攫われた聖女~魔族って、本当に悪なの?~

月輪林檎

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可愛がられる聖女

媚薬作りと事故

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 クララは、媚薬を作る前に、アフディ草の葉を乾燥機に掛ける。
 乾燥させている間に、根っこをすり潰す。サラの手によって洗われており、土が混じる事はない。すり潰した根っこを沸騰したお湯に入れ、三十秒間そのままにし、すぐ濾過する。そうして出て来た濾液は、ピンク色に染まっている。
 ここに、疲労回復に使ったファッジ草を入れる。これは濾液が冷めてしまう前に入れないといけない。ファッジ草が入った濾液は、濃いピンクに染まっていく。その間、変色が止まるまで器を振り続ける。それ以上濃くならなくなった段階で、再び濾過する。
 出て来た濾液の色が透明になるまで、消毒薬を入れていく。この間、濾液を振り続けて、完全に透明になったかを確認し続ける。そうして透明になったところで、再び加熱し、三十分程濃縮した後、冷蔵庫に入れ急速に冷やす。

「ふぅ……」

 ここまで、集中力が必要だったので、クララは一息つく。ここからは、三十分程、冷蔵庫の中で様子を見る。その間が暇になるので、乾燥したアフディ草を軽く砕いて保存用の瓶に詰めていく。それだけでは、時間が余るので、アリエスと一緒にいつもの薬を作っていく。
 そして、三十分経った後、クララは媚薬を冷蔵庫から取りだして、状態を見る。瓶の中身は、透明な液体が入っていた。

「出来ましたか?」
「どうなんでしょう? でも、色は透明で合っているはずなので、出来ているとは思います」
「そうですか。念のため、鑑定しますか?」
「あ、お願いしま……」

 リリンに頼もうとした瞬間、クララは手を滑らせてしまい、媚薬の入った瓶を落としてしまい、テーブルにぶつけ割ってしまう。跳ねた媚薬がクララに掛ったのと同時に、リリンが動く。

「サーファ! アリエスを連れて部屋に戻りなさい! そこから出ないように!」
「はい!」

 リリンの命令に、一切の疑問を持たず、アリエスを抱えて薬室を出て、廊下を経由して自分の部屋へと入っていった。それと同じように、リリンもクララを連れて、クララの部屋に行き、クララの服を脱がしてからベッドに入れた。

「私は薬室の掃除をしてきます。その間、大人しくここにいてください。いいですね?」
「はい」

 リリンのあまりに早い対応にクララは、少し驚いて呆けていた。その状態のクララに背を向けて、リリンは薬室に戻る。
 薬室に入ったリリンは、思わず顔を顰める。

「この香り……どうやら成功のようですね。こんな形で確認したくはありませんでしたが」

 嗅ぎ覚えのある香りがして、リリンは、媚薬が成功していた事を知った。媚薬が溢れた場所を見ると、既に媚薬自体はほとんど消えていた。媚薬は、直接服用するのでは無く、少量を器に移して、揮発した成分で効果を発揮する。ただ直接服用しても効果は発揮し、肌に塗れば、その箇所の感覚が敏感になってしまう。。

「揮発した量が量ですし、これを外に流すのは、危険ですね。クララさんの部屋に流して、ある程度薄めてから換気しましょう」

 クララをリリンの部屋に移すため、素早くクララの部屋に移動する。クララへの影響を最低限にするために、すぐ扉を閉めた。

「クララさ……」

 部屋を移動して貰うためにクララに話しかけようとしたリリンだったが、その言葉は途中で止まった。
 ベッドに入っていたクララは、顔を紅潮させ、涙目でもぞもぞとしていたからだ。

(服を脱がすのが遅かったようですね。原液を被ってしまえば、これも仕方ないでしょう)

 リリンは、クララに近づいていく。近づくとクララの荒い息遣いが聞こえてくるようになる。

「大丈夫ですか?」

 リリンの問いに、クララは首を横に振る。

「リリンさんは、平気なんですか……?」

 荒い呼吸の中、クララはリリンに訊く。自分はこんな状態なのに、薬室を出入りしているリリンは何も影響を受けていないので、気になったのだ。

「私は、媚薬に対して完全な耐性がありますから」

 リリンは、サキュバスやインキュバス達の中でも珍しい媚薬への完全耐性を持っている。

「お一人で解消出来そうですか?」

 この問いにもクララは首を横に振った。人族領にいた時、身近にいた勇者達はそういう事をしていたのは、知っているが、具体的にどうすれば良いのかは、クララも分かっていなかった。

「では、そのまま耐えられそうですか?」

 そういう事で解消しなくても、時間が経てば媚薬の効果は抜けていく。だが、その分、抜けるまでの時間は掛かってしまう。
 これに関しては、クララは返事に困っていた。自分でもどうなのか分からなかったからだ。

「分かりました。少しお待ちください。私は、サーファ達と話してきます」

 クララは小さく頷く。リリンは安心させるように微笑んでから、自分の部屋に入る。その前に、自分の部屋とクララの部屋の空気が混ざらないように、風魔法で遮断し、自分が纏っているであろう媚薬の香りも、ここで完全に落としていく。そして、サーファの部屋に繋がる扉をノックする。

「サーファ、扉を開けずに聞いてください」
「はい」

 互いに少し聞きにくい状態だが、安全のためには仕方なかった。

「お二人は、変わりはありませんか?」
「はい。私もアリエスちゃんも異常なしです」
「そうですか。特にサーファは、鼻が良いので離れていても効果が出る可能性もあります。二、三日は、薬室とクララさんの部屋の前を通らないように」
「分かりました。クララちゃんは、大丈夫ですか?」
「さすがに、無事とはいきませんでした。取りあえず、こちらで解消させるつもりですが、原液を被ってもいますので、どのくらい掛かるか分かりません。もし気になるようでしたら、しばらく城下に降りていた方が良いかもしれません」

 リリンからは見えないが、サーファの顔は少し赤く染まっていた。それは、見えていないリリンにもバレバレだった。だからこそ、一度ここを離れた方が良いかもしれないと提案したのだ。
 そして、これに関してはサーファも異は唱えなかった。別の方法があるかもしれないとは考えているが、この分野は、サキュバスであるリリンに任せるのが一番だと分かっているからだ。

「わ、分かりました。アリエスちゃんもしばらくは来ない方が良いですよね?」
「そうですね。三日の休みとします。そちらは任せました」
「はい」

 アリエスをサーファに任せたリリンは、クララの部屋に戻り、そのまま薬室の扉を開く。薬室に籠もった空気をクララの部屋に通してから、風魔法を使って、少しずつ窓から外に流す。その空気も下ではなく、上に流していった。下手に城下に流れてしまっては、大惨事となってしまう。

「さて、強制的な換気はこのくらいで大丈夫でしょう」

 籠もっていた媚薬もほとんど抜けたので、後は窓を開けて自然な換気に任せる事にした。二日も開けておけば、空気も完全に入れ換えられるだろう。
 リリンは薬室とクララの部屋を繋ぐ扉を閉めて、部屋の窓も閉める。そして、クララの様子を見るため、ベッドに近づく。クララは変わらず、ちょっと苦しそうにしていた。
 リリンは、そんなクララに掛け布団を被せる。

「クララさんの能力で、解消は出来ませんか?」
「ま、魔力が上手く、使えないんです……」
「精神の昂ぶりに魔力に影響を及ぼしているのかもしれませんね。寧ろ、聖女の魔力のおかげで、多少抑え込められている可能性すらあります」
「うぅ……リリンさんのキスは……?」

 リリンの体液は眠り効果を持つ。クララは、それを使って眠らせる事は出来ないのかと考えたのだ。

「ここまで昂ぶられていると、私の体液も効果はないです。現状、今クララさんが感じている欲求を解消するしか、方法はありません。そのお手伝いを私がしますが、よろしいですか?」

 クララは、顔を真っ赤にしながら小さく頷いた。そんなクララに、リリンは優しくキスをする。

「それと、今後は媚薬の製造は禁止します。良いですね?」
「……はい」
「では」

 リリンは近くにあった布でクララの目を覆う。そして、自分もベッドに入り、クララを後ろから抱きしめる位置を取る。

「そのまま身を委ねてください。大丈夫です。絶対に痛い事はしませんから」

 リリンは、初めてクララにサキュバスとしての本領を発揮する。クララ自身は目にする事は出来なかったが、身体に教え込まれる事になった。
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