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4-2 王立学園
「アラン……、なのか?」
「はい」
髪色一つで人の印象がこんなにも変わるとは思ってなかった。いつも通りに返事をする彼に戸惑っていると、アランもそれに気づいたのか「ああ」と言って自分の髪を抓む。
「オリー兄様にはお話していませんでしたね」
アランがそう言ったところで、カーンと鐘の音が鳴る。入学式まで時間はあまりない。
「あっ、あの、式が終わった後でも構いませんか?」
「構わないが……、そもそもお前はまだ十一だろう」
「ええ。一応、この学園は満十歳を迎えた者ならば、誰でも入学可能だったはずですよ」
ただし、入試に受かった者、という決まりがある。アランはオリヴァーより二つ年下で今年で十一になるので、一応、王立学園の入学基準には達しているけれど、この学園に入学するのはかなり難しい。大体の貴族の子は十五でこの学校に入学する。
「ほら、急ぎましょう」
「……分かった」
喉に小骨が引っかかっているような違和感を覚えながら、オリヴァーはアランに手を引かれて講堂に向かった。
中に入ると既にほとんどの生徒が着席していて、オリヴァーは決められた席に着席する。アランとは入り口で別れてしまったので、彼がどのあたりに座っているのか分からない。父の不貞が原因だとするならば、私生児は後方に座らせられる。もしも上級貴族であるならば席は前方になる。
オリヴァーに素性を隠し続けていたことを考えると、それなりの理由があったのだろう。不義の子、だとするならば、祖母にしても祖父にしてもこっそりオリヴァーには説明してくれそうな気がする。アランの側に居続けたバルナバスもアランのことには詳しそうだった。
もしかしたら知らないのは自分だけだったのでは、と考え込んでしまい、また僅かに凹むこととなった。
「新入生代表、アレクシス・ロルフ・ヒルデグンデ・ヴォルアレス」
「はい」
オリヴァーよりも左からその声は聞こえた。バッと立ち上がる音が聞こえて視線をそちらにやると、それは先程までオリヴァーと会話をしていた「アラン」と紹介された男だった。
「……え、アレクシス殿下?」
「この学園に入学されたの?」
「新入生代表ってことは首席よね? まだ十一にもなっていなかったはず」
周囲がざわつく。こそこそと話す声がやたらとオリヴァーの耳に入った。壇上に立ち、その男は下にいるオリヴァーの存在に気付くと少しだけ微笑み、真っすぐに前を向いた。
アランが、第三王子のアレクシス?
前回の人生で彼と顔を合わせた回数はあまり多くなかった。幼い頃から彼は王宮を離れていた。学園に入学した話も聞かなかったし、突然、騎士に叙任されて彼の名が世に知れ渡った。ルドルフは自分よりも王位継承権の低いアレクシスのことは歯牙にもかけず、オリヴァーも気にしたことがなかった。
だから彼の顔をしっかりと見たのは隠れ家に突入されて計画が発覚したときだ。
風になびく銀色の髪の毛と深い森を映したような目。姿こそは幼いけれど、確かにそこにいるのは自分を捉えた男だった。
「…………ッ」
急に吐き気が込みあがってきて、オリヴァーは口元を押さえる。これまでそんな奴と仲良くしていたのかと思うと、腸が煮えくり返りそうだった。アレクシスは職務を全うしただけだろうが、それでもオリヴァーにとっては敵だった。その認識は多少の年月が経過しても簡単に消せるものではない。
それに祖父がアランを紹介したときに言っていたザセキノロンと言う土地は王妃の実家がある。彼が療養か何かで王妃の実家に戻っていたのだとするなら、ザセキノロンから来たのはあながち間違ってはいない。王子を秘匿していたのならば、オリヴァーに説明ができないのも納得だ。そしてルドルフが来た時の対応も。
誰が悪いのか、と言えばもちろん王太子を暗殺しようとしたオリヴァーだ。けれどそれを認めて、彼との仲をこれまで通りにしてやれるほど、オリヴァーは大人になりきれていなかった。
「はい」
髪色一つで人の印象がこんなにも変わるとは思ってなかった。いつも通りに返事をする彼に戸惑っていると、アランもそれに気づいたのか「ああ」と言って自分の髪を抓む。
「オリー兄様にはお話していませんでしたね」
アランがそう言ったところで、カーンと鐘の音が鳴る。入学式まで時間はあまりない。
「あっ、あの、式が終わった後でも構いませんか?」
「構わないが……、そもそもお前はまだ十一だろう」
「ええ。一応、この学園は満十歳を迎えた者ならば、誰でも入学可能だったはずですよ」
ただし、入試に受かった者、という決まりがある。アランはオリヴァーより二つ年下で今年で十一になるので、一応、王立学園の入学基準には達しているけれど、この学園に入学するのはかなり難しい。大体の貴族の子は十五でこの学校に入学する。
「ほら、急ぎましょう」
「……分かった」
喉に小骨が引っかかっているような違和感を覚えながら、オリヴァーはアランに手を引かれて講堂に向かった。
中に入ると既にほとんどの生徒が着席していて、オリヴァーは決められた席に着席する。アランとは入り口で別れてしまったので、彼がどのあたりに座っているのか分からない。父の不貞が原因だとするならば、私生児は後方に座らせられる。もしも上級貴族であるならば席は前方になる。
オリヴァーに素性を隠し続けていたことを考えると、それなりの理由があったのだろう。不義の子、だとするならば、祖母にしても祖父にしてもこっそりオリヴァーには説明してくれそうな気がする。アランの側に居続けたバルナバスもアランのことには詳しそうだった。
もしかしたら知らないのは自分だけだったのでは、と考え込んでしまい、また僅かに凹むこととなった。
「新入生代表、アレクシス・ロルフ・ヒルデグンデ・ヴォルアレス」
「はい」
オリヴァーよりも左からその声は聞こえた。バッと立ち上がる音が聞こえて視線をそちらにやると、それは先程までオリヴァーと会話をしていた「アラン」と紹介された男だった。
「……え、アレクシス殿下?」
「この学園に入学されたの?」
「新入生代表ってことは首席よね? まだ十一にもなっていなかったはず」
周囲がざわつく。こそこそと話す声がやたらとオリヴァーの耳に入った。壇上に立ち、その男は下にいるオリヴァーの存在に気付くと少しだけ微笑み、真っすぐに前を向いた。
アランが、第三王子のアレクシス?
前回の人生で彼と顔を合わせた回数はあまり多くなかった。幼い頃から彼は王宮を離れていた。学園に入学した話も聞かなかったし、突然、騎士に叙任されて彼の名が世に知れ渡った。ルドルフは自分よりも王位継承権の低いアレクシスのことは歯牙にもかけず、オリヴァーも気にしたことがなかった。
だから彼の顔をしっかりと見たのは隠れ家に突入されて計画が発覚したときだ。
風になびく銀色の髪の毛と深い森を映したような目。姿こそは幼いけれど、確かにそこにいるのは自分を捉えた男だった。
「…………ッ」
急に吐き気が込みあがってきて、オリヴァーは口元を押さえる。これまでそんな奴と仲良くしていたのかと思うと、腸が煮えくり返りそうだった。アレクシスは職務を全うしただけだろうが、それでもオリヴァーにとっては敵だった。その認識は多少の年月が経過しても簡単に消せるものではない。
それに祖父がアランを紹介したときに言っていたザセキノロンと言う土地は王妃の実家がある。彼が療養か何かで王妃の実家に戻っていたのだとするなら、ザセキノロンから来たのはあながち間違ってはいない。王子を秘匿していたのならば、オリヴァーに説明ができないのも納得だ。そしてルドルフが来た時の対応も。
誰が悪いのか、と言えばもちろん王太子を暗殺しようとしたオリヴァーだ。けれどそれを認めて、彼との仲をこれまで通りにしてやれるほど、オリヴァーは大人になりきれていなかった。
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