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33.本気のやる気

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競技会まで後10日。
ここからは実際のステージ。森での練習だ。
森だといっても巨大な演習場に魔法で作られたもの。しかし、本線では本物の森を使うのだとか...。

高速移動を使い、木の枝を歩けるか歩けないかのテストをしてみたが、出来たのは40人中12人。

やはり木の上を走るには恐怖を捨てなければならない。少しでも落ちるかもなど思えば、集中力が切れ、落ちてしまう。自分は落ちないと思って挑まなければならない。

それがどれだけ難しいか...。
他人がどう言おうと落ちないと思えるのは自分自身。自分を信用するかどうか。自分で強く出来ると思わなければ意味ないのだ。

リンは高速移動が得意なこともあり、出来ると思ってやれば恐怖も感じなかった。

逆に苦手そうなシノは案の定、怖がって木の上にも上がれない。

他にも...
「こんなの出来ねーって!」
「こんなの絶対落ちるよ~」
「まぁ別に出来なくてもなんとかなるだろ、」
「カナリア様が何とかしてるでしょ…。」

などなどみんな色々なことを話している。

やる気になって貰う為にもカナが説得する。

カナリア「木の上を移動できるようになったら奇襲攻撃が可能になるの!私たちのクラスで出来る子は12人。まだ1年生だし、クラス分けは平等にされているから他のクラスも出来る子が同じぐらいだと思うの!だから当然出来る子が多い方がいいし、みんなにやっぱり出来るようになって欲しい。実践でも役に立つし!」

「でもなー。」
「まぁやってみる価値はあるんだと思うけど...やっぱ怖いよなー。」

どうしたらいいかカナとリン2人で迷っていると、レイル先生がきた。歩きながら唐突に話す先生。

レイル先生「なんだ??まだそんな甘い事を言えるのか?」

「うわ。レイル先生だ。」
「今の完全に聞かれた…な。」

レイル先生「カナリア・マーベラス。いや、カナリアが頑張ってみんなを引っ張って行こうと思ってやってくれているのに、肝心のお前らがその調子ならカナリアは頑張り損だな。」

「でも俺らカナリア様みたいに簡単に出来ませんって」

レイル先生「フッ。頑張ろうとは思ったのか?登って落ちたからできない。それはまだ許そう。なにもせず諦めるのは頑張ったとは言わない。頑張ろうとも思わないガキンチョが。やる気がないやつは今すぐ魔法師を諦めろ。」

クラス全員が怖いと思った。でも事実だと思う。学校に入学できたから魔法師まで直行だと思うのは間違いだ。サドワール学園内で競い合い、実力を上げるからみんな魔法師になって行くのに。

みんな「やる!」と言ってくれていたのにやっぱり本気になっているのは極一部。みんな本気にならないと負ける。

レイル先生「お前ら、知ってるとは思うが本戦に出て、自分の実力をみせ、認められたら推薦が来ることをしっているだろ?」

「え?」

クラスのみんながそう思った。

「そうなんですか?それって貴族だけじゃ。」

「一般生徒の勧誘はただの噂って誰か言ってなかったっけ。」

レイル先生「いいや。ごく普通の生徒というのは正しい表現ではないが、貴族関係無しに推薦はある。」

「まじでか!?」
「これは...やらなければ勿体なくない?」
「みんな今からでいいから本気になろう!」

と、みんなもう一度やる気になってくれた様子。

餌に釣られたようになったが、これはこれでみんな少しでも本気になっているのは事実だろう。
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