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7-5 オリヴァー・フォン・スコットという男
目を突き刺す眩しい光にオリヴァーは起床した。戦争という最悪の未来を変えるため、必死になって取った行動は良かったのか悪かったのか。やり直した人生で大切な人が増え、自分もまた色んな人に大切にされているのに気付けたのは良いことだった。
「あ、起きました?」
遠くから声が聞こえてオリヴァーは体を起こそうとして、全身に激痛が走る。一瞬、何が起こったのか分からなかったが、昨晩と言うか今朝と言うか気を失うまで好き勝手されれば、体も悲鳴を上げる。首だけしか向けれず睨みつけると、なぜかアレクシスは嬉しそうに笑う。
「目覚めのお茶を用意しますね」
せかせかと働いている姿に、あれは本当に王子なのか、と疑問を持ちながらもオリヴァーはその言葉に甘える。手際よく準備をしているところをぼんやり見つめていると、彼が上半身裸だったことにようやく気付く。まだ十六歳のくせにしっかりと鍛えられた体は予想した以上に筋肉がついていて、自分の体を軽々と抱き上げられたのも納得だった。胸元にある一際大きい傷跡に目が行くと、視線に気づいたアレクシスが「これ、気になります?」とそこを指さした。
「それ、致命傷じゃないのか」
「ええ、これは時間を戻すときに付いた傷ですね」
さらりとそう言われて、オリヴァーは目を見張った。
「太古の昔、魔法を使える人間が居たと言われています。時間の経過と共にその力はどんどんと失われたのですが、王族だけは心臓にその力を眠らせていました。魔法を発動させるには代償が必要になります。命を削るほどの大きな魔法は奇跡と呼べるほどの力を発揮するんです」
「そうやって時を戻したのか」
傷跡からどうやって奇跡を起こしたのか察してしまい、オリヴァーはアレクシスから目を逸らした。
「どうしてやり直した記憶を持つ人と持たない人がいるのかは不明ですが、俺が知っている限りではあなたとルドルフ兄様だけですね」
「そう言えば、ルドルフ殿下はどうなったんだ?」
思い出したように尋ねると、アレクシスは少し微笑み「お茶を飲みながら話しましょうか」と言って、ポッドに入ったお茶をカップに移した。
ゆっくりと体を起こしてもらい、オリヴァーはカップとソーサーを受け取る。
「ルドルフ兄様は一旦、王国へ送還されました。今は白の塔に幽閉されています」
白の塔、と言えば、大罪を犯した貴族が入る牢で、そこに入れば死ぬまで出ることは許されないという噂まである。なぜかオリヴァーは前回の人生では平民が入る牢に入れられて悲惨な扱いをされたが、白の塔も窓一つない小部屋になっているので刑が決まる前に発狂して死ぬ人も多い。
「オールディス伯爵は戦争を起こそうとしていただけでなく、国境付近でのテロを画策した罪もあり死罪を言い渡されるでしょう」
「テロ?」
「ええ、あの人たちは戦争を起こすきっかけとして、先にジュノ家が帝国に攻め入ったと偽証しようとしていたんですよ。その計画書がオリー兄様の見つけた証拠品の中から見つかりました」
そう言えばオールディス伯爵家の執務室で証拠を見つけた時に、王国の地図の他、まだ色々と書類が入っていた。
「おそらく、オールディス家は領地没収の上、爵位を返上させられ一族諸共処刑でしょうね」
何だか聞き覚えのある言葉にオリヴァーは背筋が凍る。オリヴァーの身勝手な行動で家族にまで迷惑をかけ、何とか処刑までは免れたけれど領地は没収されて、爵位も返上し平民に落とされてしまった。きっとその後に戦争が起きたというなら、一般兵として出兵させられたかもしれない。どうしても他人事のようには思えず、飲んでいる紅茶の味が分からなくなってきた。
「元々、戦争はルドルフ兄様とオールディス伯爵が企んだことです。帝国としては迷惑料として賠償を求めたいでしょうけど、自国の貴族も絡んでいることから何事もなかったように処理されるはずです。王国としても自国の王子が王位を簒奪するために他国を巻き込んで内乱を起こしたことなど隠したいわけですから、帝国への援助を倍に増やすことで今回のことは何事もなかったように片づけられるでしょう」
「どちらにしても、身内の恥、と言うわけか」
「ええ」
何とか戦争が始まるのを阻止できたようで安堵する。
「ああ、あと、オリー兄様にはエッカルト様から伝言がありまして……」
「お祖父様から?」
「事が片付いたら、すぐに領地へ戻るように、と」
えへへ、と笑うアレクシスに、オリヴァーは「今からか?」と尋ねる。
「一応、オリー兄様の仕事は終わったことになりますので、そうなりますかね」
「スコット領までどれぐらいあると思っているんだ?!」
首から下、全てに痛みが入っているこの状態で馬に乗るなんて不可能だ。揺れが多い馬車も同じで、とりあえず今はベッド以外から移動なんて考えられない。
「そこは俺も一緒に謝りに行きますから」
「お前、隙あらば俺について来ようとしていないか? 却下だ」
「えええ、良いんですかぁ?」
強く言えば退くかと思えば、少々自信を付けさせすぎてしまったようで、アレクシスは試すような目でオリヴァーを見る。
「もっと動けなくさせてもいいんですよ?」
「………………そうなったら二度と口きかない」
「わわ、ごめんなさい! 調子に乗りすぎました!」
がばっと抱き付いてきたアレクシスにまだまだ主導権を与えるわけにはいかない、と思うオリヴァーだった。
「あ、起きました?」
遠くから声が聞こえてオリヴァーは体を起こそうとして、全身に激痛が走る。一瞬、何が起こったのか分からなかったが、昨晩と言うか今朝と言うか気を失うまで好き勝手されれば、体も悲鳴を上げる。首だけしか向けれず睨みつけると、なぜかアレクシスは嬉しそうに笑う。
「目覚めのお茶を用意しますね」
せかせかと働いている姿に、あれは本当に王子なのか、と疑問を持ちながらもオリヴァーはその言葉に甘える。手際よく準備をしているところをぼんやり見つめていると、彼が上半身裸だったことにようやく気付く。まだ十六歳のくせにしっかりと鍛えられた体は予想した以上に筋肉がついていて、自分の体を軽々と抱き上げられたのも納得だった。胸元にある一際大きい傷跡に目が行くと、視線に気づいたアレクシスが「これ、気になります?」とそこを指さした。
「それ、致命傷じゃないのか」
「ええ、これは時間を戻すときに付いた傷ですね」
さらりとそう言われて、オリヴァーは目を見張った。
「太古の昔、魔法を使える人間が居たと言われています。時間の経過と共にその力はどんどんと失われたのですが、王族だけは心臓にその力を眠らせていました。魔法を発動させるには代償が必要になります。命を削るほどの大きな魔法は奇跡と呼べるほどの力を発揮するんです」
「そうやって時を戻したのか」
傷跡からどうやって奇跡を起こしたのか察してしまい、オリヴァーはアレクシスから目を逸らした。
「どうしてやり直した記憶を持つ人と持たない人がいるのかは不明ですが、俺が知っている限りではあなたとルドルフ兄様だけですね」
「そう言えば、ルドルフ殿下はどうなったんだ?」
思い出したように尋ねると、アレクシスは少し微笑み「お茶を飲みながら話しましょうか」と言って、ポッドに入ったお茶をカップに移した。
ゆっくりと体を起こしてもらい、オリヴァーはカップとソーサーを受け取る。
「ルドルフ兄様は一旦、王国へ送還されました。今は白の塔に幽閉されています」
白の塔、と言えば、大罪を犯した貴族が入る牢で、そこに入れば死ぬまで出ることは許されないという噂まである。なぜかオリヴァーは前回の人生では平民が入る牢に入れられて悲惨な扱いをされたが、白の塔も窓一つない小部屋になっているので刑が決まる前に発狂して死ぬ人も多い。
「オールディス伯爵は戦争を起こそうとしていただけでなく、国境付近でのテロを画策した罪もあり死罪を言い渡されるでしょう」
「テロ?」
「ええ、あの人たちは戦争を起こすきっかけとして、先にジュノ家が帝国に攻め入ったと偽証しようとしていたんですよ。その計画書がオリー兄様の見つけた証拠品の中から見つかりました」
そう言えばオールディス伯爵家の執務室で証拠を見つけた時に、王国の地図の他、まだ色々と書類が入っていた。
「おそらく、オールディス家は領地没収の上、爵位を返上させられ一族諸共処刑でしょうね」
何だか聞き覚えのある言葉にオリヴァーは背筋が凍る。オリヴァーの身勝手な行動で家族にまで迷惑をかけ、何とか処刑までは免れたけれど領地は没収されて、爵位も返上し平民に落とされてしまった。きっとその後に戦争が起きたというなら、一般兵として出兵させられたかもしれない。どうしても他人事のようには思えず、飲んでいる紅茶の味が分からなくなってきた。
「元々、戦争はルドルフ兄様とオールディス伯爵が企んだことです。帝国としては迷惑料として賠償を求めたいでしょうけど、自国の貴族も絡んでいることから何事もなかったように処理されるはずです。王国としても自国の王子が王位を簒奪するために他国を巻き込んで内乱を起こしたことなど隠したいわけですから、帝国への援助を倍に増やすことで今回のことは何事もなかったように片づけられるでしょう」
「どちらにしても、身内の恥、と言うわけか」
「ええ」
何とか戦争が始まるのを阻止できたようで安堵する。
「ああ、あと、オリー兄様にはエッカルト様から伝言がありまして……」
「お祖父様から?」
「事が片付いたら、すぐに領地へ戻るように、と」
えへへ、と笑うアレクシスに、オリヴァーは「今からか?」と尋ねる。
「一応、オリー兄様の仕事は終わったことになりますので、そうなりますかね」
「スコット領までどれぐらいあると思っているんだ?!」
首から下、全てに痛みが入っているこの状態で馬に乗るなんて不可能だ。揺れが多い馬車も同じで、とりあえず今はベッド以外から移動なんて考えられない。
「そこは俺も一緒に謝りに行きますから」
「お前、隙あらば俺について来ようとしていないか? 却下だ」
「えええ、良いんですかぁ?」
強く言えば退くかと思えば、少々自信を付けさせすぎてしまったようで、アレクシスは試すような目でオリヴァーを見る。
「もっと動けなくさせてもいいんですよ?」
「………………そうなったら二度と口きかない」
「わわ、ごめんなさい! 調子に乗りすぎました!」
がばっと抱き付いてきたアレクシスにまだまだ主導権を与えるわけにはいかない、と思うオリヴァーだった。
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