紫陽花高校生徒会!!!!

kaniya1192

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紫陽花高校生徒会

生徒会と考査期間②

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「じゃあこれは?」


そう言われたので、とりあえず問題文を読む新田。

【A君はお母さんにおつかいを頼まれ、お買い物に出掛けました。
りんごの値段はみかんよりも50円高い値段です。

りんご15個、みかん10個を購入して2000円でした。
その時、それぞれ1つあたりの値段を求めなさい】

しかし、これを見た新田は首を傾げる。


「これ、中学生の問題だろ」


「バカ言わないで。
これが中学生な訳ないじゃない」


「いや……」


そこまで言われてしまうと自分の見落としかと思い、新田は再度問題を読み直す。

りんごをx、みかんをyと置くと
・x=y+50
・15x+10y=2000
の2つの式になるから、代入して解くとx=100 y=50。
何処も難しい場所はない。

新田は改めて確信すると、自信を持って口を動かす。


「りんご100円のみかん50円の簡単な問題だろ。
何処にも複雑な場所はなかったが」


新田がそう伝えると、河井は呆れて再び首を横に振る。


「何も分かっていないわね……。
解を求めるあまり、問題文の本質を見逃しているわ」


「問題文の本質を……?」


「ええ、そうよ……」


河井は頷きながら、問題文のA君と書かれた部分を指差す。


「このA君という人物……何歳なのかしらね?」


「年齢か?
お使い頼まれてるから、小学生低学年くらいか」


「なるほどね……。
そういう事なら、この問題……“解なし”が答えね」


「は?」


新田の頭の中がハテナで埋め尽くされる。


「よく考えてみなさい!
りんごの重さは平均300~400g
みかんの重さは小さい物で約80g
そうすると、トータル5.3~6.8kg。
どう考えても小学校低学年が持てる重さではないわ!」


河井は机の上に置いてあるノートを、平手で勢いよくバシンと叩く。


「言ってる事は理解できるが、A君が低学年ではなく、高校生くらいだったらどうなんだ」


「それはそれで家庭の問題ね……」


「か、家庭の問題……?」


数学で家庭の問題という、世論を問われるような社会的な内容に、言葉が途中で引っ掛かってしまう新田。


「ええそうよ。
帰ってきた子供はレシートを持ってきていなかった。
母は子供の口頭での支払い金額の申告と果物を頼りに、1つあたりの値段を導き出そうとしている。
ここから考えるに……」


河井は顎に人差し指をあて、少し考える動作を取ると、シャーペンを持ち、ノートにペン先を滑らせる。


「親は子供を信用していない!
という事は、子供がお金を不当搾取する可能性のある不良である可能性が出てきてしまう!!」


河井はノートに“子供不良?”と書くと、大きく丸で囲う。


「だけど計算の結果、申告の金額と1個辺りの値段から、申告内容がおおよそ正しいと分かる。
となると、導き出される回答は……!!」


河井はノートを自分の方に寄せると、凄まじ勢いでノートに答えを書いてゆく。

暫くして、ピタリと手の動きを止めると、額を右腕で拭い、「これが答えよ!!」と新田の前に叩き出した。


「母子家庭でグレた子供がようやく親の頑張りを理解し、お手伝いから徐々に改心していき、再婚という苦難もあるがお母さんが幸せならと理解し、乗り越え、家族愛が深まるハートフルストーリー!!」


「最近早く帰れてるから夕方のドラマ見てただろ」


「な、何故それを……!!
まさかエスパーか……!!」


「エスパーだったら河井相手にこんなに苦しんでない」


驚く河井に、話を聞いてはいたが、途中から殆ど聞き流し、無表情の新田。

因みに河井がドラマの影響を受けていたと分かったのは、そのドラマを見ている妹から、おおよその内容を聞いていたからだった。


「そろそろ真面目に勉強するぞ」


「そうね……」


河井に手前にあったノートを手渡し、興奮状態を落ち着かせると、新田は自分のノートへと向き直す。

河井もノートを受け取ると、視線を落とし、次のページを開くと何かを書き始めた。


「この問題わk」


「勉強」


「ハイッ」


また何かネタを準備してきた河井を、一言で一蹴する新田。

これ以降、河井がふざけ出す事はなかった。

そして春期考査の結果は、2人共全教科満点で幕を閉じたのであった。
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