身代わり吸魔が暴君騎士に思うこと

鹿音二号

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リュートがいい

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「あの、ダイン……?」
「……」

口数は増えても、デフォルトで無口無表情のダインは、やっぱり何考えてるのか分かんねえな……
これで半日ほど、俺のそばから離れない。
俺は俺でそこまで気を使うタイプじゃないから、好きにあっちこっち行くんだけど……どこに行くにしてもついてくる。
といっても、今は道中、仲間に会いに行くだけだから、大したことはないんだけど。

けど……さすがにアエリアーナとの密談についてこられたら……

「しばらく、ふたりで話したいんだ。な、後でまた会おう」
「……」
「きみがいたらいつまでも終わらないんだ、こればっかりは……」
「……」

なんだか、しゅん、って感じで心なしか深い青色の髪も垂れ下がっているような。
とぼとぼと、部屋を出ていくダインの背が、とっても寂しい……

「……なんなんですか、あれ」

呆れたようにアエリアーナこと松田。

「コンラートより護衛っぽい」
「たしかに?」
「瘴気はないでしょうね」
「うん、大丈夫」

数時間前に災禍と戦闘になって、ダインが少し瘴気を浴びちゃったんだ。
アエリアーナの浄化魔法ですぐに対処したけど、そのあと瘴気もたまらなかったみたいでいい匂いはしなかったし、たまにとつぜんあっちから髪に触れてくるから、事故で吸っちゃうエネルギーに瘴気はない。
……そうだな、髪とか触られてるのか……相手によればセクハラになっちまう。
まあ、俺だし、ダインだから……な。

「じゃあ、まあ、進めますか」

次なる第六の災禍。
これが少し厄介で、ふたりで入念な話し合いをしてる。
いったいどうすれば勝てるのか……スチル回収が中途半端だったけど、ヒントくらいあっても……と思ったけど、ない。
また倒したかどうか分からないようなシナリオだったしな……!
しかも悪いことに、ここでバッドエンドが一個ある。
けれど、それを回避すれば、あとは第七までシナリオは1本だ。倒せない敵ってことじゃない。シナリオが進行するってそういうことだって松田が言う。

うーん、と、俺が考えてると、じっと松田が俺を眺めている。
おーい、考えろよ。

「や、お前、太ったんじゃないって」
「太ったってどーゆーことよ!失礼ね!」

まったく失礼しちゃう!
って、適当にふざけてみると松田はふっと笑った。それって冷笑とかっていうやつじゃない?
アエリアーナはそんな顔しないぞ、気をつけろよ。
松田って、やっぱり少し腹黒っぽいんだよなー。でも、頭が良さそう。
で、じっさい、どうも太ったっぽいんだわ。

「やっぱりそう思うか?すこしな、肉がついたっぽいよな?」
「ちょっと肌の色も良くなってないか?」

うん、ツヤが良くなった。
第一の骨と皮だけだったのが、今はちょっと関節が目立たなくなってきている。
髪でドレインの精度や操作が上手くなってるから、ステータス画面がない世界だけどレベルアップしたってことだと思う。
それにさんざん災禍や魔物と戦って、ドレインもかなりこなしてるから、エネルギー量が増えてるっぽいんだ。
これ、ずっと続ければもっと肉が増えるんだろうな。今さら見た目が人間に近づいても、そこまでうれしいと思うかはさておきね。
松田はちょっと笑った。

「人間の俺としては、心配になっちまう細さだからな。太ってくれるとほっとする」

そう?なら遠慮なく。
その後もあんまり良い策が思いつかなくて、今日はここまで。
部屋をふたりで出ると……
え?ダイン?なんで入り口の前に?

「……」

驚いてるこっちに近寄ってきて、俺の髪、スンスンって、犬じゃないんだから!

「まさか、ずっと待ってたのか……?」
「……」

うっ、ダインの頭に三角の耳が見える気がする……!
って、アエリアーナ、内なる松田が漏れ出てない?相変わらずダインこと嫌いだからなあ……
その目に気づいたのか、ダインがアエリアーナを見返した。
……ちょっと、俺挟んで見つめ合わないで。



「……で、今になって瘴気が出てきちゃったと」
「……」

コクリと頷くダイン。
またもや、夜中に美味しそうな匂いに起こされた。
どうも、時間差があるみたいだな。
まあ、病気みたいなもんだと思ったら、いつ頃症状が出るとか誰にもわからないことが多いからな。

「……いいよ」

俺は、やっぱり美味しいごはんは大歓迎なんだ。
ただ、ダインのお子様な感じがどうも……罪悪感がチクチク……
同い年くらいなのに……!
で、おたがい服を脱いで。

「……ふっ?あ、……ちょっ」

……ダインが、今までしたことない行動に出た。
うおおおめちゃくちゃ撫でられる!
本当に、撫でるだけなんだ、俺の身体を。
でも、なぜに?いっつも突っ込むだけじゃん。
いや、それが不満なわけじゃないよ?でも、そっちが当たり前になったら……こ、これはなんだ。
さすさすと本当に撫でられるだけなのに、肌がざわってする。

「そ、の……ダイン?これ……」
「……あの男から、こうすれば、お前もよくなると」
「……な」

にを教えてくれとんじゃ僧侶ー!?
ダインはそこまで苦しげでなくて、いつも通りにも見える。けど、触れる手のひらから瘴気の味がする。

「……う、うう」

こう、いたたまれない。きょとんってダインがふつうの顔してるからー!

「なにか、おかしいか」
「……いや、それ以外に何か聞いたか?最近」

教育、なんだろうけど……いや、ちがくない!?
やっぱりやらかしてんじゃねーか僧侶!
ダインはひとつ瞬きした。

「……妊婦というものがいると聞いた」
「妊婦?」
「……あれは、太っているのではなかったのだな」
「……お、おお……」

つまり、今までダインは妊婦をどういう人か知らなかったと。
かなり深刻だな……フレェイもふざけてるだけでもないんだな。

「あと、そう聞かれたら、心配無用です、と答えろと」
「……はは」

疑われてんのは分かってるみたいだな。
まあ、そうやってちょっとでも教えてくれてるなら、文句は言わない。

「……よく、ないか」

するっと、腹から胸のあたりまで大きな、固い手のひらでひと撫でされて、ぶるってなった。
うわーダインにこんな優しく撫でられるなんて、想像もしたことない。
でも、悪くない。

「……ううん、もっとして」

髪と腕で、ダインの首にすがった。

「いいよ、気持ちがいい」
「……気持ちがいい?」
「ああ、……よくなってる」

ほんとだよ。ずっと飴玉転がしてるみたいな。

「ダインはどう……?」

……勢いで聞いてしまった。
いくら知識がないといったって、男にこうやって……突っ込むの、やっぱりおかしいとか嫌だって思いそうなんだけど。
こうやって正気のダインを見ていると、そのへんはそこまで嫌って感じじゃないのかな。
ちょっと、ドキドキしながらきいたら、ダインは首をかしげたよ。

「……よくなっている」
「そ、そう」

これは……病気が良くなっています、みたいなニュアンスだな?
そうじゃなくて……!

「……よくなるなら、アエリアーナの魔法のほうがいいよ。って、俺は、ごはんが食べられるからね、だからこれもいいんだけど、」

何を言ってるんじゃ、俺。
中途半端なツンデレみたいな!
でも、実際アエリアーナの浄化のほうがにいいに決まってるんだ。
ダインは、まばたきした。

「あの女より、リュートがいい」

……ふぅおおお!?
な、名前、は、……初めて呼ばれた気がする!
そっかー俺がいいのかー
……お、俺が。

「……!」

顔が、熱い。赤くなってるよね、て、手で隠しとこ。
う、うれしいって、そんな。
ふ、深い意味はないだろ?ドレインか浄化かってことで……ダインは、まだ感覚を言葉にできないみたいだから、なあ?
なんで俺も嬉しがるんだ。

「……」

ダインが、もぞって動くから、ふと指の間から見ちゃった。
俺の髪を持ち上げて、また顔を、スリスリ……
ほ、あ、ちょ、やめてくれ。
どきどきする、胸いっぱい……
――ああ、俺。

(ダインのこと、好きなのか)

あーそっかー。
ストンって納得できた。

まだどきどきするけど、気分は落ち着いてきたぞ。
そっかーなるほどねー。
じゃあ、どうするって悩むほど、俺は繊細じゃなかった。そういうのは松田かな?
今は、中途半端にお預けされてるのをヨシ、にするだけだ。
全身撫で回され、まんべんなく美味しいのを味わって、ふわふわ酔ったみたいになった。
ふぁあ、しあわせ……

「んく、ふ、うぅん……っ」

またシーツ噛んで、後ろから。
ダインは、理性がぷちぷち消えたり戻ったりしてるんだな、たまにすごく味が濃くなって、強くされる。
お、おれは、……なにこれ、おいしい。
ほあ、いつもより、とってもうまい。
腹んなか、とろってする。あ、そこ、突かれたら……っ!
もっと、って腰が上がっちゃう。ひ、膝浮く、足開く、あ、ごちゅって、おく、入っ……
……セックス、だよな、これって。
意識したら、ダインが触ってるとこぜんぶ熱くておいしいんだ。

「んー、んー!――ぅ……っ」

ああああおおぃしい……ッ!
は、はう……おれ、ダインの、食べてる。いま。
もらえてる。うれしい……

ダインが俺で吐き出したのは1回だけだったけど、ものすごく満足した。
ダインも瘴気はそれだけで収まって……でも、しばらくくっついて同じベッドにいた。
ふふ、うれしいな。

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