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聖女一行の旅は続く
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アエリアーナは旅を続けるらしい。
もう絶対教会に戻りたくないと、確固たる意志をお持ちで……そんなに嫌なのか。
むしろゲームのアエリアーナも、愛の力だよねーとか言われるくらいだから、教会よりマシだったのかもしれんとか言い出した。
え?俺?もちろん喜んで!
第一の災禍・吸魔がパーティーに入りました!
ダイン?俺の横で髪をスリスリしてるぜ。
まだダインの覚醒ってやつ見てないから、絶対見ないと。俺短髪だったんだって?がんばって縮めようとしても膝くらいが限界なんだよな……
って、おい、コンラート、何ひざまずいてるんだ。
「アエリアーナ様、リュート様、ダイン様。私もお供しとうございます」
は?俺とダインにもサマ!?
「神の御心を見失い、迷う私に導きを下さいました。愛とは何たるか、慈しみとは……私はその真のお姿たる……」
口上、10分。
この短い期間に、一体こいつに何が。
「デバガメしたに決まってるだろ」
ぼそっとアエリアーナ。
……え?あの俺のガチ泣き見られてたの!?やめてー!
「私も行くー!あんなところ(魔道協会)より友達といっしょがいい!」
お、いいぞ!きみがいたらマジで百人力。
天才魔道士確保!泣いて悔しがるがいい魔道協会!
ふふふ、最悪ひとりかもって思ってた数日前が懐かしいぜ。
「あ、私はここで」
はああああ!?
ここで裏切りが!?
って、まあいいけど。
これからどうするのフレェイ。
「やることが出来ましたので。またいつか……そうですねえ、5年後くらいに、お会いしましょう」
長いうえに具体的。
最初の頃とだいぶ違うよな、皆様に祝福を、って祈ってくれる姿がどっかの聖人みたい。
というわけで、聖女一行の旅はまだまだ続く。
「皆様ご存知でいらっしゃるでしょう、かの救世の聖女が、こちらアエリアーナ様。5年前、7の災禍という世界を滅ぼす災いを祓い、邪神の森を清め、かのイヴェギリスの悪魔領主を打ち倒し南部諸国を救った、歴代で最も尊いとされる乙女です」
うおーっ!
って、すごい歓声だな。
眼下?っていうのか?俺たちの下には大量の人、人、人。
いやーこんないっぱいの人初めて見るわ。
アエリアーナは笑顔で手を振っている。
アエリアーナ様!ってコール。ええ、こんな盛り上がっちゃっていいの……?その、主役はリアじゃないんだけど。
でも、本当に人気者なんだ、アエリアーナは。鼻が高いぜ。
あ、紹介された功績はぜんぶ本当だぞ、盛ったわけじゃない。
「そのお隣が、聖者と名高いリュートでいらっしゃる」
やめてー聖者やめてー。
うおーってやめてー。
「聖女の浄化の力と同等の祓いのお力を持ち、聖女の歩みを助け、各地で瘴気に冒される人々を救い、災禍を退ける。まさに聖者と呼ぶにふさわしい」
タネ明かしすると、普通にドレインです。
旅しているうちにドレインするエネルギーの区別、吸う量の調節ができるようになっちゃって、瘴気だけ吸えるようになったんだわ。
アエリアーナがしょっちゅう瘴気で苦しんでる人を助けてくれって呼び止められるもんだから、俺も手伝ったのが……うんまあ、呼び方はともかく、人助けはいいことだ。
どうも普段はフード被ってるから、神秘性が増すとかなんとか……もう見た目は人と変わらないくらいになってるんだけど、リアが神秘性グッジョブっていうからあ……
エネルギーの区別つけて量も測れて、おまけに俺から人にエネルギーもあげられるようになったから、医者みたいな事もできるようになって、それのせいもある。
あと、瘴気で暴走する人って、結構強い人が多いって分かって、なんとなく助言してみたり。瘴気を溜められる器って、それだけ大きいようだな。
そんで……強い人ほど、おいしい。
これ、気づいてたけどダインに言わなかったら、バレた時に浮気した!みたいに怒って暴走しちゃったんだよね……いや、ごめんて。
でもダイン以外に俺の一番好きな味はないんだよ。
「そのお隣が、無尽騎士ダイン。彼は聖女と聖者を護り、時に雄々しく敵を斃す。尽きることのない力で邪神の森から魔物を狩り尽くしたという……あり得ますねえ」
狩り尽くしてはないよ、その前にリアの覚醒滅殺パワーが炸裂したから。
「聖護騎士コンラート。聖女の教会時代から常に忠誠を誓う無類の騎士です」
表向きは。
今は狂信者じゃね?それこそ愛の力で覇気まで使えるようになったんだよ……
「封瘴の魔道士クリスティナ。彼女の知識と力は、この災禍に怯える世に輝く一番星のようです」
魔道協会に帰らなかったから、そこのおえらいさんがものすごくぶーぶー言って瘴気媒体化キャンセルは闇に葬られようとしたんだけど。
この魔法は!?って旅先の大きい国にいた大魔道士っていう人の目にとまって、今ではこの魔法は各国の常備魔法って呼ばれてる。
一番大きな魔道士の組織だった魔道協会は失墜。今はほそぼそ活動してるって。
身から出た錆ってな。
「最後に不肖わたくし、僧侶のフレェイが加わり、ここに5年前、7つの災禍を討伐した救世の聖女一行が揃いました」
儀式用のきらびやかな大量の布!っていう法衣を着て、にこやかさわやかな笑顔のフレェイ。
おお、盛り上がりが最高潮。
実のところ、聖女が戻ってこなかったから、7つの災禍と戦ったことは、教会がそんなことありましたっけ?みたいな態度で世間から忘れさせようとしたんだけど。
フレェイが神院にバーン!と戻り、聖女が倒しました世界を救いました!と拡声器持って(っていうイメージで)言いふらして。
私も手伝いました!と自身のイメージアップと、各地を旅して邪悪と戦いまくる聖女の人気を傘に……なんと、神院内を粛清統一。
俺たちが頑張った災禍との戦いが忘れられなかったことは感謝するけど、そのせいでいらん苦労もしたと言える。
「今日この日に、聖女をこの場にお呼びできたこと、大変嬉しく思います」
また歓声が上がる。
神院の本部の、信者にアピールするための広場で、俺たちがいるのは建物から大きく張り出したテラス。
本来なら、こういう賑やかしい使い方はしないらしいんだけど……
テラスの縁でにっこりと、もううさんくささがかけらも見当たらないフレェイの笑顔と、5年という月日で美しさに磨きがかかったアエリアーナの微笑み。
だが――俺たちは知っている。
この笑顔の裏で、ハブとマングースな戦いが繰り広げられていることを。
『人に面倒を押し付けて、なにが今日この日ですか?』
『まあまあ、聖女様の人気に貢献していますでしょう?それに先の災禍討伐に私が支援したことをお忘れなく』
『取ってつけたような物資支援でしょう?……聖水はありがたいことでしたけど』
『今後とも良き関係を続けようではないですか』
ってな感じかなー?
「リュート?」
ダインが俺の妄想に気づいたようだな。
「あのふたり、仲がいいよね」
「……ろくな事を考えてないという共通点はあるな」
無表情……っていうか、表情を作るのが面倒だと思って無表情になってるダイン。いつもは控えめだけど表情筋は動いてるんだ。
言ってることは間違ってないな、ふふ。
5年間、本当にフレェイとは会わなかったんだけど、もう中身がバレバレのやり取りはしてたんだよね。
松田……アエリアーナは、アエリアーナとして生きることに決めたらしく、旅を始めてからしばらくして仲間全員に転生のことをバラして、俺にもアエリアーナって呼ぶように言ったんだ。
いつの間にかコミュ障は克服したみたい。それはそうでしょう、って俺見ておかしそうに笑われたんだけど……なんだったんだ?
俺ももちろん一緒にバラしたけど……
さすがにこの世界がエロゲ世界とは言えなかった……言えないって……
これは俺たち二人だけの永遠の秘密だ。
懐かしいな、まだダインがろくに喋られなくてしょっちゅう暴走していたあの旅。
俺は災禍で、まだあんまりドレインもうまくなかったガリガリのちびだったのに、ダインってばよく手を出す気になったよね。まあ、身代わりだったけど。
本当、あの時アエリアーナを助けられて良かったな。
なんだか楽しくなって、ちょっとローブの袖から髪を出して、ダインの手に絡ませる。細いからたぶん他の人には気づかれない。
ダインは目を細めて俺をじっと見て、小さく笑った。
今日はなにも懐かしい同窓会じゃなくて、言ってみると俺たちはイベントのキャストだ。
テラスの奥にずっと控えていた僧侶が進み出てきて、恭しく聖女に箱に入った大きな杖――錫杖を差し出す。きらきらの彫金と宝石で、リアの頭一つ分大きいくらいあるけど、どうも軽くなる魔法がかかってるのか。
それをアエリアーナは箱からそっと手に持った。
フレェイがその前に膝をついて両手を差し出し、アエリアーナが錫杖を手渡し――
「貴方が『鱗冠尊者(神院トップ)』ならリュートは神にもなれますね、この破戒僧」
俺!?
「その時は貴方よりお先に神の第一の下僕として馳せ参じましょう、腹黒聖女」
俺をダシに不穏な会話しないで!?
「俺がお前の一番に決まっているからな」
そりゃお前が俺の一番だよダイン。
「ふっふー仲がいいねえ、ああ言えばこう言う?」
違うかな、クリスティナ……
「……名案ですね」
コンラートなにが!?
アエリアーナが続いて金色の小さな冠をフレェイの頭に乗せて……割れんばかりの拍手。
本当はこれは秘匿されてる場所で静かに行われてる神院の代替わりの儀式のひとつで、フレェイは風通しのいい組織を目指して、そういう秘密な事をオープンにしたいらしい。
……まあ、別のことは隠しまくってるけどね。
「これで、はばかることなく聖女を全面的に支援できます。皆様のお役に立てる日が来ました」
これはフレェイの本心なのかな?
アエリアーナは周りが浄化されるような笑顔だけど……そういう笑顔は逆に怖いんだ。
「今までの積もり積もった利子は返していただきます。お覚悟を」
そうだね……まずはあちこちで聖女を狙ってる輩のお掃除とかかな。
お前のせいだぞ、フレェイ。
飛んできたナイフは、コンラートが叩き落とした。
なにかの罠的な魔法はクリスティナが見つけて壊した。
おっと、俺を狙ってくるとは。
あーあ、ダインが殴り飛ばしたよ。生きてるかなあれ。
……奥から逃げ出そうとした僧侶の格好した不審者を、俺は数本の髪で拘束した。ジタバタもがくから、ドレインしようかと思ったら……
「飯は俺が食わせてやるから」
ダインが聞き分けのない子供に言うみたいに……仕方ない。ダインの精力に免じてやろう。両手足折っておくか。
テラスの内側のことだから、観客は気づいていない。
悠然とアエリアーナとフレェイがふたりで仲良し握手をしている。
すでに世界はシナリオ後、いいかげんだったストーリーはものすごく複雑になって第二フェーズに突入。
でもまあ……
俺はこの後のダインの極上ごはんに思いを馳せて、口元を拭った。
fin.
もう絶対教会に戻りたくないと、確固たる意志をお持ちで……そんなに嫌なのか。
むしろゲームのアエリアーナも、愛の力だよねーとか言われるくらいだから、教会よりマシだったのかもしれんとか言い出した。
え?俺?もちろん喜んで!
第一の災禍・吸魔がパーティーに入りました!
ダイン?俺の横で髪をスリスリしてるぜ。
まだダインの覚醒ってやつ見てないから、絶対見ないと。俺短髪だったんだって?がんばって縮めようとしても膝くらいが限界なんだよな……
って、おい、コンラート、何ひざまずいてるんだ。
「アエリアーナ様、リュート様、ダイン様。私もお供しとうございます」
は?俺とダインにもサマ!?
「神の御心を見失い、迷う私に導きを下さいました。愛とは何たるか、慈しみとは……私はその真のお姿たる……」
口上、10分。
この短い期間に、一体こいつに何が。
「デバガメしたに決まってるだろ」
ぼそっとアエリアーナ。
……え?あの俺のガチ泣き見られてたの!?やめてー!
「私も行くー!あんなところ(魔道協会)より友達といっしょがいい!」
お、いいぞ!きみがいたらマジで百人力。
天才魔道士確保!泣いて悔しがるがいい魔道協会!
ふふふ、最悪ひとりかもって思ってた数日前が懐かしいぜ。
「あ、私はここで」
はああああ!?
ここで裏切りが!?
って、まあいいけど。
これからどうするのフレェイ。
「やることが出来ましたので。またいつか……そうですねえ、5年後くらいに、お会いしましょう」
長いうえに具体的。
最初の頃とだいぶ違うよな、皆様に祝福を、って祈ってくれる姿がどっかの聖人みたい。
というわけで、聖女一行の旅はまだまだ続く。
「皆様ご存知でいらっしゃるでしょう、かの救世の聖女が、こちらアエリアーナ様。5年前、7の災禍という世界を滅ぼす災いを祓い、邪神の森を清め、かのイヴェギリスの悪魔領主を打ち倒し南部諸国を救った、歴代で最も尊いとされる乙女です」
うおーっ!
って、すごい歓声だな。
眼下?っていうのか?俺たちの下には大量の人、人、人。
いやーこんないっぱいの人初めて見るわ。
アエリアーナは笑顔で手を振っている。
アエリアーナ様!ってコール。ええ、こんな盛り上がっちゃっていいの……?その、主役はリアじゃないんだけど。
でも、本当に人気者なんだ、アエリアーナは。鼻が高いぜ。
あ、紹介された功績はぜんぶ本当だぞ、盛ったわけじゃない。
「そのお隣が、聖者と名高いリュートでいらっしゃる」
やめてー聖者やめてー。
うおーってやめてー。
「聖女の浄化の力と同等の祓いのお力を持ち、聖女の歩みを助け、各地で瘴気に冒される人々を救い、災禍を退ける。まさに聖者と呼ぶにふさわしい」
タネ明かしすると、普通にドレインです。
旅しているうちにドレインするエネルギーの区別、吸う量の調節ができるようになっちゃって、瘴気だけ吸えるようになったんだわ。
アエリアーナがしょっちゅう瘴気で苦しんでる人を助けてくれって呼び止められるもんだから、俺も手伝ったのが……うんまあ、呼び方はともかく、人助けはいいことだ。
どうも普段はフード被ってるから、神秘性が増すとかなんとか……もう見た目は人と変わらないくらいになってるんだけど、リアが神秘性グッジョブっていうからあ……
エネルギーの区別つけて量も測れて、おまけに俺から人にエネルギーもあげられるようになったから、医者みたいな事もできるようになって、それのせいもある。
あと、瘴気で暴走する人って、結構強い人が多いって分かって、なんとなく助言してみたり。瘴気を溜められる器って、それだけ大きいようだな。
そんで……強い人ほど、おいしい。
これ、気づいてたけどダインに言わなかったら、バレた時に浮気した!みたいに怒って暴走しちゃったんだよね……いや、ごめんて。
でもダイン以外に俺の一番好きな味はないんだよ。
「そのお隣が、無尽騎士ダイン。彼は聖女と聖者を護り、時に雄々しく敵を斃す。尽きることのない力で邪神の森から魔物を狩り尽くしたという……あり得ますねえ」
狩り尽くしてはないよ、その前にリアの覚醒滅殺パワーが炸裂したから。
「聖護騎士コンラート。聖女の教会時代から常に忠誠を誓う無類の騎士です」
表向きは。
今は狂信者じゃね?それこそ愛の力で覇気まで使えるようになったんだよ……
「封瘴の魔道士クリスティナ。彼女の知識と力は、この災禍に怯える世に輝く一番星のようです」
魔道協会に帰らなかったから、そこのおえらいさんがものすごくぶーぶー言って瘴気媒体化キャンセルは闇に葬られようとしたんだけど。
この魔法は!?って旅先の大きい国にいた大魔道士っていう人の目にとまって、今ではこの魔法は各国の常備魔法って呼ばれてる。
一番大きな魔道士の組織だった魔道協会は失墜。今はほそぼそ活動してるって。
身から出た錆ってな。
「最後に不肖わたくし、僧侶のフレェイが加わり、ここに5年前、7つの災禍を討伐した救世の聖女一行が揃いました」
儀式用のきらびやかな大量の布!っていう法衣を着て、にこやかさわやかな笑顔のフレェイ。
おお、盛り上がりが最高潮。
実のところ、聖女が戻ってこなかったから、7つの災禍と戦ったことは、教会がそんなことありましたっけ?みたいな態度で世間から忘れさせようとしたんだけど。
フレェイが神院にバーン!と戻り、聖女が倒しました世界を救いました!と拡声器持って(っていうイメージで)言いふらして。
私も手伝いました!と自身のイメージアップと、各地を旅して邪悪と戦いまくる聖女の人気を傘に……なんと、神院内を粛清統一。
俺たちが頑張った災禍との戦いが忘れられなかったことは感謝するけど、そのせいでいらん苦労もしたと言える。
「今日この日に、聖女をこの場にお呼びできたこと、大変嬉しく思います」
また歓声が上がる。
神院の本部の、信者にアピールするための広場で、俺たちがいるのは建物から大きく張り出したテラス。
本来なら、こういう賑やかしい使い方はしないらしいんだけど……
テラスの縁でにっこりと、もううさんくささがかけらも見当たらないフレェイの笑顔と、5年という月日で美しさに磨きがかかったアエリアーナの微笑み。
だが――俺たちは知っている。
この笑顔の裏で、ハブとマングースな戦いが繰り広げられていることを。
『人に面倒を押し付けて、なにが今日この日ですか?』
『まあまあ、聖女様の人気に貢献していますでしょう?それに先の災禍討伐に私が支援したことをお忘れなく』
『取ってつけたような物資支援でしょう?……聖水はありがたいことでしたけど』
『今後とも良き関係を続けようではないですか』
ってな感じかなー?
「リュート?」
ダインが俺の妄想に気づいたようだな。
「あのふたり、仲がいいよね」
「……ろくな事を考えてないという共通点はあるな」
無表情……っていうか、表情を作るのが面倒だと思って無表情になってるダイン。いつもは控えめだけど表情筋は動いてるんだ。
言ってることは間違ってないな、ふふ。
5年間、本当にフレェイとは会わなかったんだけど、もう中身がバレバレのやり取りはしてたんだよね。
松田……アエリアーナは、アエリアーナとして生きることに決めたらしく、旅を始めてからしばらくして仲間全員に転生のことをバラして、俺にもアエリアーナって呼ぶように言ったんだ。
いつの間にかコミュ障は克服したみたい。それはそうでしょう、って俺見ておかしそうに笑われたんだけど……なんだったんだ?
俺ももちろん一緒にバラしたけど……
さすがにこの世界がエロゲ世界とは言えなかった……言えないって……
これは俺たち二人だけの永遠の秘密だ。
懐かしいな、まだダインがろくに喋られなくてしょっちゅう暴走していたあの旅。
俺は災禍で、まだあんまりドレインもうまくなかったガリガリのちびだったのに、ダインってばよく手を出す気になったよね。まあ、身代わりだったけど。
本当、あの時アエリアーナを助けられて良かったな。
なんだか楽しくなって、ちょっとローブの袖から髪を出して、ダインの手に絡ませる。細いからたぶん他の人には気づかれない。
ダインは目を細めて俺をじっと見て、小さく笑った。
今日はなにも懐かしい同窓会じゃなくて、言ってみると俺たちはイベントのキャストだ。
テラスの奥にずっと控えていた僧侶が進み出てきて、恭しく聖女に箱に入った大きな杖――錫杖を差し出す。きらきらの彫金と宝石で、リアの頭一つ分大きいくらいあるけど、どうも軽くなる魔法がかかってるのか。
それをアエリアーナは箱からそっと手に持った。
フレェイがその前に膝をついて両手を差し出し、アエリアーナが錫杖を手渡し――
「貴方が『鱗冠尊者(神院トップ)』ならリュートは神にもなれますね、この破戒僧」
俺!?
「その時は貴方よりお先に神の第一の下僕として馳せ参じましょう、腹黒聖女」
俺をダシに不穏な会話しないで!?
「俺がお前の一番に決まっているからな」
そりゃお前が俺の一番だよダイン。
「ふっふー仲がいいねえ、ああ言えばこう言う?」
違うかな、クリスティナ……
「……名案ですね」
コンラートなにが!?
アエリアーナが続いて金色の小さな冠をフレェイの頭に乗せて……割れんばかりの拍手。
本当はこれは秘匿されてる場所で静かに行われてる神院の代替わりの儀式のひとつで、フレェイは風通しのいい組織を目指して、そういう秘密な事をオープンにしたいらしい。
……まあ、別のことは隠しまくってるけどね。
「これで、はばかることなく聖女を全面的に支援できます。皆様のお役に立てる日が来ました」
これはフレェイの本心なのかな?
アエリアーナは周りが浄化されるような笑顔だけど……そういう笑顔は逆に怖いんだ。
「今までの積もり積もった利子は返していただきます。お覚悟を」
そうだね……まずはあちこちで聖女を狙ってる輩のお掃除とかかな。
お前のせいだぞ、フレェイ。
飛んできたナイフは、コンラートが叩き落とした。
なにかの罠的な魔法はクリスティナが見つけて壊した。
おっと、俺を狙ってくるとは。
あーあ、ダインが殴り飛ばしたよ。生きてるかなあれ。
……奥から逃げ出そうとした僧侶の格好した不審者を、俺は数本の髪で拘束した。ジタバタもがくから、ドレインしようかと思ったら……
「飯は俺が食わせてやるから」
ダインが聞き分けのない子供に言うみたいに……仕方ない。ダインの精力に免じてやろう。両手足折っておくか。
テラスの内側のことだから、観客は気づいていない。
悠然とアエリアーナとフレェイがふたりで仲良し握手をしている。
すでに世界はシナリオ後、いいかげんだったストーリーはものすごく複雑になって第二フェーズに突入。
でもまあ……
俺はこの後のダインの極上ごはんに思いを馳せて、口元を拭った。
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
コメント失礼します🙇
本当に本当に面白かったです
色々な要素が絡み合って、特に第七は本当に激アツでした…
こんな素晴らしい作品投稿してくださりありがとうございました
コメントありがとうございます!楽しんでいただけたようでとても嬉しいです!
第七のところは気合いを入れたので、そう言っていただけて良かったです……!
読んでくださって、本当に感謝いたします!