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66.フェイク

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戦いが始まった音がした。みんな当然そっちを見る。でもその戦いの音は近くてさっきのアラームで場所が特定されたとしてもアラームの音で感じた遠さと戦闘音で感じる音の近さに違和感がした。

リンは咄嗟に透視能力を発動する。痛みを和らげる魔法を使わず体が先に透視を発動しろと言っているように自然に見た。音が近かったために方向が特定でき、その瞬間リンは大きな声で叫ぶ。

リン「みんな周りに警戒して!!場所がバレてる!!」と。

リンは何かを見たんだと信じ何を見たかを聞くよりみんなちゃんと警戒態勢を取ってくれる行動に一瞬嬉しいと感じるリン。リンは最小限の情報を叫んだ。

リン「音の方角にフェイクで戦いの音を出している生徒発見。こちらを向いてた事からさっきのアラームで位置がバレていると考えて!」

その瞬間木の上から人が飛び降りてきた。狙いはリン。それを予想して警戒していたカナがフォローに入る。

敵の生徒「やっぱり透視能力者は厄介だ。一旦引くぞ」

その掛け声で風を起こし砂で目くらましした後、姿を消した。奇襲をかけていた生徒は4人。フェイク音を出していたのも含めて5人で攻撃を仕掛けてきた。

リンを集中狙いしてきたおかげで幸いダウンの生徒はいなかったが少し傷を負った生徒もいた。

今の5人はおそらく2校。来ている服の柄に火があった。その模様は胸あたりにあり、どのクラスかを判別するもの。リンたち1校は水の模様がある。そして3校はクローバー。すべて黒や灰色のような地味な色で、その模様は転移石の時にくじ引きで決めたもの。服自体に色を付けた試合もあったが赤と青では見つけやすさが全然違ったために色は統一のものになった。試合として成立させるための唯一の区別方法。

最初の段階では何校だとばれたくないのが普通。でも分かりやすく模様が見えるように襲ってきたことに違和感を感じるも今は傷を負った生徒だ。

回復班らが治療しながら場所を移動する。同じところにとどまっていてはまた攻撃されるかもしれないから。今、最悪の状況はさっきの音で3校に場所がばれ3校に襲われる状況はなんとしても避けたい。

ダウン者がいなかったからこそ知れた情報もある。それは2校はまとまって動いていないということ。音発生からそんなに時間も経っていないことから守りと攻めでクラスが分けられていると考えていい。

知れた情報もあるが可能性が増えてしまったこともある。音は確かに聞こえたし、2校か3校が南西にいるのは間違いないと思っていたが、さっきの戦闘でフェイクの可能性が出てきた。すべて鵜呑みにするわけにはいかない。

クラスで固まることでリーダーが誰かわからなくなるが位置がばれやすくなったり、戦闘面に関しては遅れをとる。完全に守りから戦闘が始まるからだ。

今回は少人数で攻めてきてくれたおかげで対応できたが10人で攻め込まれていたらどうだろうか。反省は試合が終わってもできる。今はとにかく相手クラスの戦い方、作戦を見極め対応していかないといけない。それをいかに活かすのかが今後大切になるだろう。
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