91 / 122
可愛がられる聖女
大量の服
しおりを挟む
翌日。アリエスが、一度クララの部屋にやってくる。
「ぶ、無事で良かったよ」
「うん。ごめんね。心配掛けて。明日からは、薬室にも復帰するから、今日はよろしくね」
「うん。何か優先して作った方が良いものってある?」
「取りあえず、火傷薬とかは後回しで、いつも通りのものを最優先にお願い。そっちは、結構常用するものもあるから」
「わ、分かった。頑張るね」
「ああ、うん。ところで、話は変わるんだけど」
このタイミングで、クララはちらっとリリンを見て確認する。視線を受けたリリンは縦に頷いた。
「実は、昨日からマーガレットさんとユーリーさんがお城に帰ってきているんだ」
「……マー……ユー……」
アリエスは、突然の報告に脳内処理が間に合わず、上手く声に出せていなかった。
「だから、薬室にもマーガレットさんやユーリーさんが来るかもしれないから、そのつもりでいて。そろそろ慣れないと、カタリナさんも来られないから」
「ア……ウン……ガンバル……」
若干涙目で、片言になりつつもアリエスは頷いた。
「うん。頑張ってアリエスなら出来るって信じてるから」
クララからこう言われて、アリエスは、少しだけやる気が出る。クララに信じて貰えるというのは、アリエスにとってそれほどまでに大きな事なのだ。
「じゃ、じゃあ、薬室にいるね」
「うん。時間になったら、ちゃんと帰ってね。残って作業を続けようとか考えないように」
「うん。分かってる」
アリエスは、クララに手を振って薬室に入っていった。
「では、今日も講義をしていきましょうか」
「はい!」
「クララちゃんは、勉強熱心だなぁ」
「あなたも見習いなさい。クララさんがどこかへ出掛ける際、ある程度の地形を把握しているのと把握していないのでは、大きな差があります」
「それは……分かりますけど……」
「けどじゃありません。要領は良いのですから、あなたも頑張りなさい」
「はい……」
若干落ち込み気味なサーファの手をクララが握る。
「一緒に頑張りましょう」
「うん。そうだね。クララちゃんのためにも頑張ろう!」
クララの前で元気に手を突き上げると、クララも真似して、手を突き上げる。互いに互いを鼓舞する二人を、リリンは内心微笑ましく見ていた。
そこからまた一時間程講義をして、休憩を挟み、また一時間講義をしてから、昼食を食べる。この時は、アリエスも一緒に昼食を食べた。
そうして昼食を済ませたクララは、サーファの膝の上で薬学書を読み始めた。その間に、リリンが部屋の掃除を始める。
いつもの和やかな時間が流れる。だが、その時間は長続きしなかった。その理由は簡単だ。毎度の如くクララの部屋の扉が勢いよく開かれたからだ。
「クララいる?」
入ってきたのは、ユーリーだった。その後から大きな荷物を持ったメイドが、四人も入ってきた。メイド達は荷物を置いて、すぐに出て行く。
「えっと……ユーリーさん?」
「うん。正解。良く覚えてました」
ユーリーは、無表情のままクララを撫でる。そして、そのクララを膝に乗せているサーファに視線を向けた。
「この子は?」
「クララさんの護衛をしているサーファです。昨日は、色々とあり、席を外していました」
リリンがサーファの紹介をする。それに合わせて、サーファもクララを椅子に乗せて立ち上がる。
「サーファ・フロズヴィトニルです」
サーファはそう言って頭を下げる。
「うん。分かった。よろしく」
ユーリーは、そう言いながらサーファの事をジロジロと見る。サーファは、少し恥ずかしそうにしていたが、それでも一歩も動かずに視線に耐えていた。
「胸、大きくて大変?」
「え? えっと、動くときとかは大変です。後、着られる服が減っちゃいます」
「そう。服の尻尾穴は、どんな感じ?」
「物によっては小さかったり、すぐに破れたりします。私は、色々と動き回る事が多いので、余計にそういう経験が多いです」
「なるほど」
ユーリーは、サーファの話を聞いて、それをメモしていった。
「分かった」
メモを終えたユーリーは、クララの方を見る。
「クララに服を持ってきた。プレゼント。全部今すぐ着て」
「うぇ!? い、今すぐですか!?」
「そう。今すぐ。数が多いから」
「は、はい!」
突然の事に戸惑いつつも、クララはメイド達が置いていった荷物の一つを開く。そこには、大量のワンピースが入っていた。様々な色。様々な柄。様々な形。全く一緒のワンピースは、一つも存在しなかった。
クララは、リリンに手伝って貰いながら服を着替えていく。最初に着た服は、今までの物と違い、腰にベルトを着けるような服だった。そのおかげでウエストが強調されるようになる。
「可愛い! いつもよりもちょっとだけ大人っぽいよ」
ユーリーの表情は動かないが、サーファはニコニコで褒める。
次に着た服は、肩が紐の黒いワンピースだった。さすがに露出が多くなるので、上にはシャツを着ている。
「スカートに白い刺繍も入っているからか、おしゃれな感じ!」
次に着た服は、スカートが広がっている膝丈の黒いワンピースで、刺繍も柄もないシンプルなものだった。
「黒く広がっているスカートから見えてくるクララちゃんの白い足が本当に綺麗だよ!」
次に着たのは、前が短く後ろが長いスカートの水色のワンピースだ。
「後ろからは清楚だけど、正面から見たら扇情的だね! さすがに、太腿までは出し過ぎかも」
ここでは、サーファも褒めるだけではなかった。理由は、サーファ自身も言っている通り、短い部分が太腿まで露わになる程短かったからだ。さすがに、サーファもそこまでは許容出来なかった。
その後もユーリーが持ってきた服を全部着るまでファッションショーが、数時間も続いた。ユーリーは、ただただ見ているだけだったが、一つ一つでサーファが感想を言ってくれるので、クララも楽しくなっていた。
「うん。ありがとう」
ユーリーはそう言うと、クララの額にキスをしてからクララの部屋を出て行った。
「……行っちゃいました。この服って本当に全部貰って良いんでしょうか?」
「そのつもりでしょうから、頂きましょう」
「何だか、一生分の服を貰った気がします」
「恐らくですが、これからも服は増えていく事になりますよ」
「私の身体が成長するからですか?」
クララ的には、もう服を買いに行かなくても、この服だけで過ごしていく事が出来ると思っていた。そのため、これから着る服が増えるといわれても、それは自分の身体が成長するからとしか思えなかった。
「それもありますが、もっと別の理由があります」
「別の理由ですか?」
クララは、全くピンと来ていなかった。その様子を見て、サーファも気付いた事があった。
「もしかして、クララちゃんはユーリー様のご職業を知らないの?」
「え、お姫様じゃないんですか? そうじゃないと、こんなに沢山の服を買えないと思うんですが」
クララの答えを聞いて、サーファは目をぱちくりとさせる。
「本当に知らないんだね」
「ユーリー様は、魔族領では有名な服のデザイナーです。簡単に言ってしまえば、服の設計者ですね」
「服の設計者……って、もしかして、今日着た服は……!」
「はい。全て、ユーリー様がデザインされた服です。恐らくですが、近くの提携店から服を集めてきたのでしょう。お金は払っていると思いますが」
リリンの言う通り、昨日クララを見ていたユーリーは、ずっとどんな服を着させるかについて考えていた。だが、結局その答えが出ず、今日の午前中に城下にあるいくつもの提携店から自身がデザインした服を次々に買い取ってきたのだ。店側からは、いつも世話になっているため、差し上げると言われたが、きちんと対価は払うと言って聞かなかった。
「……ユーリーさんってお姫様ですし、きっと高級店ですよね?」
クララは、ユーリーがカタリナ達の娘である事から、ユーリーの服は高級品なのではと予想していた。
「そうですね。比較的安い物もありますが、基本的には高級品になります。時にはドレス以上の物までありますね。ですが、ほとんどの物は、ドレス以下のお値段になっています」
どのみち高級品という事は変わらない、クララは、本当に貰って良いのかと心配になる。
「ユーリー様のご厚意を無視する事になりますよ?」
クララの心配を見抜いたリリンからそんな事を言われてしまう。
「うぅ……有り難く貰います。なるべく汚さないようにしないと」
「そうですね。演習の手伝いには、着ていかないようにしておきましょう」
「ところで、マーガレットさんも同じお仕事なんですか?」
ユーリーの仕事が予想外の仕事だったので、マーガレットも同じような仕事をしているのではとクララは思っていた。
「同じではないですが、ある意味似ているとは言えるかもしれません。マーガレット様のご職業は、芸術家です」
「芸術家? 絵を描くって事ですか?」
「いえ、絵だけに限らず、彫刻などもやっていらっしゃいます」
「もしかして、だから、私の身体を触っていたんですか?」
昨日の時点で、何でこんなに触られるのだろうと不思議に思っていたクララだったが、この話を聞いて、少し納得がいった。もしかしたら、被写体の事をよく知るために触ったりする癖があるのかもしれないからだ。
「どうでしょう? 単に気になったからの可能性もあります。マーガレット様は、そういう方ですから」
「あ、そうなんですね。でも、どうしてユーリーさんは、私に服をくれたんでしょうか? それに別れ際にお礼も言われました」
「恐らく、多くの服を着て貰う事で、クララ様からアイデアを頂いたからではないでしょうか? そのお礼にこの服を頂けたのだと思います」
「なるほど……私なんかで参考になったんでしょうか?」
起伏に乏しい身体のクララは、自分で参考になったのか不安になる。そんなクララをサーファが抱き上げて膝に乗せる。
「そんな事ないよ。クララちゃん可愛かったもん。参考にならないはずないよ」
そう言われながら、クララの背中にサーファの胸が押しつけられていた。
「絶対、サーファさんの方がなった気がします……」
「私じゃ参考にならないよ。多分、クララちゃんの服を作るためだもん」
「えっ!?」
てっきり皆の服を作るために自分をモデルにしていると思っていたクララは、サーファの言葉に驚いて、クララは後ろを向く。すると、サーファの胸に顎を乗せる形になる。その事に複雑な表情をするクララだったが、もういつもの事なのですぐに普通の表情になる。
「でも、何で私の服を?」
「自分達のお古などではなく、クララさんに似合う服を着て欲しいのではないでしょうか? そのために、クララさんが気に入る服、似合う服を探っていたのだと思います。近い内に、またお見えになると思いますよ」
「良いなぁ。私も作って欲しいよ。可愛い服とか全然着られないんだもん」
「サーファは、痩せるなどといった次元の話ではないですからね」
「贅沢な悩みだと思います」
クララは頬を膨らます。サーファは、ニコニコとその頬を突っついていた。サーファに遊ばれていると思ったクララは、そのまま拗ねてサーファの胸に顔を埋めた。その二分後。静かな寝息が聞こえてくる。
「寝ちゃいました」
「こんなに沢山の服に着替えた事なんてなかったでしょうから、疲れたのでしょう。ちょうど、サーファの胸が枕のようになっていたのでしょうね。恐らく、そのまま離れないでしょうから、一緒に寝てあげて下さい」
「えっ? あっ、本当だ」
クララを離そうとするサーファだったが、クララが服をしっかりと掴んでおり、離すことが出来なかった。前にも似たような事があったリリンは、そうなるだろうと見抜いていた。
このまま起こすのも悪いので、サーファは、クララを抱えて一緒に布団に入り、五秒後には一緒に寝息を立て始めた。
「ぶ、無事で良かったよ」
「うん。ごめんね。心配掛けて。明日からは、薬室にも復帰するから、今日はよろしくね」
「うん。何か優先して作った方が良いものってある?」
「取りあえず、火傷薬とかは後回しで、いつも通りのものを最優先にお願い。そっちは、結構常用するものもあるから」
「わ、分かった。頑張るね」
「ああ、うん。ところで、話は変わるんだけど」
このタイミングで、クララはちらっとリリンを見て確認する。視線を受けたリリンは縦に頷いた。
「実は、昨日からマーガレットさんとユーリーさんがお城に帰ってきているんだ」
「……マー……ユー……」
アリエスは、突然の報告に脳内処理が間に合わず、上手く声に出せていなかった。
「だから、薬室にもマーガレットさんやユーリーさんが来るかもしれないから、そのつもりでいて。そろそろ慣れないと、カタリナさんも来られないから」
「ア……ウン……ガンバル……」
若干涙目で、片言になりつつもアリエスは頷いた。
「うん。頑張ってアリエスなら出来るって信じてるから」
クララからこう言われて、アリエスは、少しだけやる気が出る。クララに信じて貰えるというのは、アリエスにとってそれほどまでに大きな事なのだ。
「じゃ、じゃあ、薬室にいるね」
「うん。時間になったら、ちゃんと帰ってね。残って作業を続けようとか考えないように」
「うん。分かってる」
アリエスは、クララに手を振って薬室に入っていった。
「では、今日も講義をしていきましょうか」
「はい!」
「クララちゃんは、勉強熱心だなぁ」
「あなたも見習いなさい。クララさんがどこかへ出掛ける際、ある程度の地形を把握しているのと把握していないのでは、大きな差があります」
「それは……分かりますけど……」
「けどじゃありません。要領は良いのですから、あなたも頑張りなさい」
「はい……」
若干落ち込み気味なサーファの手をクララが握る。
「一緒に頑張りましょう」
「うん。そうだね。クララちゃんのためにも頑張ろう!」
クララの前で元気に手を突き上げると、クララも真似して、手を突き上げる。互いに互いを鼓舞する二人を、リリンは内心微笑ましく見ていた。
そこからまた一時間程講義をして、休憩を挟み、また一時間講義をしてから、昼食を食べる。この時は、アリエスも一緒に昼食を食べた。
そうして昼食を済ませたクララは、サーファの膝の上で薬学書を読み始めた。その間に、リリンが部屋の掃除を始める。
いつもの和やかな時間が流れる。だが、その時間は長続きしなかった。その理由は簡単だ。毎度の如くクララの部屋の扉が勢いよく開かれたからだ。
「クララいる?」
入ってきたのは、ユーリーだった。その後から大きな荷物を持ったメイドが、四人も入ってきた。メイド達は荷物を置いて、すぐに出て行く。
「えっと……ユーリーさん?」
「うん。正解。良く覚えてました」
ユーリーは、無表情のままクララを撫でる。そして、そのクララを膝に乗せているサーファに視線を向けた。
「この子は?」
「クララさんの護衛をしているサーファです。昨日は、色々とあり、席を外していました」
リリンがサーファの紹介をする。それに合わせて、サーファもクララを椅子に乗せて立ち上がる。
「サーファ・フロズヴィトニルです」
サーファはそう言って頭を下げる。
「うん。分かった。よろしく」
ユーリーは、そう言いながらサーファの事をジロジロと見る。サーファは、少し恥ずかしそうにしていたが、それでも一歩も動かずに視線に耐えていた。
「胸、大きくて大変?」
「え? えっと、動くときとかは大変です。後、着られる服が減っちゃいます」
「そう。服の尻尾穴は、どんな感じ?」
「物によっては小さかったり、すぐに破れたりします。私は、色々と動き回る事が多いので、余計にそういう経験が多いです」
「なるほど」
ユーリーは、サーファの話を聞いて、それをメモしていった。
「分かった」
メモを終えたユーリーは、クララの方を見る。
「クララに服を持ってきた。プレゼント。全部今すぐ着て」
「うぇ!? い、今すぐですか!?」
「そう。今すぐ。数が多いから」
「は、はい!」
突然の事に戸惑いつつも、クララはメイド達が置いていった荷物の一つを開く。そこには、大量のワンピースが入っていた。様々な色。様々な柄。様々な形。全く一緒のワンピースは、一つも存在しなかった。
クララは、リリンに手伝って貰いながら服を着替えていく。最初に着た服は、今までの物と違い、腰にベルトを着けるような服だった。そのおかげでウエストが強調されるようになる。
「可愛い! いつもよりもちょっとだけ大人っぽいよ」
ユーリーの表情は動かないが、サーファはニコニコで褒める。
次に着た服は、肩が紐の黒いワンピースだった。さすがに露出が多くなるので、上にはシャツを着ている。
「スカートに白い刺繍も入っているからか、おしゃれな感じ!」
次に着た服は、スカートが広がっている膝丈の黒いワンピースで、刺繍も柄もないシンプルなものだった。
「黒く広がっているスカートから見えてくるクララちゃんの白い足が本当に綺麗だよ!」
次に着たのは、前が短く後ろが長いスカートの水色のワンピースだ。
「後ろからは清楚だけど、正面から見たら扇情的だね! さすがに、太腿までは出し過ぎかも」
ここでは、サーファも褒めるだけではなかった。理由は、サーファ自身も言っている通り、短い部分が太腿まで露わになる程短かったからだ。さすがに、サーファもそこまでは許容出来なかった。
その後もユーリーが持ってきた服を全部着るまでファッションショーが、数時間も続いた。ユーリーは、ただただ見ているだけだったが、一つ一つでサーファが感想を言ってくれるので、クララも楽しくなっていた。
「うん。ありがとう」
ユーリーはそう言うと、クララの額にキスをしてからクララの部屋を出て行った。
「……行っちゃいました。この服って本当に全部貰って良いんでしょうか?」
「そのつもりでしょうから、頂きましょう」
「何だか、一生分の服を貰った気がします」
「恐らくですが、これからも服は増えていく事になりますよ」
「私の身体が成長するからですか?」
クララ的には、もう服を買いに行かなくても、この服だけで過ごしていく事が出来ると思っていた。そのため、これから着る服が増えるといわれても、それは自分の身体が成長するからとしか思えなかった。
「それもありますが、もっと別の理由があります」
「別の理由ですか?」
クララは、全くピンと来ていなかった。その様子を見て、サーファも気付いた事があった。
「もしかして、クララちゃんはユーリー様のご職業を知らないの?」
「え、お姫様じゃないんですか? そうじゃないと、こんなに沢山の服を買えないと思うんですが」
クララの答えを聞いて、サーファは目をぱちくりとさせる。
「本当に知らないんだね」
「ユーリー様は、魔族領では有名な服のデザイナーです。簡単に言ってしまえば、服の設計者ですね」
「服の設計者……って、もしかして、今日着た服は……!」
「はい。全て、ユーリー様がデザインされた服です。恐らくですが、近くの提携店から服を集めてきたのでしょう。お金は払っていると思いますが」
リリンの言う通り、昨日クララを見ていたユーリーは、ずっとどんな服を着させるかについて考えていた。だが、結局その答えが出ず、今日の午前中に城下にあるいくつもの提携店から自身がデザインした服を次々に買い取ってきたのだ。店側からは、いつも世話になっているため、差し上げると言われたが、きちんと対価は払うと言って聞かなかった。
「……ユーリーさんってお姫様ですし、きっと高級店ですよね?」
クララは、ユーリーがカタリナ達の娘である事から、ユーリーの服は高級品なのではと予想していた。
「そうですね。比較的安い物もありますが、基本的には高級品になります。時にはドレス以上の物までありますね。ですが、ほとんどの物は、ドレス以下のお値段になっています」
どのみち高級品という事は変わらない、クララは、本当に貰って良いのかと心配になる。
「ユーリー様のご厚意を無視する事になりますよ?」
クララの心配を見抜いたリリンからそんな事を言われてしまう。
「うぅ……有り難く貰います。なるべく汚さないようにしないと」
「そうですね。演習の手伝いには、着ていかないようにしておきましょう」
「ところで、マーガレットさんも同じお仕事なんですか?」
ユーリーの仕事が予想外の仕事だったので、マーガレットも同じような仕事をしているのではとクララは思っていた。
「同じではないですが、ある意味似ているとは言えるかもしれません。マーガレット様のご職業は、芸術家です」
「芸術家? 絵を描くって事ですか?」
「いえ、絵だけに限らず、彫刻などもやっていらっしゃいます」
「もしかして、だから、私の身体を触っていたんですか?」
昨日の時点で、何でこんなに触られるのだろうと不思議に思っていたクララだったが、この話を聞いて、少し納得がいった。もしかしたら、被写体の事をよく知るために触ったりする癖があるのかもしれないからだ。
「どうでしょう? 単に気になったからの可能性もあります。マーガレット様は、そういう方ですから」
「あ、そうなんですね。でも、どうしてユーリーさんは、私に服をくれたんでしょうか? それに別れ際にお礼も言われました」
「恐らく、多くの服を着て貰う事で、クララ様からアイデアを頂いたからではないでしょうか? そのお礼にこの服を頂けたのだと思います」
「なるほど……私なんかで参考になったんでしょうか?」
起伏に乏しい身体のクララは、自分で参考になったのか不安になる。そんなクララをサーファが抱き上げて膝に乗せる。
「そんな事ないよ。クララちゃん可愛かったもん。参考にならないはずないよ」
そう言われながら、クララの背中にサーファの胸が押しつけられていた。
「絶対、サーファさんの方がなった気がします……」
「私じゃ参考にならないよ。多分、クララちゃんの服を作るためだもん」
「えっ!?」
てっきり皆の服を作るために自分をモデルにしていると思っていたクララは、サーファの言葉に驚いて、クララは後ろを向く。すると、サーファの胸に顎を乗せる形になる。その事に複雑な表情をするクララだったが、もういつもの事なのですぐに普通の表情になる。
「でも、何で私の服を?」
「自分達のお古などではなく、クララさんに似合う服を着て欲しいのではないでしょうか? そのために、クララさんが気に入る服、似合う服を探っていたのだと思います。近い内に、またお見えになると思いますよ」
「良いなぁ。私も作って欲しいよ。可愛い服とか全然着られないんだもん」
「サーファは、痩せるなどといった次元の話ではないですからね」
「贅沢な悩みだと思います」
クララは頬を膨らます。サーファは、ニコニコとその頬を突っついていた。サーファに遊ばれていると思ったクララは、そのまま拗ねてサーファの胸に顔を埋めた。その二分後。静かな寝息が聞こえてくる。
「寝ちゃいました」
「こんなに沢山の服に着替えた事なんてなかったでしょうから、疲れたのでしょう。ちょうど、サーファの胸が枕のようになっていたのでしょうね。恐らく、そのまま離れないでしょうから、一緒に寝てあげて下さい」
「えっ? あっ、本当だ」
クララを離そうとするサーファだったが、クララが服をしっかりと掴んでおり、離すことが出来なかった。前にも似たような事があったリリンは、そうなるだろうと見抜いていた。
このまま起こすのも悪いので、サーファは、クララを抱えて一緒に布団に入り、五秒後には一緒に寝息を立て始めた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる