5 / 10
声
しおりを挟む
二階のアトリエから龍太郎の『声』がする。
「舞子? 戻ってたのか」
「パパだ! パパ、私、一人で戻って来れたのよ」
「ホホ~、それは凄い。よく戻って来れたね。信子! オマエは迎えに行かなかったのか」
信子は龍太郎の『声』の方を見て、
「だってアナタが居るし」
「パパ、来て。顔が見たいの。ここに来て」
「そうだね。ちょっと待ってくれ。今、手が離せないんだ。もう少しで完成するんだ」
「・・・分った」
信子が階段の踊り場から舞子を見ている。
「? ママ、何を見てるの」
信子は作り笑顔で、
「大きく成ったわね」
「なに言ってるの。ママ、おかしいわよ」
「おかしい? だって久しぶりじゃない」
「久しぶりって、三ヶ月しか経っていないじゃない。ママ、私ちょっとトイレに行って来る」
「そう」
舞子はソファーを立ってトイレに。
トイレの窓から外を見た。
コバルト色の『能登の海』。
海原で「カラスとカモメ」が喧嘩している。
砂浜にはうち上げられた「壊れたヨット」が。
『まるで時間が途切れている様・・・』
舞子は家までの「道」を覗いてみた。
「・・・あら? 道が続いているわ。そんな・・・」
急いでトイレを出る。
信子が階段の踊り場から舞子を見ている。
「どうしたの? そんなに慌てて」
「え? あの・・・」
「何?」
「道が」
「道がどうかしたの?」
「道が・・・通じてるわよ」
部屋にチャイムの音が響く。
「キンコ~ン」
「あッ、ママ、お客様!」
階段を見ると信子は居ない。
玄関のインターホンから宅配人の声が聞こえる。
「吉村さ~ん! すいません。お荷物をお届けしました」
ドアーが開く音。
信子の声がする。
「ご苦労さま。サインで良いかしら?」
「ハイ。・・・有難うございます」
ドアーが閉まる音。
つづく
「舞子? 戻ってたのか」
「パパだ! パパ、私、一人で戻って来れたのよ」
「ホホ~、それは凄い。よく戻って来れたね。信子! オマエは迎えに行かなかったのか」
信子は龍太郎の『声』の方を見て、
「だってアナタが居るし」
「パパ、来て。顔が見たいの。ここに来て」
「そうだね。ちょっと待ってくれ。今、手が離せないんだ。もう少しで完成するんだ」
「・・・分った」
信子が階段の踊り場から舞子を見ている。
「? ママ、何を見てるの」
信子は作り笑顔で、
「大きく成ったわね」
「なに言ってるの。ママ、おかしいわよ」
「おかしい? だって久しぶりじゃない」
「久しぶりって、三ヶ月しか経っていないじゃない。ママ、私ちょっとトイレに行って来る」
「そう」
舞子はソファーを立ってトイレに。
トイレの窓から外を見た。
コバルト色の『能登の海』。
海原で「カラスとカモメ」が喧嘩している。
砂浜にはうち上げられた「壊れたヨット」が。
『まるで時間が途切れている様・・・』
舞子は家までの「道」を覗いてみた。
「・・・あら? 道が続いているわ。そんな・・・」
急いでトイレを出る。
信子が階段の踊り場から舞子を見ている。
「どうしたの? そんなに慌てて」
「え? あの・・・」
「何?」
「道が」
「道がどうかしたの?」
「道が・・・通じてるわよ」
部屋にチャイムの音が響く。
「キンコ~ン」
「あッ、ママ、お客様!」
階段を見ると信子は居ない。
玄関のインターホンから宅配人の声が聞こえる。
「吉村さ~ん! すいません。お荷物をお届けしました」
ドアーが開く音。
信子の声がする。
「ご苦労さま。サインで良いかしら?」
「ハイ。・・・有難うございます」
ドアーが閉まる音。
つづく
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる