5 / 12
第5話
しおりを挟む
地図を探すと決めた日の夜、遥斗とリセリアの2人は厨房の片隅で短く計画を練った。
彼女が事前に得た情報では、王宮の書庫が貴族たちの部屋近くにあるということだった。そこならば地図があるかもしれないとのことだった。
「書庫には警備がいると思う、でも夜の交代時間を狙えば隙ができるかもしれない。万が一見つかったら、私が注意を引くから、君は地図を探して」
リセリアが毅然とした口調で告げた。
遥斗は心配そうに眉をひそめたが、すぐに頷いた。
「わかった」
そしてさらが更けた時、二人は厨房を抜け出し、足音を立てないように細心の注意をはらいながら書庫へ向けて出発をした。暗い廊下を進む中、遥斗の耳に遠くから衛兵の足音が微かに聞こえてくる。
そんな中でもリセリアはいたって冷静だった。的確に身振り手振りで遥斗に対して合図を送り、衛兵に気づかれないように上手く目的地まで進んでいった。
やがて書庫にたどり着くと、重厚な扉の前で二人は一瞬息を整えた。リセリアが慎重に扉を開けると、埃っぽい空気が二人の顔に漂ってくる。中には暗闇に埋もれた古い書物がずらりと並び、長い年月を感じさせた。
「地図はどこだ……?」
遥斗が小声で呟く。
二人は書庫の奥へ進み、壁にそって並べられた巻物を調べ始めた。だが、なかなか目的の地図が見つからない。焦り始める遥斗の横で、リセリアが微かに呟いた。
「……気をつけて。誰かが来る気配を感じる」
二人は慌てて書棚の影に身を潜めた。やがて扉が開き、衛兵のひとりが書庫に入ってきた。彼は辺りを見回し、物音を立てずに書棚を巡回している。リセリアは息を潜め、遥斗の手を引いてさらに奥の棚へと静かに移動した。
幸運にも衛兵は二人に気づかず、数分後に部屋を出て行った。遥斗は冷や汗を拭い、再び地図を探し始める。
ようやく、棚の隅で古びた羊皮紙の巻物を見つけた遥斗がそれを広げると、そこには王宮の見取り図が描かれていた。
「これだ……!」
遥斗は思わず大きい声となってしまった。それに対しリセリアが咄嗟に、遥斗の口を手で押さえる。
「もう!ここで大きな声を出したら全部台無しでしょ!」
「す、すまん」
「急いでここを出ましょう、戻る前に誰かに見つかったら終わりよ」
二人は地図を手に慎重に書庫を抜け出し、再び廊下を進んで厨房へと戻った。厨房に戻ると、二人は安堵のため息を漏らした。
*
厨房に戻った二人は、なんとか無事に地図を手に入れたことに安堵した。遥斗は地図をリセリアと共に確認し、王宮内部の配置を把握し始めた。脱出経路や見張りが薄い場所、隠れられる場所など、次の計画を進めるための重要な情報がそこに詰まっていた。
「これで大体の道筋が立てられる。次は見張りの交代時間を確実に把握して、最短ルートを使ってここから脱出しましょう」
リセリアが冷静に告げると、遥斗も真剣な表情で頷いた。しかしその時、二人の安堵を打ち破るように、突然厨房のドアが勢いよく開かれた。そこには怒りの表情を浮かべた衛兵が立っており、部屋の中を鋭く見渡していた。
「今、誰かが書庫に忍び込んだという通報があった。この厨房の奴隷たち、全員集まれ!」
驚いた奴隷たちが慌てて並び始める中、遥斗とリセリアも緊張を隠せずにその列に加わった。衛兵は一人ずつじろじろと睨みつけ、少しでも怪しい動きを見せれば容赦なく取り押さえられる雰囲気だった。
「どうする?見つかったら確実に拷問されるわ」
リセリアが小声で囁くと、遥斗は冷静を装いながらも心臓が高鳴るのを感じていた。既に書庫から地図を持ち出している。今身体検査をされたら、地図が見つかりどうやっても言い逃れできるような状態ではない。
衛兵が二人の方に近づいてくる。その瞬間、リセリアが急に前に出て、わざと手を滑らせて足元の鍋を転がした。
ガッシャーン
と大きな音が鳴り響く。
「す、すみません……!手元が滑ってしまって……!」
衛兵の視線が鍋に一瞬釘付けになった。その隙をついて、遥斗は持っていた地図を背後の隙間に素早く押し込んだ。
「しっかりしろ!気をつけるんだ!次にこんなことがあったらただではすまさん!」
衛兵が怒鳴りつけると、リセリアは小さく頭を下げて謝罪し、何とかその場をやり過ごした。衛兵が他の奴隷たちに目を向けたのを確認し、遥斗とリセリアは安堵の息を漏らしながら再び厨房の片隅へと戻った。
「危なかったわね。今度は慎重にいかないと……」
リセリアが小声で言うと、遥斗も同意するように頷いた。
「だが、これで脱出の準備は整った。あとは実行に移すだけだ」
二人はお互いを見つめ、密かな決意を交わした。彼らの心には、新たな希望が芽生えていた。
彼女が事前に得た情報では、王宮の書庫が貴族たちの部屋近くにあるということだった。そこならば地図があるかもしれないとのことだった。
「書庫には警備がいると思う、でも夜の交代時間を狙えば隙ができるかもしれない。万が一見つかったら、私が注意を引くから、君は地図を探して」
リセリアが毅然とした口調で告げた。
遥斗は心配そうに眉をひそめたが、すぐに頷いた。
「わかった」
そしてさらが更けた時、二人は厨房を抜け出し、足音を立てないように細心の注意をはらいながら書庫へ向けて出発をした。暗い廊下を進む中、遥斗の耳に遠くから衛兵の足音が微かに聞こえてくる。
そんな中でもリセリアはいたって冷静だった。的確に身振り手振りで遥斗に対して合図を送り、衛兵に気づかれないように上手く目的地まで進んでいった。
やがて書庫にたどり着くと、重厚な扉の前で二人は一瞬息を整えた。リセリアが慎重に扉を開けると、埃っぽい空気が二人の顔に漂ってくる。中には暗闇に埋もれた古い書物がずらりと並び、長い年月を感じさせた。
「地図はどこだ……?」
遥斗が小声で呟く。
二人は書庫の奥へ進み、壁にそって並べられた巻物を調べ始めた。だが、なかなか目的の地図が見つからない。焦り始める遥斗の横で、リセリアが微かに呟いた。
「……気をつけて。誰かが来る気配を感じる」
二人は慌てて書棚の影に身を潜めた。やがて扉が開き、衛兵のひとりが書庫に入ってきた。彼は辺りを見回し、物音を立てずに書棚を巡回している。リセリアは息を潜め、遥斗の手を引いてさらに奥の棚へと静かに移動した。
幸運にも衛兵は二人に気づかず、数分後に部屋を出て行った。遥斗は冷や汗を拭い、再び地図を探し始める。
ようやく、棚の隅で古びた羊皮紙の巻物を見つけた遥斗がそれを広げると、そこには王宮の見取り図が描かれていた。
「これだ……!」
遥斗は思わず大きい声となってしまった。それに対しリセリアが咄嗟に、遥斗の口を手で押さえる。
「もう!ここで大きな声を出したら全部台無しでしょ!」
「す、すまん」
「急いでここを出ましょう、戻る前に誰かに見つかったら終わりよ」
二人は地図を手に慎重に書庫を抜け出し、再び廊下を進んで厨房へと戻った。厨房に戻ると、二人は安堵のため息を漏らした。
*
厨房に戻った二人は、なんとか無事に地図を手に入れたことに安堵した。遥斗は地図をリセリアと共に確認し、王宮内部の配置を把握し始めた。脱出経路や見張りが薄い場所、隠れられる場所など、次の計画を進めるための重要な情報がそこに詰まっていた。
「これで大体の道筋が立てられる。次は見張りの交代時間を確実に把握して、最短ルートを使ってここから脱出しましょう」
リセリアが冷静に告げると、遥斗も真剣な表情で頷いた。しかしその時、二人の安堵を打ち破るように、突然厨房のドアが勢いよく開かれた。そこには怒りの表情を浮かべた衛兵が立っており、部屋の中を鋭く見渡していた。
「今、誰かが書庫に忍び込んだという通報があった。この厨房の奴隷たち、全員集まれ!」
驚いた奴隷たちが慌てて並び始める中、遥斗とリセリアも緊張を隠せずにその列に加わった。衛兵は一人ずつじろじろと睨みつけ、少しでも怪しい動きを見せれば容赦なく取り押さえられる雰囲気だった。
「どうする?見つかったら確実に拷問されるわ」
リセリアが小声で囁くと、遥斗は冷静を装いながらも心臓が高鳴るのを感じていた。既に書庫から地図を持ち出している。今身体検査をされたら、地図が見つかりどうやっても言い逃れできるような状態ではない。
衛兵が二人の方に近づいてくる。その瞬間、リセリアが急に前に出て、わざと手を滑らせて足元の鍋を転がした。
ガッシャーン
と大きな音が鳴り響く。
「す、すみません……!手元が滑ってしまって……!」
衛兵の視線が鍋に一瞬釘付けになった。その隙をついて、遥斗は持っていた地図を背後の隙間に素早く押し込んだ。
「しっかりしろ!気をつけるんだ!次にこんなことがあったらただではすまさん!」
衛兵が怒鳴りつけると、リセリアは小さく頭を下げて謝罪し、何とかその場をやり過ごした。衛兵が他の奴隷たちに目を向けたのを確認し、遥斗とリセリアは安堵の息を漏らしながら再び厨房の片隅へと戻った。
「危なかったわね。今度は慎重にいかないと……」
リセリアが小声で言うと、遥斗も同意するように頷いた。
「だが、これで脱出の準備は整った。あとは実行に移すだけだ」
二人はお互いを見つめ、密かな決意を交わした。彼らの心には、新たな希望が芽生えていた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート
みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。
唯一の武器は、腰につけた工具袋——
…って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!?
戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。
土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!?
「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」
今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY!
建築×育児×チート×ギャル
“腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる!
腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる