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1章 出会いのクッキー

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一歩足を踏み入れると、外観同様、お洒落な内装が目に飛び込んでくる。

ひときわ目につくのは、神戸ポートタワーやホテルオークラ神戸など、神戸の象徴的なスポットであるメリケンパークが描かれている焼き菓子のパッケージ。神戸ならではのデザインに、お土産に人気なんだと真司が話していたことを思い出す。もちろん、ただ見た目が良いだけでなく、味も抜群においしいところが長く愛されている理由の一つだろうが。

久志はひとまずぐるりと店内を一巡すると、今度は煌びやかなケーキがずらりと並ぶショーケースの前に立った。トゥーストゥースは焼き菓子ももちろんおいしいのだが、タルトやケーキといった生菓子も絶品なのである。

(うわ、このケーキも食べたいけど、あっちもいいな……)

定番のケーキに加え、フルーツなど旬の素材を使った期間限定のケーキは、どれも食べるのが惜しくなるほど見た目も洒落たものばかり。

食べなければいけない自作のスイーツがあるにも関わらず、見ているとやはり食べたくなるのがスイーツ男子の性。久志は顎に手を当てて「う~ん」と唸りながら、どれを持ち帰ろうかと真剣に悩んでいた。

「すみませんが、ここのショーケースに並んでいるケーキをすべて1個ずつ」

と、そのとき、どこかで聞いたことのあるやや高めの声が耳に入ってきた。久志はケーキを大人買いだなんて、どんな金持ち野郎だと思って、ちらりと隣に視線をやった。そこで、息をするのも忘れて動きがぴたりと止まる。

「きゅ……!」

吸血鬼。そう言いかけた口を咄嗟に閉じて手で抑える。そこにいたのは、昨夜、北野の洋館で出会った金髪イケメンだった。

相手も、そんな久志の様子に気づいたのか、ふとこちらを向いた。澄んだ薄茶色の瞳と目がばちりと合い、気まずい表情を浮かべた久志。すると、相手は美麗な笑みを携えて、首を少し傾けた。

「なんだ、ショーケースの前で長時間悩んでる邪魔な客がいるかと思ったら君だったのか」
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