運び屋『兎』の配送履歴

花里 悠太

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運び屋『兎』の休日

幕間 ヒポのご褒美

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 ギルド長と共に、商業ギルドに戻ってきたユウヒ。
部屋に戻らずにギルドの商品が保管されている倉庫に向かった。

 倉庫に到着すると見知った商人から声がかかる。

「お、ユウヒ。またヒポで走ってたな」
「うん、野菜あげたいんだけどいい物ないかな?」
「そうだな、大根がちょうどいい。あと一応西瓜があるぞ」

 商人が倉庫の木箱を指差し説明するのを聞きながら木箱を覗いて確認するユウヒ。
別の箱に人参が入っているのを確認して一本抜き出しつつ商人に注文する。

「大根も西瓜も美味しそう。大根一箱と、西瓜三玉、あと人参一本くださいな」
「西瓜もか?お前今度は何やらかすつもりだ?」
「ヒポ頑張ってくれたからご褒美だよ」
「まあ、ならいい。人参はアリスの分だろ、おまけしといてやる」
「ありがと」

 ユウヒは鞄から兎を取り出し机の上に乗せて、人参を与えた。
ポリポリと音を立てながら人参をかじる兎を横目に、ユウヒは呪文を唱えた。

『召喚:突撃河馬クラッシュヒポポタマス

 召喚に応じて現れたカバに声をかけるユウヒ。

「頑張ってくれてありがと。今日は大根と西瓜だよ」

 ぶももっと鼻息高く応えるカバ。
それを見てユウヒはカバの口に大根を放り込み出した。

 ひょい、ばくん、ぼきんぼりぼり。
 ひょい、ばくん、ぼきんぼりぼり。

 その様子を見ながら商人は呆れたように呟いた。

「召喚獣なのによく食べるよなあ」

 商人が呟くのには訳がある。

 召喚獣は普通食事をしない。
召喚士は契約した召喚獣を召喚するが、あくまでも召喚するだけだ。

 召喚される前は召喚獣はどこかに生息していて、普段の生活で生きるために必要なエネルギーの確保をしている。
そのため、召喚されている間にものを食べるようなことは普通は必要ないのだ。

 では、なぜユウヒはカバに野菜を与えているのか。

「ヒポはご飯食べる約束だからね」

 ユウヒは商人の呟きに応えた。

 召喚獣を自由自在に操れるように見える召喚士。
実は召喚魔法は召喚してその場に留めるだけの魔法で、召喚獣を操作する魔法ではない。
下手をすると召喚した召喚士に襲い掛かることすらある魔法なのだ。

 そのため召喚士は召喚獣と契約を結ぶ。
召喚士は代償を召喚獣に提供する事で彼らを操ることができるのだ。

 ユウヒとカバも契約を結んでいる。
野菜や果物をお腹いっぱい食べさせる代わりに言うことを聞く、というなんともアバウトな契約だが。

 ひょい、ばくん、ぼきんぼりぼり。
 ひょい、ばくん、ぼきんぼりぼり。

 大根を食べ終わったカバに今度は西瓜を見せるユウヒ。

「ほい、デザートの西瓜だよ」

 ぶももももっとカバは一層鼻息高く応え、口を大きく開ける。

 ひょい、ばくん、ばりばりもぐもぐもぐもぐ。

 ユウヒがそこに西瓜を丸一個投げ込むと、口を閉じてゆっくりと噛み締めるカバ。
カバの体中から湯気を噴き出し始める。
それを見て微笑むユウヒと、顔が引き攣る商人。

「ヒポは本当好きだよね、果物」
「ユウヒ、大丈夫か?今にも走り出しそうだが」
「大丈夫、大丈夫」

 食べ終わったカバがまた口を開けると、さらに西瓜を放り込むユウヒ。

 ひょい、ばくん、ばりばりもぐもぐもぐもぐ。
 どたんどたん。

 口を閉じてゆっくりと噛み締めるカバ。カバの体中の湯気はますます強くなる。
よっぽどスイカが美味しいのか足踏みをし始める。

「いや、大丈夫じゃないだろ、これ」
「ちょっと興奮してるね。でも、もう一個あるし」
「このくらいにしておいたほうが、あ」

 ユウヒは三個目の西瓜をカバに放り込んだ。

 ひょい、ばくん、ばりばりもぐもぐもぐもぐ。
 どだどだどだどだ。

 カバが興奮のまま走り始める。
カバの正面には商品が保管されている倉庫がある。
焦る商人。

「おいユウヒ!」
「あ、だめだ」

 カバが走り始めた瞬間にユウヒは呪文を唱えた。

『召喚解除』

 ギリギリのところでどこにもぶつからずにカバは魔法陣の中に消えていった。

「よかった、セーフ」
「セーフじゃねえよ!お前、ちょっとは加減ってものを覚えろ」
「うーん、気をつけるね。次はウラシーの番だから、またね」

 冷や汗が止まらない男性にしれっと話して手を振るユウヒ。
男性が呆れ顔でそれに応えるのを確認して、ユウヒは別の場所に歩き出した。
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