身代わり吸魔が暴君騎士に思うこと

鹿音二号

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紙一重の願望と約束

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やっぱりこう、大きなイベントのあとは打ち上げだよな!?
(元)現役大学生、我慢できずに主催。
やっぱり静かーなミサは必要かもしれないけど、こういうにぎやかでぱーっとするのも必要だろ?
松田もさぞやうれしいだろう!と思ったら、そういうのはパリピがやるんだよ、とうつろな目で……あ、そうなんだ……

本当は教会のところで騒ぐのもよくないんだろうし、数日泊まってる施設の人に冷たい目で見られたけど、押し切った。
いいじゃん、これでこのメンバー最後かもしれないのに。
っていっても人数は6人だし、このメンツでそんな酔っ払ってきゃーきゃーいうことはない……
と、思っていたときが俺にもありました。

「ふは、ふははは、やはり世は金とコネなのですこれ!」
「あはははははは金とコネー!」

まさかの笑い上戸×2。

「……空だな?空だろ?お前の手のグラスは空だな?……よし」

絡み酒×1。

「だからぁ……で、……なんだよ、そこは覚えなさい。……も、スチルが……で、魔法というものはぁ……」

管巻き×1(中途半端に理性が残っているためセルフピー音)。

「……」

え、意外な優秀賞がいる。顔色変わってない。水いる?あ、そう。

俺は幹事だし、そこそこ飲んでるけどセーブしてる。ふわふわするけど、どうもあんまり酔わないみたいだなこの身体。
でも酒癖の組み合わせのおかげか喧嘩とかはないんだ。ふふ、意外とこのメンバー喧嘩はしないよね。
あ、アエリアーナとダインはしたのかな。結局詳しいこと聞いてないんだよね……
今なら聞けるかな。

「ダイン。あのさ、第六の時にアエリアーナとなに話したの」

ダインが酒を置いて、ちょっと考えてる。

「…………聖女は、俺を許さないと」
「あ、あー……」
「お前を怪我させた、苦しめたから……それは絶対に消えないのだと……」
「あれ?俺?」
「お前だよ」

あれ、横でひとりで盛り上がってたアエリアーナがこっちきたぞ。
っおう!?肩にこつん、って顔乗っけてきたうおおおアエリアーナちゃんの顔なんだからやめろくださいもっとして!
結局外見は推しだから、旅の間お腹いっぱい見たなあ……

「……なんでも平気そうな顔しやがって……その顔に許してもらっているつもりでいるなよって」
「いや、俺は、」
「お前がよくても俺は絶対ヤダからな」

赤い顔して、ジワって涙溜めるアエリアーナ……くう、心臓に直撃する……

「ダイン、この先一生龍兎に謝り続けろ。それなら許す」

……ん?なにを言ってるんだ?

「ああ」

ダインもなに言ってるんだ。一生なんて無理だろ、だいたいこのあとお別れ……だろ。

……もう7つの災禍は討伐し終えた。
この後、吸魔なんかに応急処置頼むようなことにはならないはずだ。
負の感情をできるだけ溜めなければいいのだと、ダインももう分かっているんだし。
まあ、生きてれば、また会えるだろうけど……

「……俺は、別に……ただ、ずっとダインに同情してたし、す、好きだから……」
「ふっざけんな、ばーか」

ふんっとアエリアーナは言い捨ててクルッって背を向けちゃった。

「……だ、だからダインも、そこまで気にするなよ」
「……お前に聞きたいことがある」

ダインが、じっとこっち見てる。

「好きとは、どういうものだ」
「へ?あ?」
「俺は分からない。だから、お前に聞きたい」
「……うん、えーっと」

一緒にいたらうれしいし、目が合ったらうれしい、一言話してくれるだけでうれしいし、俺のことを話してくれるとぎゅんって……ああ、触ってもぎゅんってなるし、うれしいし、か、かわいいって……

ダインが首をひねった。

「……俺とは違う。これは好きじゃないのか」
「……え……」

ええー…………俺、もしかして振られた?

…………すごい……その。
…………うわ、思ったよりつら……

「バカ、ふざけんな、バカ言うな、お前が龍兎を好きじゃないわけないだろ」

……アエリアーナ、お口が悪いって。目も据わっちゃってるし……飲み過ぎ。
いいってば。

「いいか、お前が龍兎に触るときになに感じてるか言ってみろ」
「……、……苦しい」
「え?」

実はずっと嫌だったのか!?
二重にショックだぞ!?

「うれしいおいしいと言われるともっと苦しい。ずっと触っていたい、気持ちがいい、抱き締めていたい……美味しいと言われると……俺をぜんぶ食わせたくなる」
「……え?……?」

それって、なに?どういうこと?

ふん、って、アエリアーナの鼻息が俺の耳にかかった。

「こいつの髪、ずっと触ってるだろ、死ぬまでドレインされてもいいのか?」

こてん、ってダインが首をかしげた。

「リュートがしたいなら」

なにか問題が?みたいな顔して……
えっと、それって……

「好き通り越して愛だな」
「……は!?」
「ばかばかしい」

アエリアーナが立ち上がる……あれ?どこ行ったみんな!?
そこそこ広い部屋に、ぽつんって俺たちだけ。
あれ……どうしてこうなった?

「……愛とはなんだ」
「……はは」

またダインの中で分からないが増えたみたいだな……

……どうしよう。
さっきからボコボコに殴られてるみたいな気分。
俺、今人生の中で一番メンタルボコボコなの。
だから気晴らししたくて、打ち上げとか……
くそ松田、知ってるくせに。

――でもさ。
本当に、ダインが俺を……あ、愛してるとか、そうだったら。

「……あのさ、俺、お前のこと……死ぬまでドレインとか、する気はないけど」
「……そうか」

ん?あれ?なんか残念そうな……気のせいか。

「けど、俺を愛してるっていうなら……おれと、一生……死ぬまで、その時まで、一緒に……いてほしい」
「一緒にいよう」

あれ?食い気味に言われたぞ?
……くそ。
……だめだ、せっかく耐えてたのに。
俺がダインに抱きつく前に、髪が伸びてた。
ぐるぐる巻きにして、抱きついて、めちゃくちゃ泣いた。

「ぜ……たい、ぜったいだぞ、さいごまで一緒にっ」
「もちろんだ」

――これは松田が悪いんじゃない。
第七まで討伐して、気が緩んでどうでもいいことまで思い出したんだろう。
松田が転生トラックする数日前に、ある記事をネットで見たんだ。流し見程度だったのに、年齢が近かったから、ちょっと引っかかったんだろう。
情報化社会ってすごいな、すぐになんでも分かっちまう。

聞いたとき、思い出した。俺には弟はいなかったよ。
予想通り、俺は死ぬとき、苦しかった。
ひとりきりで、寒くてさびしくて。

だから、死ぬだなんだ、今は聞きたくない。
せっかくこうやって生き残ったのに。
また死ぬとき、ひとりだったらって、それが怖くて仕方ない。

ダインが、俺を愛してくれるならって、最悪だろ。人の弱みに付け込んで、一生縛るつもりか。
でも、ダインが、一緒にいようって、その一言だけで、俺はうれしかった。

苦しいほど、うれしいんだ。

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