【完結】貰い屋さん 【全13話】

なつ

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夫婦の話③

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「お店の名前はありません。ですが人々からはこう呼ばれています。『貰い屋さん』と。」

藁にも縋る思いで願い続けその思いは貰い屋さんに届いた。まるでどこかの本の話みたいな展開。世の中そんなに上手くいかない事ばかりで余計に夢だな。と実感してしまう。でも少年を見ていると夢じゃないと信じたくなるのも事実で彼はどうせ夢なら自分が思った通りにと。少年に願う。

「本当に貰い屋さんならばどうか…どうか妻の病気をもらってください…。幼いときに母から聞いたことがあります。何かを貰ってもらうには対価が必要だと。私の命でもなんでも捧げます。妻が居ない世界など私は存在したくありません。私の代わりに妻が生きてくれるなら私はそれで満足なのです。どうか…お願いします。」

泣き崩れ懇願する。全て知っていたかのように余裕な少年は話し出す。

「難病持ちの奥さんですね?」

「はい。もう寝た切り状態で、余命も近づいていて…。」

「そうですか…。では、少し例え話をしましょうか。」

「例え話…?」

「そうです。例え話です。考えてみてください。立場が逆になった時のことを。貴方がもう話も出来ない状態で奥さんが貴方の代わりに命を捧げると言っています。貴方はどうしますか?」

「どうするも何も耐えられないし、そんな事をさせません。妻はもういないのに生き延びた所で私に生きる目的は無いのに。」

「そんなことをさせないと言っても貴方は昏睡状態。止めようがありません。目覚めたらもう奥さんはいないのです。」

「想像するだけで絶望してしまいます…。」

そう少年はお客様に伝えたかった。知らない間に話を進められ目覚めたら全て話が終わっている絶望を…。

「貴方は今その絶望を奥さんにさせようとしています。貴方の代わりに生き延びることが本当に奥さんの望みでしょうか?それをよく考えてみてください。」

頭をかかえどうすればいいんだと言わんばかりに震えている。彼の中では妻の命、健康が最優先。彼一人では決められない。

「私一人ではもう何も考えられません…。」

何事にも心の中で思ったことを口に出すという行為は大切で、実際に言わないとわからない事が沢山ある。その言葉を聞き少年は提案した。

「じゃあ、奥さんに直接どうすればいいかを尋ねたらいいと思います。どうしますか?」

「尋ねるもなにも妻は昏睡状態で…」

彼は思った。そうこの場所は夢なのか現実なのかもわかっていない。でもここは貰い屋さん。もし妻と話しが出来るなら話したい。彼は必死に頼んだ。

「もし、叶うなら…実際に妻に会うことが出来るならっ妻に会いたい。会って話をしたい。妻に会わせてくだ…さ…い。」

少年はその様子を見て不気味に笑う。

「貴方のその欲。妻に会いたいと必死に思う気持ち…それを待っていました!ここは願えば全て現実にっ!さぁ行きましょう。奥さんの夢の中へと!」

その瞬間今までいた場所が渦を巻くように空間が歪みはじめ明らかにさっきいた場所とは異なる場所に移動した。そして彼は見つけた。ポツンと立っていた妻を…
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