祈ればいいってもんじゃない!

鹿音二号

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第一話(見せかけ)追放聖女〜私が真の聖女です〜

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「聖女として十分に務めを果たせぬカロリーナ。そなたを未だ聖女とは認められない、王宮から退去せよ」

王太子のベアフレートは、優しい雰囲気の青年だった。体格は恵まれているとは言えないが、手足は長い。アッシュブロンドを短くして、やや尖り気味の顎は滑らかで、琥珀色の瞳のはまった目元は涼し気だ。
予想外の王太子からの言い渡し。
なぜという顔をするカロリーナ。

「ど、どうしてですか!?私は聖女としてお務めをがんばってきました!」

カロリーナの容姿は愛らしい。ぱっちりとした青い瞳に、少女らしいふっくらとしたバラ色の頬。四肢はすらりとしていて、はちみつ色の髪はふわりと広がる。
その少女が訴える先には、人好きのする国王が玉座に座り、そのそばには王太子のベアフレート、そして、その隣には、静かに彼女を見守る少女が寄り添っていた。
少女はその冷静さ以外は別段特徴らしい特徴はなかった。濃茶色の髪を、ゆるく巻いて肩にかかるくらいの長さにし、瞳は少しツリ目の青灰色。背は高めだが簡素なローブでは痩せぎすを隠せない。

「そうです、王太子殿下!カロリーナを本物の聖女と認めてお引き入れになったのは殿下ではありませんか!陛下!これはなにかの間違いです!」

そうやって責めるように叫ぶのは、カロリーナの横にいた貴族然とした初老の男だ。国王には訴えるように両手を広げてアピールしている。
国王はその貴族の言い分を聞き入れるかように、

「聞くところによると、ゴイドン侯。そちはそのカロリーナを聖女と見出し、連れてまいったとき、必ずや国のためになると申したとか」
「そうでございます陛下!いままでこのカロリーナがいかに祈りを捧げ、このカヤマンディ王国の力になったか……」

「1002」

突然上がった凛とした声に、全員が黙った。
王太子の近くにいる少女が、言ったのだ。

「カロリーナ殿、おわかりで?」
「……えっと……」

カロリーナも分かっているのだろう、何を指して言ってるのか。しかし、ちゃんと答えられないようだ。

「2347。こちらは?」
「あ、あの、」
「2905。こちらは最も頻度が高いと言われておりますね」
「なんのことですかな、偽聖女イシス」

少女を睨む貴族。
しかし、偽聖女と言われたその王太子の近くにいる少女はしれっと肩をすくめた。

「ゴイドン侯。イシスを貶めることは私が許さない」

ベアフレートが強く言うと、ゴイドンとカロリーナは驚愕の顔をした。

「5001」

イシスは厳かに告げた。

「これが聖女の祈りの数です」
「そ、そんなにないです!3000くらいだと教わって……!」

カロリーナは反駁した。イシスは首を振る。

「誰にですか?」
「聖教会の修道女様です!」
「調べはついています。ゴイドン侯が勝手に選定した侯爵領の田舎の修道女だとか」
「え……!?」

王太子の言葉に、目を見開いてカロリーナはゴイドンを振り返った。ゴイドンは悔しげに歯を軋らせている。
集まっている貴族たちの反応は、およそ2つに分かれていた。
青くなって戸惑っているものと、納得したように壇上のイシスと壇下のカロリーナを見比べるもの。

「聖女の祈りは、詳細には語る必要もないですが、数にして2000程度は各教会に伝わっていると思います。そして、3000程度は総本山ベテルギウス聖教会の図書聖宮に収められている。そして――5001は、最奥義として、聖教会奥深くに封印を施され、聖女の魂を持つもののみが紐解くことができます」

「そ、そんな……祈れません、そんなに、人間にできるわけじゃないですか!」
「カロリーナ!?何を言っておるのだ!」
「祈れない……そんなこと、聖女は言えません」
「イシス様はできるっていうんですか!?」
「できます」

カロリーナは唖然としている。
けれど、これは純然たる事実だった。

「聖女とは、聖女の魂を持つということはそういうことです。生まれながらにしてすべての祈りをこの身に刻み込まれています」

聖女とは何なのか。

「ですが、皆様ひとつ勘違いされていると思われます。聖女には誰でもなれます。祈れば誰でも」

祈ることが出来るから聖女ではなく、聖女だからこそ祈るのだ。

「カロリーナ、あなたはなんのために祈ったの」
「え?」

ぽかんと、カロリーナはイシスを見上げている。
この質問に答えられなければ、聖女じゃない。

「ただ祈ればいいってもんじゃないのよ。この国の、この世界の平和と安寧を5001の祈りで支えるの。人々のために」

2つ年下の、未だ聖女にはなれない少女は、うなだれた。

「カロリーナ。あなたは騙されていた。同情はできます。だから……いちからやり直しなさい」

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