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皇帝陛下はなんでも力で解決してきた。子が宿っていると知れば侯爵令嬢でも殺してしまうかもしれない。ドレスでは隠しきれないほどのお腹になっていたこともあり出産は近いだろう。民が苦しんでいてもお構いなしに皇帝は豪遊している。今はそのおかげで一か月ほどの猶予があるだろう。その間に子供が生まれるかもしれない。オリビアたちはまずティナ・フィータム侯爵令嬢の保護を最優先とした。でないとあの2人に殺されてしまう。
だがそんな心配を他所にフレデリックとフィータム侯爵令嬢は呑気に談笑していた。
「父上がお帰りになるまでに子を産み地位を安定させよう。父上の言葉がなければあの女と離縁できない。それまで我慢してくれ。もう少しの辛抱だ。愛しい君に俺と同じ権限を授けよう…。皇宮で安静にするといい。」
「オリビア様には悪いことをしてしまいましたわ。皇宮で住めるのは大変光栄な提案ですがオリビア様に会ってしまったらなんと言われてしまうか…」
「ティナは優しいね。家だけ見れば圧倒的に君の方が上なんだ。堂々としていればいいよ。」
「フレデリック様…」
夜会が終わりイチャイチャを見せびらかすように二人は出て行った。
「ティナ様が一番心を射止めるのに必死でしたものね。」
「男受けはよろしいのですがあまりいい噂を聞いたことがありませんね。側妃になるかと思いきや皇后の座まで取るなんて…私も頑張っていたら略奪出来たでしょうか。」
「心配事も多いですけれど男爵家が継ぐよりよっぽどマシですわ。家柄は申し分ないですし…。」
そんな話があちらこちらで話されたという。
オリビアたちはまだ男爵家にいたが怪しまれないように帰る必要があった。フレデリックの事が好きなふりも時には必要だろう。それでも真実を明かすと誓った。オリビアは両親に別れを告げ皇宮に戻る。
「オリビア…これだけは理解してほしい。血だけで見れば私たちは家族ではないかもしれない。オリビアは本来ここには居ないはずの尊い血の持ち主だ。だが私たちの娘であることに変わりない。皇太子殿下の事は気にしなくていい。あんなわがままな皇太子に育ったことは悲しいが誰よりもオリビアを愛しているよ。気を付けて」
「お父様…お母様…。もちろんです。血のつながりがなくても私はお2人の娘です…」
下を向きながら自身の長い前髪を掴み、そばにあったナイフで前髪を切ったオリビア。そしてどこかスッキリした様子で「では行ってまいりますっ!」と大きく意気込んだ。
前髪を切るという大胆な行動に後ろで口をあけながら驚いているリアムとソフィアにオリビアは気が付かないほど目の前の敵に集中していた。
帝都へと戻っていく公爵家の馬車を見つめながら二人は話す。
「オリビアが元の元気な姿に戻って嬉しいな。…若い子たちに託してしまってほんと私たちは助けられてばかりだ。もっと早く動けていればオリビアも辛い思いをしなかったかもしれない。離縁を告げられなかったら瞳の色も戻らず入れ替わりが抹消されてたかもしれないと考えると恐ろしいよ。無力すぎてどんな顔をすればわからなかった。」
「貴方…。おかしなことができないよう皇帝陛下に圧力をかけられ嫉妬したほかの貴族の嫌がらせを受けてもなお、来る時の為に一文一句違わず伝えらえただけで十分よ。あまり自分を責めないで上げて。大丈夫。本当のオリビアは強いんだから。」
言葉を交わしながら愛しい我が子を見送った。
皇宮に戻るためにまた同じ馬車で3人は帝都に向かう。その帰宅途中で作戦会議と雑談が混じった話し合いが静かに行われている。昔はよく3人で会話をしたものだがオリビアにはその記憶がない。接点がないと思っているためかなぜかよそよそしい3人。リアムたちは距離感を掴めないでいた。
「オリビア様…。本当に前髪を切ってしまってよかったの…?」
令嬢同士は基本的にどんな相手にも様を付けるため気軽に話しても敬称はつけて話す。元々ソフィアとオリビアは王族派と貴族派といっても切っては切れない関係だったためお茶会で出会う事も少なくなかった。しかし形式的な挨拶を交えるだけで互いに距離を取っていたのだろう。ソフィア自身もオリビアとこうやって話せることが懐かしく思うほど疎遠になっていた。兄と弟しかいないソフィアはオリビアの事を妹のように可愛がっていた。男爵令嬢だからとか身分差別する様子はなく誰にでも等しい接し方はまさにレオナード公爵の考え方が子供たちに影響されている。
その様子にオリビアはとても2人に懐いていた。だがそんな過去も遠い昔のように感じる。
「はい。元々はこの地味な目を隠すために伸ばしていました。今はこの瞳の色だと強く見せびらかしていつか本当の目を見せた時に印象に残るようにとか考えていましたけれど一番の理由はやっぱり弱い自分との決別かもしれません。」
「そうなのね…気持ちを切り替えるには形からとも言うし…後悔してなくてなによりだわ。」
皇太子と結婚しているオリビアはソフィアたちより身分が上なのにも関わらず丁寧な話し方は抜けない様子。オリビアから親しく話したいと言い出したのにこのよそよそしさ。昔親しく話していたのを覚えていたのなら簡単に話せたはず。その距離感からレオナード姉弟はオリビアの記憶がまだ全て戻っていないかもという疑問が確信に変わった時だった。
思い出した記憶が多ければ多いほど混乱してしまう。心を守るためにも必要な時に必要なことだけを思い出すのが一番いいやり方だろう。2人は言葉を交わさずとも考える事は同じだった。オリビアに話を合わせ徐々に記憶を取り戻してもらうことにした。
皇族の秘密を明らかにすることが目的だが今まで搾取され続けたオリビアの心も2人にとっては大事だから。
だがそんな心配を他所にフレデリックとフィータム侯爵令嬢は呑気に談笑していた。
「父上がお帰りになるまでに子を産み地位を安定させよう。父上の言葉がなければあの女と離縁できない。それまで我慢してくれ。もう少しの辛抱だ。愛しい君に俺と同じ権限を授けよう…。皇宮で安静にするといい。」
「オリビア様には悪いことをしてしまいましたわ。皇宮で住めるのは大変光栄な提案ですがオリビア様に会ってしまったらなんと言われてしまうか…」
「ティナは優しいね。家だけ見れば圧倒的に君の方が上なんだ。堂々としていればいいよ。」
「フレデリック様…」
夜会が終わりイチャイチャを見せびらかすように二人は出て行った。
「ティナ様が一番心を射止めるのに必死でしたものね。」
「男受けはよろしいのですがあまりいい噂を聞いたことがありませんね。側妃になるかと思いきや皇后の座まで取るなんて…私も頑張っていたら略奪出来たでしょうか。」
「心配事も多いですけれど男爵家が継ぐよりよっぽどマシですわ。家柄は申し分ないですし…。」
そんな話があちらこちらで話されたという。
オリビアたちはまだ男爵家にいたが怪しまれないように帰る必要があった。フレデリックの事が好きなふりも時には必要だろう。それでも真実を明かすと誓った。オリビアは両親に別れを告げ皇宮に戻る。
「オリビア…これだけは理解してほしい。血だけで見れば私たちは家族ではないかもしれない。オリビアは本来ここには居ないはずの尊い血の持ち主だ。だが私たちの娘であることに変わりない。皇太子殿下の事は気にしなくていい。あんなわがままな皇太子に育ったことは悲しいが誰よりもオリビアを愛しているよ。気を付けて」
「お父様…お母様…。もちろんです。血のつながりがなくても私はお2人の娘です…」
下を向きながら自身の長い前髪を掴み、そばにあったナイフで前髪を切ったオリビア。そしてどこかスッキリした様子で「では行ってまいりますっ!」と大きく意気込んだ。
前髪を切るという大胆な行動に後ろで口をあけながら驚いているリアムとソフィアにオリビアは気が付かないほど目の前の敵に集中していた。
帝都へと戻っていく公爵家の馬車を見つめながら二人は話す。
「オリビアが元の元気な姿に戻って嬉しいな。…若い子たちに託してしまってほんと私たちは助けられてばかりだ。もっと早く動けていればオリビアも辛い思いをしなかったかもしれない。離縁を告げられなかったら瞳の色も戻らず入れ替わりが抹消されてたかもしれないと考えると恐ろしいよ。無力すぎてどんな顔をすればわからなかった。」
「貴方…。おかしなことができないよう皇帝陛下に圧力をかけられ嫉妬したほかの貴族の嫌がらせを受けてもなお、来る時の為に一文一句違わず伝えらえただけで十分よ。あまり自分を責めないで上げて。大丈夫。本当のオリビアは強いんだから。」
言葉を交わしながら愛しい我が子を見送った。
皇宮に戻るためにまた同じ馬車で3人は帝都に向かう。その帰宅途中で作戦会議と雑談が混じった話し合いが静かに行われている。昔はよく3人で会話をしたものだがオリビアにはその記憶がない。接点がないと思っているためかなぜかよそよそしい3人。リアムたちは距離感を掴めないでいた。
「オリビア様…。本当に前髪を切ってしまってよかったの…?」
令嬢同士は基本的にどんな相手にも様を付けるため気軽に話しても敬称はつけて話す。元々ソフィアとオリビアは王族派と貴族派といっても切っては切れない関係だったためお茶会で出会う事も少なくなかった。しかし形式的な挨拶を交えるだけで互いに距離を取っていたのだろう。ソフィア自身もオリビアとこうやって話せることが懐かしく思うほど疎遠になっていた。兄と弟しかいないソフィアはオリビアの事を妹のように可愛がっていた。男爵令嬢だからとか身分差別する様子はなく誰にでも等しい接し方はまさにレオナード公爵の考え方が子供たちに影響されている。
その様子にオリビアはとても2人に懐いていた。だがそんな過去も遠い昔のように感じる。
「はい。元々はこの地味な目を隠すために伸ばしていました。今はこの瞳の色だと強く見せびらかしていつか本当の目を見せた時に印象に残るようにとか考えていましたけれど一番の理由はやっぱり弱い自分との決別かもしれません。」
「そうなのね…気持ちを切り替えるには形からとも言うし…後悔してなくてなによりだわ。」
皇太子と結婚しているオリビアはソフィアたちより身分が上なのにも関わらず丁寧な話し方は抜けない様子。オリビアから親しく話したいと言い出したのにこのよそよそしさ。昔親しく話していたのを覚えていたのなら簡単に話せたはず。その距離感からレオナード姉弟はオリビアの記憶がまだ全て戻っていないかもという疑問が確信に変わった時だった。
思い出した記憶が多ければ多いほど混乱してしまう。心を守るためにも必要な時に必要なことだけを思い出すのが一番いいやり方だろう。2人は言葉を交わさずとも考える事は同じだった。オリビアに話を合わせ徐々に記憶を取り戻してもらうことにした。
皇族の秘密を明らかにすることが目的だが今まで搾取され続けたオリビアの心も2人にとっては大事だから。
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