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第36話 暗き森の異変
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「康介様、イリーナ。朝ですよ~そろそろ起きませんか?」
「…ん、ありがとうアリア。今起きるよ━━━ほら、イリーナ…起きて…」
「ふぁ………康介…?…はっ!?お、お、お、おはよぅ…康介…」
「う、うん………おはよう………イリーナ………」
━━━結局一睡もできないまま朝になったわけだが…起きるタイミングが判らず、アリアに声をかけられたのを幸いに…起きてイリーナにも声をかけた…訳だが………昨夜の事を思い出したイリーナが顔を真っ赤にして挨拶してくるもんだから━━━俺まで照れて、真っ赤になってしまい……昨夜の続きのように、互いにうつむいて黙り込んでしまった………
「………康介様…?」
「「…っ!?(ビクッ!)」」
返事があったのに一向に出てくる気配が無い為、再び呼びに来たアリアに驚いて…二人して何でも無いと伝えたんだけど………昨日に引き続いてだったから、アリアにまでジト目で見られてしまった………ユリアさん直伝ですか?凄いそっくりだよ………それと、ホントにやましい事なんて、してないんだよ?本当だよ!?
……結局、信じてもらうことが出来ず…詰め寄られたイリーナが昨夜の出来事を詳細に話し始めた━━━俺が側にいる状態で………あの…俺、話が終わるまで離れてても良いですかね…?物凄く恥ずかしいんですけど…?
そろり………
ギロッ!
あ、はい、スミマセン、脱け出そうとしてスミマセン………だからユリアさん睨まないで~~~
━━━その後、イリーナの事細かな説明により誤解は溶けたものの………アリアに対しても、イリーナに言ったセリフを告白し…今度は俺とアリアが赤面する事となった………
「━━━あ、アリア…!」
「は、はいっ!」
「~~~っ、これからも…ずっと………俺と一緒にいてくれるか…?」
「…!はいっ…!!」
は、恥ずかしい………本っっっ当に恥ずかしい………イリーナの時でさえ恥ずかしかったのに…今は皆のいる前でなんて………
目を合わせられない俺とは違い…アリアは顔を赤くしつつも、イリーナやユリアさんと嬉しそうに話しに向かっていった。
ちなみに………ほんの微か~な…淡~い…期待を込めてユリアさんをチラッ…と見たら━━━
「何ですか?"すけこまし勇者"。なに期待してるんですか?あり得ないですよ」
「ぐはっ…!?」
━━━あっという間に看破された上に、一刀両断されました………そりゃ…好かれてるとは思ってなかったけどさ…こうして一緒に冒険もしてくれてるし…美人だし………巨乳だし………やっぱり期待してしまうじゃないか…!くそ~………
「………ですがまぁ…マスターが一緒に居たいみたいですし?━━━ワタシも………”コウスケ”と付き合ってあげますよ」
「えっ!!?」
「もちろん、"冒険"にですが」
「ガフッ…!」
や、やられた………あり得ないハズなのにまた期待してしまった………俺はバカだ………どうして同じ事を繰り返してしまうんだ………あぁぁぁぁ…
「━━あ!ユリアっ!康介様をいじめちゃダメでしょ!?」
「康介、大丈夫…?」
キャッキャ!楽しそうに話していた…告白(?)された二人は、俺が崩れ落ちるのを見てすぐさま助けに入ってくれた。
「ありがとう…イリーナ………大丈夫…うん、大丈夫だよ」
イリーナは心配そうにしてくれて、アリアはユリアさんに怒ってくれて………まぁ、そのユリアさんはしれっとアリアの話を流しているけれど………
うん………アリアは”いじめ”られてると思ったようだけど、実際の”いじめ”はそんな甘いものじゃないんだよ…?
━━━中学の頃、俺は皆に”無視”されていた……それ以外にも机に落書きや、物を隠されたりもしたが……あれは、本当に…キツイ……自分に価値が無いと思えてきて、死にたくなってくる………幸いに…それ以上悪化することが無く、高校に入ってからは親しい友達こそ居なかったが…いじめられることも無かったから…もう思い出すことは無いと思ってたんだけど━━━
そんな訳で…良く考えてみたら、ユリアさんは口は悪いけど…しっかりと返事もしてくれるし、話も聞いてくれるし………うん、これがユリアさんなりの接し方なのかな?と思えてきた。
イリーナはまだ心配そうだったが、俺が笑顔を見せると…照れたように顔を赤らめて視線をそらしてしまった。
………うん、可愛い………
そのあまりの可愛さから…つい、頭を撫でて………イリーナも嬉しそうに目を細めてくれた…!
しばらく撫でて癒されていると………それに気づいたアリアが自分もして欲しそうに近寄ってきたんで、アリアの頭も撫でてあげると…「えへへ……」と嬉しそうに、はにかんでくれた………
はぁ~~~………癒される………
しばらく二人の頭を撫でていると…ユリアさんがジト目で見ていることに気付いた。
そうだよ…ユリアさんの、あの"ジト目"だって個性だと思えば………
「え、何ですか、その眼差し……気持ち悪い…」
「ごほっ!!?」
「康介!?」「康介様!?」
て、訂正しようかな…やっぱりユリアさんは、ヒドイッ!
*****
━━━その後…なんとか立ち直ったところで…俺たちは地上に戻る為、出発するのだった━━━
帰りは魔物をわざわざ探し回る必要も無くなったんで、かなりスムーズに進み…現在、お昼前にして2階層まで来ることが出来た…この分なら町に帰ってから昼食が食べれそうだな…!
「━━━はぁぁ…【風の牢獄】!!!」
「「「ガゥッ…!?」」」
襲ってきたローウルフの群れを魔法で一網打尽にして、ドロップアイテムを拾う。
「ん~…気のせいかな…?昨日よりは魔物の数増えてないかな…?」
ほんの少しなんだけど…違和感を抱いたんだ………昨日あれだけ探し回った魔物が…まっすぐ帰っているのに出会った…?まさか魔物が待ち伏せをしてる訳が無いし………としたら、考えられるのは"魔物が増えている"…と推測した訳だ。
「そう…かも…?康介が言うように昨日は探してやっとだったのに、今日はすでに5回も遭遇してるから…」
『う~…気づかなかった……でも、言われてみれば…
わたしもそんな気がする』
「…まぁ、"残念勇者"が言った可能性が高いとは思いますが………ワタシ達で判断するのは早計ですね。ギルドに報告して確認してもらうのが無難かと」
「なるほど…じゃあユリアさんの言うように、この事も依頼達成と合わせてギルドに報告しようか」
「『賛成~!』」
こうして俺たちは[暗き森]から帰還し、ユーカリアの町へと戻るのだった………
*****
~~~『風の絆』side~~~
ランクDパーティー『風の絆』、彼らはギルドの依頼で[暗き森]の魔物調査に来ていた。………といっても彼らがすべき任務は10階層のキャンプ地を守りつつ、最深部へと潜っている冒険者パーティーの帰りと連絡を待っている。というものだったが………
「━━━むぅ~…暇だ…暇すぎる……」
「…考えるだけ、余計に辛くなるんじゃない?」
「というか…!二人とも真面目にしてよ!絶対に魔物が出ない訳じゃないんだからねッ!?」
ジョー、バン、リンの三人は本来もっと浅い階層で活動していて…10階層まで降りたのは始めてだった。
…それでもこの依頼を受けたのは…キャンプ地を守るだけなのと、魔物の心配をしないで10階層までの道なりを把握できる為だ。
この道なりを把握できるというのが、実はかなり魅力的で━━このダンジョン…[暗き森]は全ての階層が薄暗い森の中となっていて、視界が悪く範囲も広いため…地図を買ったとしても、実際に見てみないと確実に迷うこと間違い無しなのだ。
「でもさ、リン………Cランクの奴らが最下層に向かってから丸一日経つんだぜ…?予定ではもう戻ってきて良いはずだっただろ…?もう起きてられないぜ…」
「…そうだね…何かあったのかは分からないが………交替で休めるうちに休むべきじゃないかな?」
「むぅ………でも、そうだね…いつ戻ってくるかわからないし…離れるわけにもいかないからね…そうしよっか……」
「よしっ…!それじゃ先にリンから寝なよ」
「え?兄さん良いの?あれだけ文句言ってたくせに…」
「うるさい、それぐらい気にかけれんと兄の威厳が無くなるだろ?」
「………それはすでに無いけど……?」
「がふっ……!」
ジョーが崩れ落ちたところで、リンがテントへ行こうと立ち上がった………その時だ━━━
━━━森の奥から…ガサガサ…!と何かが近づいて来る音が聞こえてきた。
とっさに三人は臨戦態勢に入り、近づいてくる"モノ"を待ち構えた………そして現れたのは━━━
「はぁ、はぁ、………グッ…!」
「…っ!?━━フレッド!大丈夫か!?」
━━━最下層へ潜っていたCランクパーティーの一人だった……
「リン…!治療薬だ…!用意してくれ…!」
「う、うん…っ!わかった!」
リンが急いで回復アイテムを取りに行ってもらい、ジョーとバンで戻ってきたフレッドを抱えてテントまで連れていった。
━━こうした不測の事態が起きた場合の為に、回復薬等の各種薬はかなり持ってきていて……幸いにフレッドは命を取り留める事が出来た。
「━━━フレッド、いったい何があったんだ?」
「はぁ、はぁ、…"グール"だ、グールが出たんだ…!」
「グ、グール…ですか?」
リンが疑問に思うのは当然で、グールは"ゾンビ"より強いがその強さはDランク程度であり……Cランクであるフレッドたちが負けるとは思えなかったのだ。━━━だが、フレッドはそれが事実である理由を述べた。
「あぁ……あれは"変異個体"だ………歯が立たない程、強かった……」
「「「なっ…!?」」」
━━人が死んで魔物になった場合……腐った肉体の[ゾンビ]・骨だけの[スケルトン]・実体がない[ゴースト]に別れる。そして………その内の[ゾンビ]の進化先が、先程の[グール]・[ワイト]・[リッチ]・[エルダーリッチ]と続き、その強さはそれぞれE~Aランクだと言われている……が━━その流れに沿わない魔物が稀に現れる……それが"変異個体"……その強さも・形態も・大きさも様々で、唯一無二の存在である。━━しかし、変異個体は先程も述べたが…"非常に稀"で…冒険者であっても、その殆どが一生に一度も遭遇することが無い程に…稀なのだ…
そして………変異個体の中で…過去に恐ろしいほどの被害を出した[デュラハン]や[飛天夜叉]は…今でも恐怖の対象として語り継がれてる………
━━━そんな存在が、近くにいると知り…三人は驚愕して、固まってしまった………
いち早く正気を取り戻したジョーは、今すぐ地上へ戻る事を決めた。
「━━お前ら、フレッドを連れて今すぐ地上へ戻ってこの事を伝えるぞ…!」
「で、でも他の人が……」
「無理だリン。Cランクで敵わないんだ…Dランクの俺たちじゃ、エサになるだけだよ…」
「そうだ………それよりこの情報をなんとしても伝えないと、被害が増えるだけじゃない…新たな"デュラハン"や"飛天夜叉"を生み出してしまう…!それだけは避けないと…!」
「わ、わかったわ……」
後ろ髪を引かれつつ…急ぎ上の階へ昇ろうとした四人に………
━━━恐ろしい雄叫びが聞こえてきた━━━
「がtばxじhgであだhぅぐyがぁ!!!!!」
その声は四人の心を簡単に絶望に追いやった。━━しかし…
「…っ!お前ら!早くフレッドを連れて先行けっ!!」
「そ、そんな!兄さんは!?」
「…俺は足止めをする!リン!バンと一緒に先に行け!」
「で、でも…!」
「━━いいから行けッ!!!唯一"奴"の姿を見ているフレッドは、絶対に生きてギルドに連れてかなきゃいけねぇんだ!━━時間がないッ!さっさと行けぇぇッ!!!」
「~~~っ!絶対に死んじゃダメだからね!?」
リンはそう言うと涙を堪えるように、フレッドと階段を登り始めた━━━
「ジョー……」
「バン………お前ならリンを任せられる………頼んだぞ」
「…っ!わかった…!━━━死ぬなよ…ジョー…」
最後まで残っていたバンも…ジョーと別れを告げリンとフレッドの後を追った……
「━━━しまったな…せめて魔物の特徴ぐらい聞いておくんだったぜ………」
森の奥から、何かがこちらへ近づいて来る………身体が震える中で…ジョーは待ち構える。
「へっ……これが武者震いってか?━━いいぜ、やってやるよ!」
覚悟を決めたジョーは━━━現れた異形の"魔物"と対峙した。
………そして…リン・バン・フレッドの三人は…康介たちが町へ戻った日の翌日に、ユーカリアの町へと帰還するのだった。
「…ん、ありがとうアリア。今起きるよ━━━ほら、イリーナ…起きて…」
「ふぁ………康介…?…はっ!?お、お、お、おはよぅ…康介…」
「う、うん………おはよう………イリーナ………」
━━━結局一睡もできないまま朝になったわけだが…起きるタイミングが判らず、アリアに声をかけられたのを幸いに…起きてイリーナにも声をかけた…訳だが………昨夜の事を思い出したイリーナが顔を真っ赤にして挨拶してくるもんだから━━━俺まで照れて、真っ赤になってしまい……昨夜の続きのように、互いにうつむいて黙り込んでしまった………
「………康介様…?」
「「…っ!?(ビクッ!)」」
返事があったのに一向に出てくる気配が無い為、再び呼びに来たアリアに驚いて…二人して何でも無いと伝えたんだけど………昨日に引き続いてだったから、アリアにまでジト目で見られてしまった………ユリアさん直伝ですか?凄いそっくりだよ………それと、ホントにやましい事なんて、してないんだよ?本当だよ!?
……結局、信じてもらうことが出来ず…詰め寄られたイリーナが昨夜の出来事を詳細に話し始めた━━━俺が側にいる状態で………あの…俺、話が終わるまで離れてても良いですかね…?物凄く恥ずかしいんですけど…?
そろり………
ギロッ!
あ、はい、スミマセン、脱け出そうとしてスミマセン………だからユリアさん睨まないで~~~
━━━その後、イリーナの事細かな説明により誤解は溶けたものの………アリアに対しても、イリーナに言ったセリフを告白し…今度は俺とアリアが赤面する事となった………
「━━━あ、アリア…!」
「は、はいっ!」
「~~~っ、これからも…ずっと………俺と一緒にいてくれるか…?」
「…!はいっ…!!」
は、恥ずかしい………本っっっ当に恥ずかしい………イリーナの時でさえ恥ずかしかったのに…今は皆のいる前でなんて………
目を合わせられない俺とは違い…アリアは顔を赤くしつつも、イリーナやユリアさんと嬉しそうに話しに向かっていった。
ちなみに………ほんの微か~な…淡~い…期待を込めてユリアさんをチラッ…と見たら━━━
「何ですか?"すけこまし勇者"。なに期待してるんですか?あり得ないですよ」
「ぐはっ…!?」
━━━あっという間に看破された上に、一刀両断されました………そりゃ…好かれてるとは思ってなかったけどさ…こうして一緒に冒険もしてくれてるし…美人だし………巨乳だし………やっぱり期待してしまうじゃないか…!くそ~………
「………ですがまぁ…マスターが一緒に居たいみたいですし?━━━ワタシも………”コウスケ”と付き合ってあげますよ」
「えっ!!?」
「もちろん、"冒険"にですが」
「ガフッ…!」
や、やられた………あり得ないハズなのにまた期待してしまった………俺はバカだ………どうして同じ事を繰り返してしまうんだ………あぁぁぁぁ…
「━━あ!ユリアっ!康介様をいじめちゃダメでしょ!?」
「康介、大丈夫…?」
キャッキャ!楽しそうに話していた…告白(?)された二人は、俺が崩れ落ちるのを見てすぐさま助けに入ってくれた。
「ありがとう…イリーナ………大丈夫…うん、大丈夫だよ」
イリーナは心配そうにしてくれて、アリアはユリアさんに怒ってくれて………まぁ、そのユリアさんはしれっとアリアの話を流しているけれど………
うん………アリアは”いじめ”られてると思ったようだけど、実際の”いじめ”はそんな甘いものじゃないんだよ…?
━━━中学の頃、俺は皆に”無視”されていた……それ以外にも机に落書きや、物を隠されたりもしたが……あれは、本当に…キツイ……自分に価値が無いと思えてきて、死にたくなってくる………幸いに…それ以上悪化することが無く、高校に入ってからは親しい友達こそ居なかったが…いじめられることも無かったから…もう思い出すことは無いと思ってたんだけど━━━
そんな訳で…良く考えてみたら、ユリアさんは口は悪いけど…しっかりと返事もしてくれるし、話も聞いてくれるし………うん、これがユリアさんなりの接し方なのかな?と思えてきた。
イリーナはまだ心配そうだったが、俺が笑顔を見せると…照れたように顔を赤らめて視線をそらしてしまった。
………うん、可愛い………
そのあまりの可愛さから…つい、頭を撫でて………イリーナも嬉しそうに目を細めてくれた…!
しばらく撫でて癒されていると………それに気づいたアリアが自分もして欲しそうに近寄ってきたんで、アリアの頭も撫でてあげると…「えへへ……」と嬉しそうに、はにかんでくれた………
はぁ~~~………癒される………
しばらく二人の頭を撫でていると…ユリアさんがジト目で見ていることに気付いた。
そうだよ…ユリアさんの、あの"ジト目"だって個性だと思えば………
「え、何ですか、その眼差し……気持ち悪い…」
「ごほっ!!?」
「康介!?」「康介様!?」
て、訂正しようかな…やっぱりユリアさんは、ヒドイッ!
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━━━その後…なんとか立ち直ったところで…俺たちは地上に戻る為、出発するのだった━━━
帰りは魔物をわざわざ探し回る必要も無くなったんで、かなりスムーズに進み…現在、お昼前にして2階層まで来ることが出来た…この分なら町に帰ってから昼食が食べれそうだな…!
「━━━はぁぁ…【風の牢獄】!!!」
「「「ガゥッ…!?」」」
襲ってきたローウルフの群れを魔法で一網打尽にして、ドロップアイテムを拾う。
「ん~…気のせいかな…?昨日よりは魔物の数増えてないかな…?」
ほんの少しなんだけど…違和感を抱いたんだ………昨日あれだけ探し回った魔物が…まっすぐ帰っているのに出会った…?まさか魔物が待ち伏せをしてる訳が無いし………としたら、考えられるのは"魔物が増えている"…と推測した訳だ。
「そう…かも…?康介が言うように昨日は探してやっとだったのに、今日はすでに5回も遭遇してるから…」
『う~…気づかなかった……でも、言われてみれば…
わたしもそんな気がする』
「…まぁ、"残念勇者"が言った可能性が高いとは思いますが………ワタシ達で判断するのは早計ですね。ギルドに報告して確認してもらうのが無難かと」
「なるほど…じゃあユリアさんの言うように、この事も依頼達成と合わせてギルドに報告しようか」
「『賛成~!』」
こうして俺たちは[暗き森]から帰還し、ユーカリアの町へと戻るのだった………
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~~~『風の絆』side~~~
ランクDパーティー『風の絆』、彼らはギルドの依頼で[暗き森]の魔物調査に来ていた。………といっても彼らがすべき任務は10階層のキャンプ地を守りつつ、最深部へと潜っている冒険者パーティーの帰りと連絡を待っている。というものだったが………
「━━━むぅ~…暇だ…暇すぎる……」
「…考えるだけ、余計に辛くなるんじゃない?」
「というか…!二人とも真面目にしてよ!絶対に魔物が出ない訳じゃないんだからねッ!?」
ジョー、バン、リンの三人は本来もっと浅い階層で活動していて…10階層まで降りたのは始めてだった。
…それでもこの依頼を受けたのは…キャンプ地を守るだけなのと、魔物の心配をしないで10階層までの道なりを把握できる為だ。
この道なりを把握できるというのが、実はかなり魅力的で━━このダンジョン…[暗き森]は全ての階層が薄暗い森の中となっていて、視界が悪く範囲も広いため…地図を買ったとしても、実際に見てみないと確実に迷うこと間違い無しなのだ。
「でもさ、リン………Cランクの奴らが最下層に向かってから丸一日経つんだぜ…?予定ではもう戻ってきて良いはずだっただろ…?もう起きてられないぜ…」
「…そうだね…何かあったのかは分からないが………交替で休めるうちに休むべきじゃないかな?」
「むぅ………でも、そうだね…いつ戻ってくるかわからないし…離れるわけにもいかないからね…そうしよっか……」
「よしっ…!それじゃ先にリンから寝なよ」
「え?兄さん良いの?あれだけ文句言ってたくせに…」
「うるさい、それぐらい気にかけれんと兄の威厳が無くなるだろ?」
「………それはすでに無いけど……?」
「がふっ……!」
ジョーが崩れ落ちたところで、リンがテントへ行こうと立ち上がった………その時だ━━━
━━━森の奥から…ガサガサ…!と何かが近づいて来る音が聞こえてきた。
とっさに三人は臨戦態勢に入り、近づいてくる"モノ"を待ち構えた………そして現れたのは━━━
「はぁ、はぁ、………グッ…!」
「…っ!?━━フレッド!大丈夫か!?」
━━━最下層へ潜っていたCランクパーティーの一人だった……
「リン…!治療薬だ…!用意してくれ…!」
「う、うん…っ!わかった!」
リンが急いで回復アイテムを取りに行ってもらい、ジョーとバンで戻ってきたフレッドを抱えてテントまで連れていった。
━━こうした不測の事態が起きた場合の為に、回復薬等の各種薬はかなり持ってきていて……幸いにフレッドは命を取り留める事が出来た。
「━━━フレッド、いったい何があったんだ?」
「はぁ、はぁ、…"グール"だ、グールが出たんだ…!」
「グ、グール…ですか?」
リンが疑問に思うのは当然で、グールは"ゾンビ"より強いがその強さはDランク程度であり……Cランクであるフレッドたちが負けるとは思えなかったのだ。━━━だが、フレッドはそれが事実である理由を述べた。
「あぁ……あれは"変異個体"だ………歯が立たない程、強かった……」
「「「なっ…!?」」」
━━人が死んで魔物になった場合……腐った肉体の[ゾンビ]・骨だけの[スケルトン]・実体がない[ゴースト]に別れる。そして………その内の[ゾンビ]の進化先が、先程の[グール]・[ワイト]・[リッチ]・[エルダーリッチ]と続き、その強さはそれぞれE~Aランクだと言われている……が━━その流れに沿わない魔物が稀に現れる……それが"変異個体"……その強さも・形態も・大きさも様々で、唯一無二の存在である。━━しかし、変異個体は先程も述べたが…"非常に稀"で…冒険者であっても、その殆どが一生に一度も遭遇することが無い程に…稀なのだ…
そして………変異個体の中で…過去に恐ろしいほどの被害を出した[デュラハン]や[飛天夜叉]は…今でも恐怖の対象として語り継がれてる………
━━━そんな存在が、近くにいると知り…三人は驚愕して、固まってしまった………
いち早く正気を取り戻したジョーは、今すぐ地上へ戻る事を決めた。
「━━お前ら、フレッドを連れて今すぐ地上へ戻ってこの事を伝えるぞ…!」
「で、でも他の人が……」
「無理だリン。Cランクで敵わないんだ…Dランクの俺たちじゃ、エサになるだけだよ…」
「そうだ………それよりこの情報をなんとしても伝えないと、被害が増えるだけじゃない…新たな"デュラハン"や"飛天夜叉"を生み出してしまう…!それだけは避けないと…!」
「わ、わかったわ……」
後ろ髪を引かれつつ…急ぎ上の階へ昇ろうとした四人に………
━━━恐ろしい雄叫びが聞こえてきた━━━
「がtばxじhgであだhぅぐyがぁ!!!!!」
その声は四人の心を簡単に絶望に追いやった。━━しかし…
「…っ!お前ら!早くフレッドを連れて先行けっ!!」
「そ、そんな!兄さんは!?」
「…俺は足止めをする!リン!バンと一緒に先に行け!」
「で、でも…!」
「━━いいから行けッ!!!唯一"奴"の姿を見ているフレッドは、絶対に生きてギルドに連れてかなきゃいけねぇんだ!━━時間がないッ!さっさと行けぇぇッ!!!」
「~~~っ!絶対に死んじゃダメだからね!?」
リンはそう言うと涙を堪えるように、フレッドと階段を登り始めた━━━
「ジョー……」
「バン………お前ならリンを任せられる………頼んだぞ」
「…っ!わかった…!━━━死ぬなよ…ジョー…」
最後まで残っていたバンも…ジョーと別れを告げリンとフレッドの後を追った……
「━━━しまったな…せめて魔物の特徴ぐらい聞いておくんだったぜ………」
森の奥から、何かがこちらへ近づいて来る………身体が震える中で…ジョーは待ち構える。
「へっ……これが武者震いってか?━━いいぜ、やってやるよ!」
覚悟を決めたジョーは━━━現れた異形の"魔物"と対峙した。
………そして…リン・バン・フレッドの三人は…康介たちが町へ戻った日の翌日に、ユーカリアの町へと帰還するのだった。
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