祈ればいいってもんじゃない!

鹿音二号

文字の大きさ
9 / 24

第九話 神託〜世界の危機〜

しおりを挟む


「……3度目……!」

自室のベッドで跳ね起きたイシスは、真っ青になって震えが止まらない。

「嘘でしょう……そんな――」

奇跡がこんなに何度も起こったことは、聖女だからこそ恐ろしく感じてしまう。
すでに、真の聖女としても、本分を大きく逸脱してしまっている。
さらに、今回は、今までの未然に防げたからと喜んでいられるようなものと一緒にはできなかった。
予言されたのは、世界の滅亡の危機――

「魔王が、復活する」


魔王とは、世界を手中に収めようという、悪なる意思を持った存在だ。
数百年に一度、世界に現れ、生きとし生けるものを虐殺し、大地を腐らせ、魔物の楽園とするのだという。
姿形は、若い男とも、老婆とも、また大きな雄牛だったり、羽の生えた神々しい猫であったり、伝承や文献によってぜんぜん違うため、おそらく決まった姿をしていないのだろう。
恐ろしく強く、魔物を大量に増やすため、並の戦士や魔法使い、僧侶や聖女――軍団でも倒せない。魔王が出現するたびに、世界は何度も滅びかけている。


王座には、うなだれる国王。
締め切った王座の間に、宰相と騎士団長、王太子、聖女、そして、教会の大司教が青ざめた顔を突き合わせている。

「嘘だと、私は言いたいです。けれど、すでに、もうニ度も……」

イシスは、これだけ神託を受けて危機を救っている以上、自分の妄想ではないことは理解している。
けれど、信じたくはなかった。
国王はうなだれるのをやめ、臣下たちを見据えた。

「――こればかりは慎重に対処せねばなるまい。魔王復活が本当であるとして、それを裏付けるようなことは何かないか?」
「ございます、陛下」

大司教が手を上げた。

「前回の魔王復活は300年前でございますが、その時もお告げがあり、その後魔物たちの活発化や、天変地異など、自然の現象とは説明がつかないほどいくつもの不穏な出来事が起こりました。今回も、本当ならばその兆候はあるでしょう」
「ならば、それらが起こるまで、この神託は伏せておくほうが良いか」
「即答はできかねますが……悪くないかと。我々としては魔物の監視の強化はさせていただきます」

大司教は、ここですこし困った顔をした。

「ですが……もうすでに、魔物の活発化は兆候が見られるのです。リングエベルの大氾濫前後から、各国より魔物の大量発生はいくつか報告があり」
「なんと……」
「各国の様子を見守り、何か対策を取るべきかと、教会で話し合いがあったばかりでした……」

それが魔王復活によるものなら、どれだけ備えても無駄、ということだ。
倒しても倒しても増える魔物。山は噴火し、海は常に荒れ、大地が枯れる。
魔王の強大なる邪悪の力に、世界が狂うのだという。



カヤマンディ王国から西の、メリンドールという王国が、魔物の大氾濫で危機的状況に陥ったとの報があり、とうとう魔王復活の神託は公表された。
世界は大混乱になりかけた――それも、想定済みだった。
教会は復活はまだ遠いだろうという見解、そして過去の文献により世界中が一丸となって立ち向かえば魔王に打ち勝てるだろうと。
そして――

勇者の召喚を行うと、そう宣言した。

勇者は、魔王を倒す特別な存在だという。
異世界から召喚される彼らには、神の加護と力が備わり、あらゆる邪悪に打ち勝てる。
過去すべての魔王は勇者に倒され、そして世界は救われた。
勇者は――聖女の祈りによって召喚される。

勇者召喚を祈ることができる聖女は、真の聖女であるイシスのみだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

聖女じゃない私の奇跡

あんど もあ
ファンタジー
田舎の農家に生まれた平民のクレアは、少しだけ聖魔法が使える。あくまでもほんの少し。 だが、その魔法で蝗害を防いだ事から「聖女ではないか」と王都から調査が来ることに。 「私は聖女じゃありません!」と言っても聞いてもらえず…。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

婚約者は無神経な転生悪役令嬢に夢中のようです

宝月 蓮
恋愛
乙女ゲームのモブに転生したマーヤ。目の前にいる婚約者はそのゲームの攻略対象だった。しかし婚約者は悪役令嬢に救われたようで、マーヤそっちのけで悪役令嬢に夢中。おまけに攻略対象達に囲まれている悪役令嬢も転生者で、何だか無神経発言ばかりで少しモヤモヤしていしまうマーヤ。そんな中、マーヤはゲームには関係ない隣国の公爵令息と仲良くなり……!? 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

『無関係ですって言ってるのに! ~婚約破棄の次の標的にされたので、王都から逃げました~』

鍛高譚
恋愛
「はぁ!? なんで私なの!? 私は無関係です!巻き込まないでください!」 突然の婚約破棄騒動の渦中で、傍観者のはずのミラージュ・ダッソーは、まさかの王子から“次の婚約者”に指名される。 断っても聞かない王子。どうしても巻き込まれる未来――そんなの嫌すぎる! 「……反逆?わかりました、では反逆者らしく追放されます」 そう言い放ち、自主的に王都から“逃亡”したミラージュ。 目指すのは自由と平穏な日々――だったのに、辿り着いた隣国では盗賊退治に巻き込まれ、元婚約者の陰謀の影まで迫ってきて……? これは、「巻き込まれたくない系ヒロイン」が、望まぬトラブルを切り抜けながら、自分の力で自由と安息を勝ち取っていく物語。 誰にも縛られない人生、手に入れてみせます! -

処理中です...