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5章 トワとアース

17.記憶

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「あれは3年前の事です。」

話は3年前に遡る…


親に恵まれ友達にも恵まれ私は幸せな生活を送っていた。私は一人っ子で寂しい時もあったけど私は幸せだった。記憶を思い出したのは15歳の秋。それはとても唐突で、寝て起きたらすべての記憶が戻っていた。アース様との記憶だけでなく転生を繰り返しそのたび死んでいたことも全部。死に方はそれぞれだったけど死ぬ瞬間の生々しい感覚も鮮明に残っていて一度に大量の記憶を思い出してしまった反動で今の自分が一体いつの私なのかわからなくなってしまった。

大量の記憶を抱えきれるわけもなく私は心が壊れた。病院でお世話になっていたものの転生や生まれ変わりの話をしても頭がおかしいと思われるだけ。いつの自分が何回目の転生なのか必死に一人で整理した。

整理していくなかで思い出した。心を失ってしまった出来事を…。

アース様の笑った顔が見たかった。それだけの理由で私はアース様の代わりに神様代理の話を持ち掛けアース様はそれを面白そうと言ってくれた。記憶を無くし、人間として生きているアース様を見るのが私の楽しみだった。アース様が笑ってくれるなら他はどうでもよかった。その時の私は単純にその様子を楽しんでみていた。

でもある日アース様が死んでしまう出来事があった。奇跡的に生還するかもしれない。でもわかってしまった。しんでしまう、と。ランダムに転生したからいつ死ぬかは周りの環境次第。死んでしまうと思ったその瞬間私は彼の死を回避させてしまった。彼を神の力で助けてしまった。アース様は神でも今は人間。肩入れはしてはいけない。私は無意識のうちに恋をしていたのだと自覚した。笑顔をみたい。それは好きな人の笑顔。

神の力を私は自分の欲の為に使ってしまった。心を失ってしまうのかここから追放されてしまうのか…結果は両方だった。記憶がなくなってもアース様は必死に私の為に沢山の事をしてくれた。のに自殺してしまって申し訳ない。

ずっと祈ってた。アース様もし見ているのなら私をその場所へ。記憶が戻っても今の人生が8回目なのか9回目なのかが曖昧でもし9回目だったなら死んだ瞬間に存在が消えるかもしれない。自殺するのは賭けだった。存在が消えることはあまり大したことではない。それ以上のものをもらったから未練はない。でもアース様に最後まで会えないのは嫌だ。3年間ずっと迷っていた。

でも記憶が戻ってから地上はとても居心地が悪かった。人の醜さを知っているから余計に人の善意を信じられない。私はここに居る価値はない。アース様に会えずに死んでもそれは私の運命なのだろう。私は全て受け入れる覚悟をした。でも死ぬ瞬間はとても苦しく感覚を思い出すだけで気持ち悪い。どの自殺もほぼ経験があって怖くてすぐにはできなかった。アース様との出来事は本当なのかと自分を疑ってしまう時期もあった。でもここに居たくないという気持ちも強かった。だから私は死を選んだ。

オーバードーズ。私は過剰摂取を選んだ。そしてずっと会いたかったアース様が目の間に居る。とても嬉しかった。転生回数は8回目。危ない賭けだったと思う。

転生するたびにここへ来ていたけど全て思い出した私はアース様がどんどん人間みたいな考え方になっているのは微笑ましい。

親不孝なことをしてしまった。けどごめんなさい。後悔はしていません。だってずっと会いたかった私の好きな人が目の前にいるのだから。
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