祈ればいいってもんじゃない!

鹿音二号

文字の大きさ
11 / 24

第十一話 やめろと言われた勇者召喚召喚をした結果

しおりを挟む
『勇者召喚はやめなさい』

5度目の神託は、イシスには到底受け入れることができないものだった。

準備していた勇者召喚の儀式の当日のことだったし、魔王復活は世界の最大の悩みだった。
魔王復活は嘘だったとしても、今、誰がそうだと言い切れるのだろうか。
神託があるたびに、イシスの世間での評価は変わる。魔王復活が、もし間違っていたら――イシスは真の聖女としての価値を失うだろう。
けれど、世界が滅ぶ可能性があるのなら、それを防ごうと賭けに出るのは間違いじゃないはずだ。
だから――誰にも、神託のことは言わなかった。
どうしても、勇者召喚はしたい。
この世界と異世界とのつながりは、星の運行で知ることができる。今日が一番異世界に近くなる日だそうだ。
今日を逃せば、またいつ儀式を行えるかわからない。
どうしても。

けれど。
召喚された勇者は、『勇者』ではなかった。

城の一番の大きな広間で、術者を100人集め、伝承通りの手順で召喚の儀式は行われた。
イシスの祈りは、手応えがあった。魔力を吸い取られ、干からびそうになった。
そして、青年がひとり、現れた。
魔法陣の上の見慣れない服装の彼は、驚いたように周囲を見回した。

「ようこそおいでくださいました……!」

成功した!
急いでイシスは、よろけながら彼の元へと走った。
彼の足元でひざまずき、祈りのときと同じように手を合わせて、

「突然のことで、さぞや驚きになったでしょう。私達はあなたのお力をお借りしたく、このような方法で――」

イシスをぼうぜんと見下ろした青年の、その顔を見て、ぎくりとした。
彼は体の線が細く、ぴったりとした短めの紺色のコートと同じ色のズボン、タイは広がらず細い紐のようなもので首元をゆるく締めている。
顔はとても整っている。黒髪をきれいに切りそろえ、清潔感がある。
そして、瞳は黒い。

「……誰?」

ハスキーな魅惑のボイス。
けれど、イシスの耳を素通りした。
勇者の目は、伝承によれば――金色に美しく輝いているはずだ。


イズル・ショウジと名乗った彼は、とくべつこちらに協力的でもなく、けれど癇癪をおこすような人間でもなかった。
冷静と言っていい。
ただ、イシスを嫌いなようだった。
聖女で自分を召喚した張本人だと分かると、鋭く睨まれて、それきり無愛想だった。
応接間でイシスと、王太子、宮廷魔道士長と大司教が彼に事情を説明すると、なんだか呆れたようだった。

「俺オタクじゃないんだけど、まああれだけ世間で流行ってたら知識はあるっていうか」
「は、はい?」
「こっちの話。で、まじで異世界召喚とかされちゃったわけ、俺が」
「はい……このたび、この世界に来ていただいたのは……」
「セオリーだと、魔王を倒せ、とか、そんなん?」
「良くご存知で」
「でも、俺ステータスとか、不思議な力とか、授かってないけど」
「え」
「ご報告が……!」

突然、応接間に魔道士が入ってきた。
魔道士長へ耳打ちすると、彼は顔をしかめた。
そして、魔道士長はイシスに耳打ちする。

「……聖女。勇者様の能力を鑑定した結果、平均より高く、特に魔力は強いものの、特別な力などは見受けられませんでした」

がん、と頭を殴られたような気がした。
茫然自失したイシスに、召喚されたイズルは、せせら笑う。

「で、元の世界には帰れんの?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美化係の聖女様

しずもり
ファンタジー
毒親の仕打ち、親友と恋人の裏切り、人生最悪のどん底でやけ酒を煽り何を思ったのか深夜に突然掃除を始めたら床がドンドンって大きく鳴った。 ゴメン、五月蝿かった? 掃除は止めにしよう、そう思った瞬間、床に現れた円のようなものが光りだした。 気づいたらゴミと掃除道具と一緒に何故か森の中。 地面には気を失う前に見た円が直径3メートルぐらいの大きさで光ってる。 何コレ、どうすればいい? 一方、魔王復活の兆しに聖女を召喚した王城では召喚された筈の聖女の姿が見当たらない。 召喚した手応えはあったものの目の前の床に描かれた魔法陣には誰も居ない。 もしかして召喚先を間違えた? 魔力の残滓で聖女が召喚された場所に辿り着いてみれば聖女はおらず。 それでも魔王復活は待ってはくれない。 それならば聖女を探しながら魔王討伐の旅へ見切り発車で旅する第二王子一行。 「もしかしたら聖女様はいきなり召喚された事にお怒りなのかも知れない、、、、。」 「いや、もしかしたら健気な聖女様は我らの足手まといにならぬ様に一人で浄化の旅をしているのかも知れません。」 「己の使命を理解し果敢に試練に立ち向かう聖女様を早く見つけださねばなりません。」 「もしかして聖女様、自分が聖女って気づいて無いんじゃない?」 「「「・・・・・・・・。」」」 何だかよく分からない状況下で主人公が聖女の自覚が無いまま『異世界に来てしまった理由』を探してフラリと旅をする。 ここ、結構汚れていません?ちょっと掃除しますから待ってて下さいね。掃除好きの聖女は無自覚浄化の旅になっている事にいつ気付くのか? そして聖女を追って旅する第二王子一行と果たして出会う事はあるのか!? 魔王はどこに? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 不定期更新になります。 主人公は自分が聖女だとは気づいていません。 恋愛要素薄めです。 なんちゃって異世界の独自設定になります。 誤字脱字は見つけ次第修正する予定です。 R指定は無しの予定です。

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

底無しポーターは端倪すべからざる

さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。 ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。 攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。 そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。 ※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。 ※ごくまれに残酷描写を含みます。 ※【小説家になろう】様にも掲載しています。

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした

タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。 身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。 だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり―― それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。

処理中です...