【第2章完】過労死した俺、今度は異世界で影の力を駆使して死なない程度に頑張ります。

疾風

文字の大きさ
32 / 34
第3章 過労死した俺、調査する

第32話

しおりを挟む
 光が差し込む中、悠斗は冷や汗を拭い、ゆっくりと息を整えた。幻影の世界が崩れ去った今、周囲の景色が少しずつ現実に戻り始めているのを感じる。頭の中でリリアやリリーナのことが浮かび、再び二人のもとへ駆け出した。

「リリア!リリーナ!」

 悠斗が呼びかけながら進むと、木々の影の奥からリリアとリリーナの姿が見えた。二人も幻影の霧に飲み込まれていたようで、リリーナは戸惑いながら悠斗を見つめ、リリアも慎重にこちらをうかがっている。

「2人とも、大丈夫?」

「ええ、何とか抜け出せたわ。そっちこそ大丈夫?」

 悠斗は頷きながら二人の無事を確認し、ほっと安堵の息をついた。

「ようやく幻影から解放されたみたいだな。でも、影の一族は手強い……あの術には少し心が折れそうだった」

「私たちも何とか乗り越えられたわ」

リリアも微笑みながら、薄暗い森の中で力強く頷く。リリーナはその隣で、静かに精霊たちに語りかけながら再度周囲を確認していた。

「まだ、どこかで影の一族の残党が監視しているかもしれない。気を抜かずに進みましょう」

 *

 三人はさらに森の奥へ進み、やがて古びた石柱が立ち並ぶ広場にたどり着いた。そこには一際大きな影の結界が張られており、森の中でも異質な存在感を放っていた。リリアが影の力を注ぎ込みながら、慎重に結界の中心へと近づく。

「ここが影の一族の隠れ家の一部ね。結界を解けば中に入れるはず」

「なんか、ただの廃墟とは思えないな。廃墟で誰もいないのかと思ったら襲撃にあったし、本当にどうなっているのやら」

 悠斗が周囲を見渡しながら嘆くように言う。

「本当にこの奥で何かが待ち受けているなら、油断は禁物ね」

 リリーナも頷き、再び風の精霊に呼びかけて周囲の警戒を強める。



 リリアが結界を解除しようと影の力を集中させた瞬間、結界が突然震え、黒い影が溢れ出して三人に向かって流れ込んできた。悠斗はすかさず影を拳に纏わせ、リリアとリリーナを守るように構える。

「来るぞ、気をつけろ!」

 しかし、その黒い影が悠斗に触れる前に突如形を変え、無数の黒い蝶が舞い始めた。蝶は三人の周りを取り囲むように舞い、森の奥から低く囁くような声が聞こえてくる。

「我が力に触れようとは、よほどの覚悟があると見える……」

 声と共に、黒い蝶が一つに集まり、目の前に巨大な影の像が現れた。悠斗たちは息を呑み、影の像の圧力に一歩も引かずに立ち向かう覚悟を固めた。

「貴様らは何者だ?ここは影の一族がかつて力を蓄えた場所。容易に踏み込めるものではない」

 悠斗は冷静を装いながらも、心の中で緊張が高まっていた。しかし、リリアが毅然とした表情で前に出る。

「私たちは影の一族について調べに来たの。影の力が王国に及ぼす悪影響を止めるためにね」

 影の像がその言葉を受け、無言のまま三人を睨みつけた。やがて像は消え、森の奥へと消えていくかのように影が溶け込んでいった。

「行った……か?」

リリーナが警戒しつつ尋ねると、悠斗も安堵の息を漏らした。

「今のは一体に何?」

 三人は再び足を踏み入れ、影の像が消えた先の暗い道を進んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...