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レオン (ヴェルディside)
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「遠縁の伯爵家の当主夫婦が亡くなった?」
そんな知らせが来たのはある日の朝の事だった。
「えぇ。深夜に馬車で帰路を急いでいた所の前方不注意による転落事故のようです」
それはご愁傷様としか言いようがないだろう。冷たいかもしれないが、私はその子爵とは遠縁に値する事ぐらいしか関係性がない。
それにきっと子供が居るはずだ、その子が…
「その夫婦の子供はまだ3歳程度の幼児であるそうなんです」
3歳!?
「それはそれは…。身寄りはないのか?」
そう訊くとこれを報告してくれた部下——マルコは言いにくそうに顔をしかめた。
「いえ…。引き取ってくれる所もあるにはあるのですが…。”あの”スカルティア伯爵家で…」
(あぁ…成る程な…)
私は察した。
この国は他の国と比べて非常に平和だと言えるが、それでもいわゆる”厄介者”は居る。それが今言ったスカルティア伯爵家だ。代々当主がそれはまあ身勝手な行いをしており、自分の娘を無理矢理婚約者にしてこようとしたり、上の階級の者には媚を売り、下の者には傍若無人な振る舞い。犯罪は犯していないだけマシかもしれないが、それでも厄介者には違いない。
そんな所に3歳の子供を放りだしてしまうのはあまりにも可哀想か…。
それに、ニコルの為にも良いかもしれない。義弟であるとはいえ、兄弟が出来るのは寂しくならなくなるのではないだろうか。私も出来るだけ早く帰るようにはしているが限界もある。
(そうだ、そうしよう!)
ニコルの事を思い出して思わずでれっとしてしまう。マルコが何か見てはいけないものを見ているような目をしているが無視だ。
「よし!その子をうちで引き取ろう!」
______________________________________
「は…はじめまして、れおんでしゅ…」
衝撃だった。その艶やかな黒髪、アメジスト色の瞳、その子は、美しかった。
思わず息を呑む。よし、怖がらせてはいけない。
「初めまして、レオンくん。私は今日から君のお父さんになる人だよ」
「おとお、さん…?」
不安そうに瞳を揺らしながら首を傾げる。
「そうだ。君の本当のお父さんとお母さんは遠い所に行ってしまって君とはもう会えないんだ」
(これで良いだろうか…?)
この子はまだ両親が何故か帰ってこない、というような認識をしている。成長するにつれ判る事ではあるだろうが…。
「ぼく、おとおさんたちともうあえないの…?」
ぶわぁっと大きな瞳に涙がたまっていく。可哀想だが…。私にはレオンを優しく抱き締めてやる事しか出来なかった。
______________________________________
その後、泣き止んだレオンと帰路につく。
「君のお兄ちゃんもいるんだよ」
「おにい…ちゃん…?」
私はレオンの頭を撫で従者にドアを開けさせる。
「帰ったぞ…、ニコル!?」
「おかりなさ…いませ、とうたま!」
我が愛しのエンジェルがお出迎えだと…?こんな幸せな事があるのか…?
「なんてっ、なんて父親思いの良い子なんだニコルっ!!」
「うぅ、とうたまくるしいです…」
思わずぎゅうぎゅうと抱き締めていると、
「旦那様?」
リッカが私の行動をいさめた…訳ではなかった。
「とうたま…下ろして…」
ニコルも何かを悟ったらしい。言われるがままニコルを下ろしてやる。
「!?」
ニコルは衝撃的なものを見たように硬直した。無理もないだろう。まだ小さいのにこの完成度だ。
思わずといったようにニコルが私にしがみつく。
「と、とうたま。あのこ、だれ…?」
「紹介が遅れてしまったね」
私はそう言ってニコルを優しく離し、レオンを抱き上げてからニコルの前に行った。
「紹介するね。今日からニコルの弟になるレオンだよ」
「れ、れおんでしゅ…。さんしゃいでしゅ、よ、よろしくおねがいしましゅ…」
これは驚いた。私は挨拶など指導していない。しかも両親と離れ離れになったばかりなのに…。この子は相当にしっかりしているようだ。
そう思いながらニコルを見ると何やら呟いて呆然としている、かと思えば今度は焦っている様子だ。
声をかけようとすると、ニコルは私のズボンを握り最高に可愛い顔をする。
「と、とうたま…?」
「うん?なんだいニコル」
「おr…ぼく、れおんとあそびたいけど、きょうはもうつかれちゃったな…?」
ぐあっ…!うちの息子が可愛過ぎる…!!
「そうかそうか。ニコルは疲れてしまったか。いいだろう、夕食の時間までおやすみ。レオンとゆっくり話すのはその時にしよう」
私がそう言うとニコルはレオンの方を見遣り、
「れおん、またあとでね」
と手を振ったのだ!ああ可愛い…じゃなくて。私がレオンの方を見ると、
ボムンッ
レオンの顔は真っ赤になっていた。その顔は恥ずかしさやニコルに見惚れて、というだけでなく…。
(もしかして、レオン…)
私は密かに冷や汗をかいた。
********************************************
今回長くなってしまいすみません^^;
お父さん視点のお話でした。
そんな知らせが来たのはある日の朝の事だった。
「えぇ。深夜に馬車で帰路を急いでいた所の前方不注意による転落事故のようです」
それはご愁傷様としか言いようがないだろう。冷たいかもしれないが、私はその子爵とは遠縁に値する事ぐらいしか関係性がない。
それにきっと子供が居るはずだ、その子が…
「その夫婦の子供はまだ3歳程度の幼児であるそうなんです」
3歳!?
「それはそれは…。身寄りはないのか?」
そう訊くとこれを報告してくれた部下——マルコは言いにくそうに顔をしかめた。
「いえ…。引き取ってくれる所もあるにはあるのですが…。”あの”スカルティア伯爵家で…」
(あぁ…成る程な…)
私は察した。
この国は他の国と比べて非常に平和だと言えるが、それでもいわゆる”厄介者”は居る。それが今言ったスカルティア伯爵家だ。代々当主がそれはまあ身勝手な行いをしており、自分の娘を無理矢理婚約者にしてこようとしたり、上の階級の者には媚を売り、下の者には傍若無人な振る舞い。犯罪は犯していないだけマシかもしれないが、それでも厄介者には違いない。
そんな所に3歳の子供を放りだしてしまうのはあまりにも可哀想か…。
それに、ニコルの為にも良いかもしれない。義弟であるとはいえ、兄弟が出来るのは寂しくならなくなるのではないだろうか。私も出来るだけ早く帰るようにはしているが限界もある。
(そうだ、そうしよう!)
ニコルの事を思い出して思わずでれっとしてしまう。マルコが何か見てはいけないものを見ているような目をしているが無視だ。
「よし!その子をうちで引き取ろう!」
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「は…はじめまして、れおんでしゅ…」
衝撃だった。その艶やかな黒髪、アメジスト色の瞳、その子は、美しかった。
思わず息を呑む。よし、怖がらせてはいけない。
「初めまして、レオンくん。私は今日から君のお父さんになる人だよ」
「おとお、さん…?」
不安そうに瞳を揺らしながら首を傾げる。
「そうだ。君の本当のお父さんとお母さんは遠い所に行ってしまって君とはもう会えないんだ」
(これで良いだろうか…?)
この子はまだ両親が何故か帰ってこない、というような認識をしている。成長するにつれ判る事ではあるだろうが…。
「ぼく、おとおさんたちともうあえないの…?」
ぶわぁっと大きな瞳に涙がたまっていく。可哀想だが…。私にはレオンを優しく抱き締めてやる事しか出来なかった。
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その後、泣き止んだレオンと帰路につく。
「君のお兄ちゃんもいるんだよ」
「おにい…ちゃん…?」
私はレオンの頭を撫で従者にドアを開けさせる。
「帰ったぞ…、ニコル!?」
「おかりなさ…いませ、とうたま!」
我が愛しのエンジェルがお出迎えだと…?こんな幸せな事があるのか…?
「なんてっ、なんて父親思いの良い子なんだニコルっ!!」
「うぅ、とうたまくるしいです…」
思わずぎゅうぎゅうと抱き締めていると、
「旦那様?」
リッカが私の行動をいさめた…訳ではなかった。
「とうたま…下ろして…」
ニコルも何かを悟ったらしい。言われるがままニコルを下ろしてやる。
「!?」
ニコルは衝撃的なものを見たように硬直した。無理もないだろう。まだ小さいのにこの完成度だ。
思わずといったようにニコルが私にしがみつく。
「と、とうたま。あのこ、だれ…?」
「紹介が遅れてしまったね」
私はそう言ってニコルを優しく離し、レオンを抱き上げてからニコルの前に行った。
「紹介するね。今日からニコルの弟になるレオンだよ」
「れ、れおんでしゅ…。さんしゃいでしゅ、よ、よろしくおねがいしましゅ…」
これは驚いた。私は挨拶など指導していない。しかも両親と離れ離れになったばかりなのに…。この子は相当にしっかりしているようだ。
そう思いながらニコルを見ると何やら呟いて呆然としている、かと思えば今度は焦っている様子だ。
声をかけようとすると、ニコルは私のズボンを握り最高に可愛い顔をする。
「と、とうたま…?」
「うん?なんだいニコル」
「おr…ぼく、れおんとあそびたいけど、きょうはもうつかれちゃったな…?」
ぐあっ…!うちの息子が可愛過ぎる…!!
「そうかそうか。ニコルは疲れてしまったか。いいだろう、夕食の時間までおやすみ。レオンとゆっくり話すのはその時にしよう」
私がそう言うとニコルはレオンの方を見遣り、
「れおん、またあとでね」
と手を振ったのだ!ああ可愛い…じゃなくて。私がレオンの方を見ると、
ボムンッ
レオンの顔は真っ赤になっていた。その顔は恥ずかしさやニコルに見惚れて、というだけでなく…。
(もしかして、レオン…)
私は密かに冷や汗をかいた。
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今回長くなってしまいすみません^^;
お父さん視点のお話でした。
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