統合失調症

具流次郎

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 二階のアトリエから龍太郎の『声』がする。

 「舞子? 戻ってたのか」
 「パパだ! パパ、私、一人で戻って来れたのよ」
 「ホホ~、それは凄い。よく戻って来れたね。信子! オマエは迎えに行かなかったのか」

信子は龍太郎の『声』の方を見て、

 「だってアナタが居るし」
 「パパ、来て。顔が見たいの。ここに来て」
 「そうだね。ちょっと待ってくれ。今、手が離せないんだ。もう少しで完成するんだ」
 「・・・分った」

信子が階段の踊り場から舞子を見ている。

 「? ママ、何を見てるの」

信子は作り笑顔で、

 「大きく成ったわね」
 「なに言ってるの。ママ、おかしいわよ」
 「おかしい? だって久しぶりじゃない」
 「久しぶりって、三ヶ月しか経っていないじゃない。ママ、私ちょっとトイレに行って来る」
 「そう」

舞子はソファーを立ってトイレに。
トイレの窓から外を見た。
コバルト色の『能登の海』。
海原で「カラスとカモメ」が喧嘩している。
砂浜にはうち上げられた「壊れたヨット」が。

 『まるで時間が途切れている様・・・』

舞子は家までの「道」を覗いてみた。

 「・・・あら? 道が続いているわ。そんな・・・」

急いでトイレを出る。

信子が階段の踊り場から舞子を見ている。

 「どうしたの? そんなに慌てて」
 「え? あの・・・」
 「何?」
 「道が」
 「道がどうかしたの?」
 「道が・・・通じてるわよ」

部屋にチャイムの音が響く。

 「キンコ~ン」
 「あッ、ママ、お客様!」

階段を見ると信子は居ない。
玄関のインターホンから宅配人の声が聞こえる。

 「吉村さ~ん! すいません。お荷物をお届けしました」

ドアーが開く音。
信子の声がする。

 「ご苦労さま。サインで良いかしら?」
 「ハイ。・・・有難うございます」

ドアーが閉まる音。
                つづく
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