 この名前が本当かわからないが、そう呼ばれていた記憶は少し残っているようだった。

「承知いたしました」
「かしこまりました! う~ん、これは何度か洗わないといけませんね!」
「おねえちゃんて……、おしろにすむ、おひめさまだったの?」

 不思議そうに見上げるリオの発言が面白くて、しゃがんで笑いかけた。

「ふふふっ、違うわ。私はお姫様ではないのよ。あなたはこれからここに住むから、身体や服装を綺麗にしなくてはならないわ」
「ホントに、ここにすめるの?」
「えぇ、そうよ。この二人とも仲良くしてね。二人ともよろしくね」
「「はい」」

 二人は揃って返事をし、リオを連れて部屋を出ていった。

 しばらくして戻って来たリオは、見違えるほど身奇麗になっていた。

「まぁっ……! さっぱりしたわね」
「汚れが酷かったですけど、お湯で溶かして根気よく流しました! それにリーゼさんが髪を切って整えてくれました」

 ハイネが得意げに答えている。
 同じくリオの背後に控えていたリーゼは小さく頷いていた。
 平民の子供とは思えない顔立ちに、やはり貴族の子供だという確信が湧いてくる。

「ふぅ……、おふろって、たいへんなんだね……」

 長風呂に疲れたのか、リオはため息をついている。
 そして一緒にソファーに座っていくつか質問していく内に、やはりリオが拐われてきたのだとわかった。

「――覚えているのは、リオと呼ばれていたこと。おそらく拐われてから三年は経っているということ。あと、家が大きかったこと……くらいね」

 正確な年齢はわからないが、リオは八歳くらい。
 その三年前だと、拐われた当時はまだ五歳ほどだ。この年齢で覚えていることは少ないのかもしれない。
 
「うん」
「そうなのね。また思い出したら教えてくれる?」
「わかったよ……あ、わかり、ました」

 言葉遣いを直させるためか、早速リーゼが教師役を買って出た。
 掃除が得意だという話だったので、ハイネは部屋の掃除の手伝いをさせるようだ。

 リオは皇宮の豪華な食事に感動してたくさん食べようとしていたが、普段まともに食べていないのか、思っていたより入らなかった。

「では寝ましょうか」
「はい。おやすみなさい、リアトリス、さま」
「えぇ、おやすみなさい。ゆっくり休むのよ」

 一息ついて自分のベッドへ倒れ込んだ。色々なことがあった一日で疲れ切ってしまった。

(明日にはスカーレットが帰国する。けれど、あの様子だとまだ何かやりそうね。それに……、アイザックとの仲が進展している感じが全くしないわ)

 これは客観的な見解だが、一週間の滞在で二人の仲が深まった気配はなかった。
 リアトリスが知らないだけかもしれないが、どちらかというと深まったのはアイザックとリアトリスのほうだ。
 この一週間欠かさず抱いてもらい、夜になると必ずアイザックがリアトリスの部屋を訪れていた。

(はぁ……、これだから嫌なのよ。また諦めるために、自分の心を否定し続けないといけないから)

 今夜はもう、アイザックは来ない。
 だが悲観的には考えない。
 短い間とはいえ、抱いてもらえたのだから良しとしよう。
 それはそれ、これはこれと割り切ることにした。

(リオを見つけられて良かったわ。忙しくしていれば、余計なことを考えなくてすむもの)

 アイザックはスカーレットと晩餐を終えて、その後に二人で部屋へ移動して最後の話をしているようだ。
 この情報はリーゼが教えてくれた。
 近頃アイザックがリアトリスの部屋を訪ねて来るので、ようやく皇帝の寵愛が皇妃に注がれているのだと二人は勘違いしている。
 
(実際はそうではないのに……二人を騙しているようで心苦しいわ。皇宮の周りの人間たちも、アイザックが私の元に通うようになってから態度が変わったもの)

 だからどうということではない。
 アイザックに愛されるか冷遇されるか。
 たったそれだけの違いで、リアトリスという人間の価値が決まる。
 もちろん皇妃など皇帝の寵愛が全てなのだが、そこに自分の人間性がまるで無視されているようで虚しくなっていた。
 前世の記憶が戻る前は、とにかくアイザックに愛されたくて必死でアプローチをしていたが、前世を思い出した今はもう恋愛に固執したくなかった。

「なんだ、もう寝ているのか」
「――っ!」

 扉が急に開いて、入ってきたのはアイザックだ。
 本来なら侍女が部屋の前で対応するが、誰も来ないと思って下がらせていた。

「へ、陛下!? 何か、ございましたか?」

 驚きを隠せずに慌ててベッドから飛び起きた。
 来ると思っていなかったので、何の支度もしていない。
 
「話があってきたが、何に驚いている?」
「えっ……? いいえ……」

 もう二度と来ないと思っていた相手が目の前にいるのだから、驚いても仕方ないだろう。
 アイザックには驚かされることばかりだ。行動が予測できず、調子が狂ってしまう。

「その……王女殿下と、ご一緒ではなかったのですか?」
「嫉妬か」

 腕を組んでサラッと話すアイザックに苛立ちを覚える。
 嫉妬と言われればそれも多少はあるが、この質問は疑問として聞いていた。
 元々二人は結ばれる予定なのだし、むしろアイザックがリアトリスの元へ来ていることのほうがおかしいのだ。

「王女殿下の滞在中は陛下がご一緒でしたし、先ほども最後の晩餐を共にされていたので、てっきり……」

 アイザックがここに来てくれたことは素直に嬉しいが、やはり腑に落ちない。
 近くまで歩いて来てたアイザックが、ベッドの端に腰を下ろした。
 寝乱れていた髪や服をササッと手で整え、その場で正座をする。

「お前には言っておこう。あの王女は

 アイザックの台詞は淡々としていた。
 そして何度か心の中で繰り返し、意味を考える。
 予想していた言葉とは違ったが、似たような言葉を聞いてやはりそうなのかと納得した。
 

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