やり直しの人生、今度こそ絶対に成り上がってやる(本編完結)

カイリ

文字の大きさ
54 / 59

7-5 オリヴァー・フォン・スコットという男

 目を突き刺す眩しい光にオリヴァーは起床した。戦争という最悪の未来を変えるため、必死になって取った行動は良かったのか悪かったのか。やり直した人生で大切な人が増え、自分もまた色んな人に大切にされているのに気付けたのは良いことだった。

「あ、起きました?」

 遠くから声が聞こえてオリヴァーは体を起こそうとして、全身に激痛が走る。一瞬、何が起こったのか分からなかったが、昨晩と言うか今朝と言うか気を失うまで好き勝手されれば、体も悲鳴を上げる。首だけしか向けれず睨みつけると、なぜかアレクシスは嬉しそうに笑う。

「目覚めのお茶を用意しますね」

 せかせかと働いている姿に、あれは本当に王子なのか、と疑問を持ちながらもオリヴァーはその言葉に甘える。手際よく準備をしているところをぼんやり見つめていると、彼が上半身裸だったことにようやく気付く。まだ十六歳のくせにしっかりと鍛えられた体は予想した以上に筋肉がついていて、自分の体を軽々と抱き上げられたのも納得だった。胸元にある一際大きい傷跡に目が行くと、視線に気づいたアレクシスが「これ、気になります?」とそこを指さした。

「それ、致命傷じゃないのか」

「ええ、これは時間を戻すときに付いた傷ですね」

 さらりとそう言われて、オリヴァーは目を見張った。

「太古の昔、魔法を使える人間が居たと言われています。時間の経過と共にその力はどんどんと失われたのですが、王族だけは心臓にその力を眠らせていました。魔法を発動させるには代償が必要になります。命を削るほどの大きな魔法は奇跡と呼べるほどの力を発揮するんです」

「そうやって時を戻したのか」

 傷跡からどうやって奇跡を起こしたのか察してしまい、オリヴァーはアレクシスから目を逸らした。

「どうしてやり直した記憶を持つ人と持たない人がいるのかは不明ですが、俺が知っている限りではあなたとルドルフ兄様だけですね」

「そう言えば、ルドルフ殿下はどうなったんだ?」

 思い出したように尋ねると、アレクシスは少し微笑み「お茶を飲みながら話しましょうか」と言って、ポッドに入ったお茶をカップに移した。

 ゆっくりと体を起こしてもらい、オリヴァーはカップとソーサーを受け取る。

「ルドルフ兄様は一旦、王国へ送還されました。今は白の塔に幽閉されています」

 白の塔、と言えば、大罪を犯した貴族が入る牢で、そこに入れば死ぬまで出ることは許されないという噂まである。なぜかオリヴァーは前回の人生では平民が入る牢に入れられて悲惨な扱いをされたが、白の塔も窓一つない小部屋になっているので刑が決まる前に発狂して死ぬ人も多い。

「オールディス伯爵は戦争を起こそうとしていただけでなく、国境付近でのテロを画策した罪もあり死罪を言い渡されるでしょう」

「テロ?」

「ええ、あの人たちは戦争を起こすきっかけとして、先にジュノ家が帝国に攻め入ったと偽証しようとしていたんですよ。その計画書がオリー兄様の見つけた証拠品の中から見つかりました」

 そう言えばオールディス伯爵家の執務室で証拠を見つけた時に、王国の地図の他、まだ色々と書類が入っていた。

「おそらく、オールディス家は領地没収の上、爵位を返上させられ一族諸共処刑でしょうね」

 何だか聞き覚えのある言葉にオリヴァーは背筋が凍る。オリヴァーの身勝手な行動で家族にまで迷惑をかけ、何とか処刑までは免れたけれど領地は没収されて、爵位も返上し平民に落とされてしまった。きっとその後に戦争が起きたというなら、一般兵として出兵させられたかもしれない。どうしても他人事のようには思えず、飲んでいる紅茶の味が分からなくなってきた。

「元々、戦争はルドルフ兄様とオールディス伯爵が企んだことです。帝国としては迷惑料として賠償を求めたいでしょうけど、自国の貴族も絡んでいることから何事もなかったように処理されるはずです。王国としても自国の王子が王位を簒奪するために他国を巻き込んで内乱を起こしたことなど隠したいわけですから、帝国への援助を倍に増やすことで今回のことは何事もなかったように片づけられるでしょう」

「どちらにしても、身内の恥、と言うわけか」

「ええ」

 何とか戦争が始まるのを阻止できたようで安堵する。

「ああ、あと、オリー兄様にはエッカルト様から伝言がありまして……」

「お祖父様から?」

「事が片付いたら、すぐに領地へ戻るように、と」

 えへへ、と笑うアレクシスに、オリヴァーは「今からか?」と尋ねる。

「一応、オリー兄様の仕事は終わったことになりますので、そうなりますかね」

「スコット領までどれぐらいあると思っているんだ?!」

 首から下、全てに痛みが入っているこの状態で馬に乗るなんて不可能だ。揺れが多い馬車も同じで、とりあえず今はベッド以外から移動なんて考えられない。

「そこは俺も一緒に謝りに行きますから」

「お前、隙あらば俺について来ようとしていないか? 却下だ」

「えええ、良いんですかぁ?」

 強く言えば退くかと思えば、少々自信を付けさせすぎてしまったようで、アレクシスは試すような目でオリヴァーを見る。

「もっと動けなくさせてもいいんですよ?」

「………………そうなったら二度と口きかない」

「わわ、ごめんなさい! 調子に乗りすぎました!」

 がばっと抱き付いてきたアレクシスにまだまだ主導権を与えるわけにはいかない、と思うオリヴァーだった。

感想 1

あなたにおすすめの小説

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話

鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。 この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。 俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。 我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。 そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

騎士は魔石に跪く

叶崎みお
BL
森の中の小さな家でひとりぼっちで暮らしていたセオドアは、ある日全身傷だらけの男を拾う。ヒューゴと名乗った男は、魔女一族の村の唯一の男であり落ちこぼれの自分に優しく寄り添ってくれるようになった。ヒューゴを大事な存在だと思う気持ちを強くしていくセオドアだが、様々な理由から恋をするのに躊躇いがあり──一方ヒューゴもセオドアに言えない事情を抱えていた。 魔力にまつわる特殊体質騎士と力を失った青年が互いに存在を支えに前を向いていくお話です。 他サイト様でも投稿しています。

【完結】やらかし兄は勇者の腕の中で幸せに。それくらいがちょうど良いのです

鏑木 うりこ
BL
レンとリンは不幸な一生を終え、やっていたゲームと酷似した世界に降りてきた。楽しく幸せに暮らせる世界なのに魔王がいて平和を脅かしている。  聖剣を棍棒的な何かにしてしまった責任を取るためにレンとリンは勇者アランフィールドの一行に加わる。 勘違いしたり、やらかしたり、シチューを食べたりしながら、二人の中は深まって行く。   完結済み、全36話予定5万字程の話です。 お笑い封印失敗しました_:(´ཀ`」 ∠): ⚪︎王子様の勇者アランフィールド×鍛冶師のレン(兄) 後半少しだけ ⚪︎魔王ルーセウス×薬師のリン(弟) で、構成されております。  一気に書いたので誤字脱字があるかと思います。教えて頂けたら嬉しいです。(話数を明記して頂けると探す時凄く助かります!)なお、誤字に見えてわざと効果として使っている場所はそのままになります。 多忙時、お返事を返す事ができない事があります。コメント等全て読ませていただいておりますが、その辺りは申し訳ございません。 後、ないとは思いますがAI学習とかさせないでね!

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました