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しおりを挟むあれから何日か経ったある日。
お昼過ぎの人も疎らな時間。
いつも通り『宿り木』で仕事をしていた二人は、見たことのあるフードの男達が入って来るのを目にする。
「ティナ……あれはもしや」
「えぇ、アシュリー。たぶんアーサー様だと思うわ」
「私が案内してきます」
アイシャが歩いて行き、フードの男に話しかける。
少し話すとティアーナの方を向き、コクリと頷いた。
ティアーナは女将さんに休憩してきていいか聞いてみる。
「ちょうど暇になったからね!ゆっくり休んできなよ~」
「女将さん、個室を一つお借りしてもいいですか?」
「個室かい?別に構わないよ。一番奥が空いてるから、そこ使いな」
「ありがとうございます!」
早速奥の部屋に二人を案内する。
椅子とテーブル、寝台しかないシンプルな部屋だ。
とりあえず中に入ってもらい、椅子に座ってもらう。ギルバートは立ったままだ。
「今日はわざわざこんな場所までご足労頂き、ありがとうございます」
ティアーナとアイシャが頭を下げる。
「いや、遅くなってしまってすまないね。出来るだけ良い物件を探してたんだけど……」
そう言って、テーブルの上に何枚かの紙を置いていく。
「拝見しても宜しいですか?」
「あぁ、手に取って見てくれ」
テーブルまで寄り、紙を手に持つ。アイシャと横に並び二人で紙を眺める。
4枚程見て、どれも中々良い物件なのだが、一枚格安の好物件があった。
「あの、アーサー様。こちらはどうしてこんなに安価なのでしょうか?」
テーブルに一枚差し出し、アーサーに聞いてみる。
「あぁ、これかい?」
アーサーが言うには元々が弧児院の跡地で、引き取り手がずっと見つからず、どんどん値段が下がって行ったらしい。
ここからは少し離れているが、割りと商店街の近くで立地的に悪くない。
「この土地は国の所有で売りに出しているから、安心してもらっていい」
国が保証してくれるなら、これ以上安心な物件は確かにない。しかも安い。
今まで沢山の不動産を見てきたが、こんなに好条件の物件は一つなかった。
それをこの短い間に見つけて来るとは。
(アーサー様って……一体、何者なの?)
常にフードを被り、しかも光輝くような青銀の髪……貴族でも見たことがない。
そこでティアーナは一つの可能性にたどり着く。
青銀の髪……稀に見ることのない髪色。
(確か、リアンタールの言葉を習った時に、講師の先生が仰っていた……リアンタールの王族の特徴……)
それを思い出したティアーナは一気に青ざめる。
そうだ、リアンタールの王族の髪色は、世にも珍しい青銀の色だと言っていた。
なぜ今まで忘れていたのか。
王族と関わるなど、ましてや世話になるなどもってのほかだ。今の逃亡生活で一番関わってはいけない人物だ。
世話になったところで、ティアーナに返せるものなど、何もない。
「お嬢様?…どうかなさいましたか?」
ティアーナの異変に気付いたアイシャが、心配そうに横を覗いている。
「あ…の……、アーサー様。申し出は大変嬉しいのですが、やはり私達は自らの力で探そうと思いますので…今回は申し訳ございませんが、お引き取り頂いて宜しいでしょうか……」
深々頭を下げながら、ティアーナが断りを入れる。
「ティナ?急にどうした?気に入らなかったかい?」
不思議そうに聞かれるが、ティアーナは頭を下げたまま何も答えない。
「お嬢様…何かありましたか?」
明らかに様子のおかしいティアーナに、小声で聞くが、答えない。
不敬を承知で、一刻も早くアーサー達に帰ってもらうしかない。
「ギルバート、悪いが席を外してもらえるか?あと、そこの君も」
アイシャにも退室を促す。
「しかし……!」
「とりあえず出るぞ。早めに済ませろ」
まだ物言いたげなアイシャの腕を引き、ギルバートが部屋を出ていく。
部屋にアーサーとティアーナ二人きりになってしまった。
俯いたまま顔を上げないティアーナに、アーサーが席を立ち、ゆっくりと近づく。
「ティナ」
すぐ間近まで来られ、ハッとして後ろに下がり、距離を空ける。
顔を上げると、フードを外したアーサーが少し傷付いたような顔をしている。
それを見ないふりで、再びティアーナは頭を下げる。
「今までの非礼をお許し下さい。王太子殿下」
「……やっぱり、気付いたんだね」
「はい………」
もっと早く気づいていれば、この国を出ていたのに。後悔しかない。
自分の存在がバレるのはまずい。下手すれば国際問題になってしまう。
カナンとリアンタールでは国力の差が有りすぎる。
どうすればこの場を切り抜けられる?
「顔を上げて、ティナ」
言われて上げない訳にもいかない。ゆっくりと顔を上げた。
先ほど空けた距離分を詰めてくる。ジリジリと後ろに下がるが、結局壁際まで追い詰められてしまう。
「そんな顔しないでくれ。君を苦しめたい訳じゃないんだ」
泣きそうな顔をしていたティアーナの顔に、手を伸ばす。
そっと顔を撫でられ、身体がビクッと震える。
「怯えないで……」
片方の腕を壁につけ、腕の中に囲われ逃げられなくなる。
頬を撫でていた手が顎をとらえ、端正な顔がすぐ至近距離まで近づく。
ぎゅっと目を瞑ると、唇に柔らかいものが触れる。
「ん……」
時折離しながら、何度も触れてくる。ティアーナはぎゅっと唇に力を入れる。
ペロリと口先を舐められ、ビクッと身体が跳ねる。
顎を捉えていた手が脇腹を擽ると、力の入っていた唇が思わず緩んでしまう。
開いた唇から舌が差し込まれる。
「あっ……ふぅ……ん!」
引っ込んでいた舌先を絡めるように舐める。そのゾクゾクする快感に、アーサーのローブをぎゅっと掴む。
「はっ……んっ、………んっ……ぅ」
口の中を縦横無尽に這い回る舌の気持ち良さに、次第に力が入らなくなっていく。
「はぁ…ん、………っ……んん」
しばらく貪られ、離された時には、脚の力が抜けて、壁沿いにズルズルとへたりこんでしまった。
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