【完結】貰い屋さん 【全13話】

なつ

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少女の話③

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少女は黙り込んでしまった。とても悲しそうに。少年はまた優しく話し出す。

「もう自分は身を投げ出したから今更貰い屋なんて。なんでもっと早く…。そう考えましたね。頭のいい人は嫌いじゃありません。でもさっき言いましたでしょ?死んだわけじゃないと。」

「でも私は死にたいだけなんです。楽になりたいだけなんです。叶うなら痛みを感じずに…」

目が覚めると落ちている自分に戻るのだと少女は考えている。今はそれだけが怖い。時間は元に戻らない。このまま静かに眠りたい。それだけが望みだった。でも貰い屋さんは全く逆の提案をする。

「もう少し生きたいとは思いませんか?もちろん今の状態のままではなく静かで幸せな生活が待っているとしたら生きたいと思いますか?」

何を言ってるのと言わんばかりに困惑する少女。困惑しながらも少し笑い口を開く。

「そんな生活が出来るなら私は喜んで生きたいと言えます。でも現実はそう甘くない。そんなに簡単に解決しない問題ばかりでどうにかしようという気力も無くなってしまいました。」

「命を貰うとしても、対等な対価はありません。それだけ命という存在は大きいのです。寿命を貰ってもいいですが貰い屋さんとしてはもっと欲しいものがあるのです。」

いきなり話題がガラリと変わり遠回しに話す貰い屋さん。

「何が言いたいんですか?私にまだ生きろと?命の対価なんていりません。私が望むのはあの場所から逃げることです。」

「逃げるのは生きていても出来るでしょう?諦めてそれをしなかった。でも頭の回転の早さや飛び降りる勇気。素晴らしいです。貰い屋さんはそれを望みます。」

「わかりやすく説明してください。」

「これは失礼。その頭の良さと勇気。それをくれるなら貴方には幸せが与えられるでしょう。今暮らしてる場所からも離れて静かに過ごす事が出来ます。頭の回転といっても日常に支障が出るまでは貰いません。どうしますか?」

「急に言われても…。」

頭の良さと言われればわかりやすい。でも勇気を貰うという意味がわからなくて悩む少女。廃人にならないかとも様々の疑問や不安が浮かび上がる。

「大丈夫です。勇気を貰うということをそんなに難しく考えないでください。勇気を貰う。それは自殺しようとしたその勇気を無駄にさせてしまうということ。それだけです。」

「わかりました。これも何かの導きかもしれません。本当に叶うならお願いします。私は別に誰を恨んでいるわけでもありません。いじめだって周りから見れば可哀想に見えるかもしれませんが事を大きくして騒がれるのが嫌なんです。復讐なんて望みません。私はただお母さんと静かに暮らしたいだけですから。」

「了解しました。貴方の望みしっかりと聞かせていただきましたよ。ではさよならです。」

その言葉を聞くと同時に急に意識がぼんやりしてまだ伝えたいことがあるのか必死に意識を保とうとする少女をおいて貰い屋さんは話し出す。

「貴方は突風で屋上から落ちた…そのような結果…になる…で…しょう。貴方…の体…も無…事。なぜな…ら貴方が…大切…に育て…た……が…助け…てくれ…るか…ら」

必死に保とうとした意識はあっさりと気を失い、目が覚めるとそこには天井があった。
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