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第九話 神託〜世界の危機〜
しおりを挟む「……3度目……!」
自室のベッドで跳ね起きたイシスは、真っ青になって震えが止まらない。
「嘘でしょう……そんな――」
奇跡がこんなに何度も起こったことは、聖女だからこそ恐ろしく感じてしまう。
すでに、真の聖女としても、本分を大きく逸脱してしまっている。
さらに、今回は、今までの未然に防げたからと喜んでいられるようなものと一緒にはできなかった。
予言されたのは、世界の滅亡の危機――
「魔王が、復活する」
魔王とは、世界を手中に収めようという、悪なる意思を持った存在だ。
数百年に一度、世界に現れ、生きとし生けるものを虐殺し、大地を腐らせ、魔物の楽園とするのだという。
姿形は、若い男とも、老婆とも、また大きな雄牛だったり、羽の生えた神々しい猫であったり、伝承や文献によってぜんぜん違うため、おそらく決まった姿をしていないのだろう。
恐ろしく強く、魔物を大量に増やすため、並の戦士や魔法使い、僧侶や聖女――軍団でも倒せない。魔王が出現するたびに、世界は何度も滅びかけている。
王座には、うなだれる国王。
締め切った王座の間に、宰相と騎士団長、王太子、聖女、そして、教会の大司教が青ざめた顔を突き合わせている。
「嘘だと、私は言いたいです。けれど、すでに、もうニ度も……」
イシスは、これだけ神託を受けて危機を救っている以上、自分の妄想ではないことは理解している。
けれど、信じたくはなかった。
国王はうなだれるのをやめ、臣下たちを見据えた。
「――こればかりは慎重に対処せねばなるまい。魔王復活が本当であるとして、それを裏付けるようなことは何かないか?」
「ございます、陛下」
大司教が手を上げた。
「前回の魔王復活は300年前でございますが、その時もお告げがあり、その後魔物たちの活発化や、天変地異など、自然の現象とは説明がつかないほどいくつもの不穏な出来事が起こりました。今回も、本当ならばその兆候はあるでしょう」
「ならば、それらが起こるまで、この神託は伏せておくほうが良いか」
「即答はできかねますが……悪くないかと。我々としては魔物の監視の強化はさせていただきます」
大司教は、ここですこし困った顔をした。
「ですが……もうすでに、魔物の活発化は兆候が見られるのです。リングエベルの大氾濫前後から、各国より魔物の大量発生はいくつか報告があり」
「なんと……」
「各国の様子を見守り、何か対策を取るべきかと、教会で話し合いがあったばかりでした……」
それが魔王復活によるものなら、どれだけ備えても無駄、ということだ。
倒しても倒しても増える魔物。山は噴火し、海は常に荒れ、大地が枯れる。
魔王の強大なる邪悪の力に、世界が狂うのだという。
カヤマンディ王国から西の、メリンドールという王国が、魔物の大氾濫で危機的状況に陥ったとの報があり、とうとう魔王復活の神託は公表された。
世界は大混乱になりかけた――それも、想定済みだった。
教会は復活はまだ遠いだろうという見解、そして過去の文献により世界中が一丸となって立ち向かえば魔王に打ち勝てるだろうと。
そして――
勇者の召喚を行うと、そう宣言した。
勇者は、魔王を倒す特別な存在だという。
異世界から召喚される彼らには、神の加護と力が備わり、あらゆる邪悪に打ち勝てる。
過去すべての魔王は勇者に倒され、そして世界は救われた。
勇者は――聖女の祈りによって召喚される。
勇者召喚を祈ることができる聖女は、真の聖女であるイシスのみだ。
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