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配送履歴#4 配達物『薬』
第19話 依頼人の領主の事情
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「薬師が確認したところ、薬草は治療薬の原料として使える状態だそうだ。既に生産に入っている。届けてくれて感謝する」
領主から声をかけられ、安堵の息をつく商人の女性。
場所は領主邸宅内の執務室だ。
「よかった、何とかここまで持ってきた甲斐がありました」
「危ない橋を渡らせてしまったな」
「いえ、私も、まさかあのような思い切った手でくるとは思いませんでした」
船は貴重な財産であり、商船ともなると気軽に失えるものでもない。
また、船を一瞬で沈める大穴をあけるには大掛かりな手段を準備せねばならず、思いつきで行えるようなものではない。
必然的に船を沈めた犯人はそれ以上の利益を得ており、本気であることがわかるのだ。
「とりあえず届いてよかった、というところだがこれからの話を考えなければならないな」
「そうですね、薬草の栽培や追加調達できるように準備を進める必要がありますね」
薬草の栽培方法についても女性は確認してきており、積荷には薬草の苗木も含まれている。
領地内で栽培するための土地や、追加調達する目処について領主と女性は引き続き議論していた。
「薬草の栽培を自領地で行うことができれば、治療薬を安定して作ることができるな、ぜひ進めたい」
「ゆくゆくはこの街の外にも、ですね」
「ああ、今とは比較にならない費用で治療することができるだろう」
「妨害されなければ、ですね」
「そうだな」
渋い表情を見せる領主。
現在の治療薬で利益を得ている人間からすれば営業妨害甚だしい計画だが、彼からすればそんな営業を断じて認めるわけにはいかない。
少し間をとって、領主は話し続けた。
「そのためにも、隣街の領主に作った薬を届けたいのだ」
「隣町の領主様ですか? 領地争いもされてますよね?」
驚く女性。
隣街とは山を挟み長い間領地争いをおこなっている。
現在は戦力が拮抗しており、お互いに手をだしていないが敵対関係なのだ。
「ああ、先祖代々領地争いもしているし、仲は悪いな」
「それなのになぜ?」
疑問に思う女性に領主は応える。
「あちらの領主夫人が例の流行病にかかっているという噂がある」
「本当ですか、それは……」
「回復せず、薬があると知ったときにどう出るかな。感情の問題となると、理屈が通じないこともある」
何と答えて良いかわからずに言葉を濁す女性に対して、領主は続ける。
「当然、旧来の薬で高額な治療をおこなっているだろう。ただ、あの薬は症状を一時的に和らげるだけの効果しかないのだろう」
「はい、そうです。回復は望めないかと」
「そうするとな、薬を渡して貸しを作っておきたいのだよ。そして、今更ながらだが協力する関係になりたいものだな」
地図を見ながら呟く領主に、女性は答えた。
「そういうことであれば、生成した薬を隣街の領主様に届けましょう」
「ふむ、そうだな。そうするとどうやって届けるか」
「領主様、彼女に任せるのはいかがですか?」
女性の提案に、ため息をついて額に手を当てる領主。
「『兎』、か」
「はい、彼女であればやってくれるのではないでしょうか」
「そうだな、それが一番良いか。ただな」
「何か気がかりな点でも?」
女性に対して返すというより、独り言のように続ける領主。
「娘に恨まれそうでな」
「?」
意味がわからず首を傾げる女性。
娘が友達と会いたがっているのに、その友達に仕事を押し付けて会わせてやれない自覚を持っている領主は再びため息をついたのだった。
領主から声をかけられ、安堵の息をつく商人の女性。
場所は領主邸宅内の執務室だ。
「よかった、何とかここまで持ってきた甲斐がありました」
「危ない橋を渡らせてしまったな」
「いえ、私も、まさかあのような思い切った手でくるとは思いませんでした」
船は貴重な財産であり、商船ともなると気軽に失えるものでもない。
また、船を一瞬で沈める大穴をあけるには大掛かりな手段を準備せねばならず、思いつきで行えるようなものではない。
必然的に船を沈めた犯人はそれ以上の利益を得ており、本気であることがわかるのだ。
「とりあえず届いてよかった、というところだがこれからの話を考えなければならないな」
「そうですね、薬草の栽培や追加調達できるように準備を進める必要がありますね」
薬草の栽培方法についても女性は確認してきており、積荷には薬草の苗木も含まれている。
領地内で栽培するための土地や、追加調達する目処について領主と女性は引き続き議論していた。
「薬草の栽培を自領地で行うことができれば、治療薬を安定して作ることができるな、ぜひ進めたい」
「ゆくゆくはこの街の外にも、ですね」
「ああ、今とは比較にならない費用で治療することができるだろう」
「妨害されなければ、ですね」
「そうだな」
渋い表情を見せる領主。
現在の治療薬で利益を得ている人間からすれば営業妨害甚だしい計画だが、彼からすればそんな営業を断じて認めるわけにはいかない。
少し間をとって、領主は話し続けた。
「そのためにも、隣街の領主に作った薬を届けたいのだ」
「隣町の領主様ですか? 領地争いもされてますよね?」
驚く女性。
隣街とは山を挟み長い間領地争いをおこなっている。
現在は戦力が拮抗しており、お互いに手をだしていないが敵対関係なのだ。
「ああ、先祖代々領地争いもしているし、仲は悪いな」
「それなのになぜ?」
疑問に思う女性に領主は応える。
「あちらの領主夫人が例の流行病にかかっているという噂がある」
「本当ですか、それは……」
「回復せず、薬があると知ったときにどう出るかな。感情の問題となると、理屈が通じないこともある」
何と答えて良いかわからずに言葉を濁す女性に対して、領主は続ける。
「当然、旧来の薬で高額な治療をおこなっているだろう。ただ、あの薬は症状を一時的に和らげるだけの効果しかないのだろう」
「はい、そうです。回復は望めないかと」
「そうするとな、薬を渡して貸しを作っておきたいのだよ。そして、今更ながらだが協力する関係になりたいものだな」
地図を見ながら呟く領主に、女性は答えた。
「そういうことであれば、生成した薬を隣街の領主様に届けましょう」
「ふむ、そうだな。そうするとどうやって届けるか」
「領主様、彼女に任せるのはいかがですか?」
女性の提案に、ため息をついて額に手を当てる領主。
「『兎』、か」
「はい、彼女であればやってくれるのではないでしょうか」
「そうだな、それが一番良いか。ただな」
「何か気がかりな点でも?」
女性に対して返すというより、独り言のように続ける領主。
「娘に恨まれそうでな」
「?」
意味がわからず首を傾げる女性。
娘が友達と会いたがっているのに、その友達に仕事を押し付けて会わせてやれない自覚を持っている領主は再びため息をついたのだった。
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