やり直しの人生、今度こそ絶対に成り上がってやる(本編完結)

カイリ

文字の大きさ
19 / 59

3-15 スコット侯爵領

 オリヴァーが拉致されてから、約半刻。オリヴァーの祖父、エッカルトの元にその報は届いた。

「……何だと!? アレクシス様が?」

「申し訳ございません」

 バルナバスを始め、護衛の騎士三人も頭を下げる。そんなことをしている時間はないと、集まった五人は十分に分かっている。すぐに顔を上げて「捜索隊を組んで、すでに捜索を始めています」と告げる。

「おそらく、そう遠くないところに隠されていると思います。市場の出入り口はすぐに封鎖し、検問をしています」

「……うむ。儂も行くとしよう。殿下に何かあったら、首を差し出すだけではすむまい」

「本当に申し訳ございませんでした」

「いや……、オリヴァーも一緒だったし、お前たちに落ち度があったわけではなかろう」

 やれやれと頭を押さえながらエッカルトは立ち上がって執務室を出た。

 最初、アランことアレクシスがオリヴァーと共に祭りへ行きたいと言った時、エッカルトは反対した。王家よりその身を預かっている以上、危険な場所に連れて行くわけにはいかない。ましてや彼は王宮内で暗殺未遂があり、危険から遠ざけるために国王直々にアレクシスを任された。目立つ彼の髪の色を染め、素性を隠して、この城の中だけでは自由にさせていたのだが、年の近いオリヴァーに感化されたのか思い出作りに一度だけでもいいから参加させてほしいと頼み込まれ、エッカルトは渋々承諾してしまった。

 後悔してももう遅い。孫の様子も気になるし、初動もしっかりしていたから見つかるのは時間の問題だろう。

 それに居なくなったと発覚したのも早かった。二人の行動に目を配っていたが、人込みに紛れた瞬間、姿を見失ってしまった。その隙に何があったのかは想像に容易い。十歳前後の身なりのいい少年を、最初から狙っていたのだろう。きっとバルナバスたちの護衛の存在にも気付いていたに違いない。

 用意されていた馬に乗り、エッカルトは市街へと駆け出した。




 犯人たちを逆なですることなく、部屋で大人しくしていると捜索隊がやってきて二人は無事、保護された。

 その連絡を受けた祖父は息を切らしてやってきて、オリヴァーとアランを見比べて「無事でよかった」と安堵の息を漏らした。てっきりしこたま怒られるのかと思いきや、ぎゅっと抱きしめられただけで何も言われなかった。バルナバスや護衛の騎士からも謝罪されて、何だかとても居た堪れない気持ちになった。

 二人を誘拐したのは他の領地の賊だった。身なりがよく誘拐しやすそうなアランを狙ったところ、オリヴァーまで付いてきてしまって計画が頓挫したらしい。市場の出入り口も封鎖されて、身動きが取れなくなったところに捜索隊がやって来て、大した抵抗をすることなく二人を解放した。

 あっけにとられるような結末だったが、オリヴァーは自分がどのような立場なのかを自覚させられる事件となり、城から出る際は護衛達と距離を取らないよう徹した。

 そしてこの事件からアランとの親密度が更に増し、何をするにもアランが一緒だった。

感想 1

あなたにおすすめの小説

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話

鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。 この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。 俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。 我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。 そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

【完結】やらかし兄は勇者の腕の中で幸せに。それくらいがちょうど良いのです

鏑木 うりこ
BL
レンとリンは不幸な一生を終え、やっていたゲームと酷似した世界に降りてきた。楽しく幸せに暮らせる世界なのに魔王がいて平和を脅かしている。  聖剣を棍棒的な何かにしてしまった責任を取るためにレンとリンは勇者アランフィールドの一行に加わる。 勘違いしたり、やらかしたり、シチューを食べたりしながら、二人の中は深まって行く。   完結済み、全36話予定5万字程の話です。 お笑い封印失敗しました_:(´ཀ`」 ∠): ⚪︎王子様の勇者アランフィールド×鍛冶師のレン(兄) 後半少しだけ ⚪︎魔王ルーセウス×薬師のリン(弟) で、構成されております。  一気に書いたので誤字脱字があるかと思います。教えて頂けたら嬉しいです。(話数を明記して頂けると探す時凄く助かります!)なお、誤字に見えてわざと効果として使っている場所はそのままになります。 多忙時、お返事を返す事ができない事があります。コメント等全て読ませていただいておりますが、その辺りは申し訳ございません。 後、ないとは思いますがAI学習とかさせないでね!

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

騎士は魔石に跪く

叶崎みお
BL
森の中の小さな家でひとりぼっちで暮らしていたセオドアは、ある日全身傷だらけの男を拾う。ヒューゴと名乗った男は、魔女一族の村の唯一の男であり落ちこぼれの自分に優しく寄り添ってくれるようになった。ヒューゴを大事な存在だと思う気持ちを強くしていくセオドアだが、様々な理由から恋をするのに躊躇いがあり──一方ヒューゴもセオドアに言えない事情を抱えていた。 魔力にまつわる特殊体質騎士と力を失った青年が互いに存在を支えに前を向いていくお話です。 他サイト様でも投稿しています。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました