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可愛がられる聖女
大量の服
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翌日。アリエスが、一度クララの部屋にやってくる。
「ぶ、無事で良かったよ」
「うん。ごめんね。心配掛けて。明日からは、薬室にも復帰するから、今日はよろしくね」
「うん。何か優先して作った方が良いものってある?」
「取りあえず、火傷薬とかは後回しで、いつも通りのものを最優先にお願い。そっちは、結構常用するものもあるから」
「わ、分かった。頑張るね」
「ああ、うん。ところで、話は変わるんだけど」
このタイミングで、クララはちらっとリリンを見て確認する。視線を受けたリリンは縦に頷いた。
「実は、昨日からマーガレットさんとユーリーさんがお城に帰ってきているんだ」
「……マー……ユー……」
アリエスは、突然の報告に脳内処理が間に合わず、上手く声に出せていなかった。
「だから、薬室にもマーガレットさんやユーリーさんが来るかもしれないから、そのつもりでいて。そろそろ慣れないと、カタリナさんも来られないから」
「ア……ウン……ガンバル……」
若干涙目で、片言になりつつもアリエスは頷いた。
「うん。頑張ってアリエスなら出来るって信じてるから」
クララからこう言われて、アリエスは、少しだけやる気が出る。クララに信じて貰えるというのは、アリエスにとってそれほどまでに大きな事なのだ。
「じゃ、じゃあ、薬室にいるね」
「うん。時間になったら、ちゃんと帰ってね。残って作業を続けようとか考えないように」
「うん。分かってる」
アリエスは、クララに手を振って薬室に入っていった。
「では、今日も講義をしていきましょうか」
「はい!」
「クララちゃんは、勉強熱心だなぁ」
「あなたも見習いなさい。クララさんがどこかへ出掛ける際、ある程度の地形を把握しているのと把握していないのでは、大きな差があります」
「それは……分かりますけど……」
「けどじゃありません。要領は良いのですから、あなたも頑張りなさい」
「はい……」
若干落ち込み気味なサーファの手をクララが握る。
「一緒に頑張りましょう」
「うん。そうだね。クララちゃんのためにも頑張ろう!」
クララの前で元気に手を突き上げると、クララも真似して、手を突き上げる。互いに互いを鼓舞する二人を、リリンは内心微笑ましく見ていた。
そこからまた一時間程講義をして、休憩を挟み、また一時間講義をしてから、昼食を食べる。この時は、アリエスも一緒に昼食を食べた。
そうして昼食を済ませたクララは、サーファの膝の上で薬学書を読み始めた。その間に、リリンが部屋の掃除を始める。
いつもの和やかな時間が流れる。だが、その時間は長続きしなかった。その理由は簡単だ。毎度の如くクララの部屋の扉が勢いよく開かれたからだ。
「クララいる?」
入ってきたのは、ユーリーだった。その後から大きな荷物を持ったメイドが、四人も入ってきた。メイド達は荷物を置いて、すぐに出て行く。
「えっと……ユーリーさん?」
「うん。正解。良く覚えてました」
ユーリーは、無表情のままクララを撫でる。そして、そのクララを膝に乗せているサーファに視線を向けた。
「この子は?」
「クララさんの護衛をしているサーファです。昨日は、色々とあり、席を外していました」
リリンがサーファの紹介をする。それに合わせて、サーファもクララを椅子に乗せて立ち上がる。
「サーファ・フロズヴィトニルです」
サーファはそう言って頭を下げる。
「うん。分かった。よろしく」
ユーリーは、そう言いながらサーファの事をジロジロと見る。サーファは、少し恥ずかしそうにしていたが、それでも一歩も動かずに視線に耐えていた。
「胸、大きくて大変?」
「え? えっと、動くときとかは大変です。後、着られる服が減っちゃいます」
「そう。服の尻尾穴は、どんな感じ?」
「物によっては小さかったり、すぐに破れたりします。私は、色々と動き回る事が多いので、余計にそういう経験が多いです」
「なるほど」
ユーリーは、サーファの話を聞いて、それをメモしていった。
「分かった」
メモを終えたユーリーは、クララの方を見る。
「クララに服を持ってきた。プレゼント。全部今すぐ着て」
「うぇ!? い、今すぐですか!?」
「そう。今すぐ。数が多いから」
「は、はい!」
突然の事に戸惑いつつも、クララはメイド達が置いていった荷物の一つを開く。そこには、大量のワンピースが入っていた。様々な色。様々な柄。様々な形。全く一緒のワンピースは、一つも存在しなかった。
クララは、リリンに手伝って貰いながら服を着替えていく。最初に着た服は、今までの物と違い、腰にベルトを着けるような服だった。そのおかげでウエストが強調されるようになる。
「可愛い! いつもよりもちょっとだけ大人っぽいよ」
ユーリーの表情は動かないが、サーファはニコニコで褒める。
次に着た服は、肩が紐の黒いワンピースだった。さすがに露出が多くなるので、上にはシャツを着ている。
「スカートに白い刺繍も入っているからか、おしゃれな感じ!」
次に着た服は、スカートが広がっている膝丈の黒いワンピースで、刺繍も柄もないシンプルなものだった。
「黒く広がっているスカートから見えてくるクララちゃんの白い足が本当に綺麗だよ!」
次に着たのは、前が短く後ろが長いスカートの水色のワンピースだ。
「後ろからは清楚だけど、正面から見たら扇情的だね! さすがに、太腿までは出し過ぎかも」
ここでは、サーファも褒めるだけではなかった。理由は、サーファ自身も言っている通り、短い部分が太腿まで露わになる程短かったからだ。さすがに、サーファもそこまでは許容出来なかった。
その後もユーリーが持ってきた服を全部着るまでファッションショーが、数時間も続いた。ユーリーは、ただただ見ているだけだったが、一つ一つでサーファが感想を言ってくれるので、クララも楽しくなっていた。
「うん。ありがとう」
ユーリーはそう言うと、クララの額にキスをしてからクララの部屋を出て行った。
「……行っちゃいました。この服って本当に全部貰って良いんでしょうか?」
「そのつもりでしょうから、頂きましょう」
「何だか、一生分の服を貰った気がします」
「恐らくですが、これからも服は増えていく事になりますよ」
「私の身体が成長するからですか?」
クララ的には、もう服を買いに行かなくても、この服だけで過ごしていく事が出来ると思っていた。そのため、これから着る服が増えるといわれても、それは自分の身体が成長するからとしか思えなかった。
「それもありますが、もっと別の理由があります」
「別の理由ですか?」
クララは、全くピンと来ていなかった。その様子を見て、サーファも気付いた事があった。
「もしかして、クララちゃんはユーリー様のご職業を知らないの?」
「え、お姫様じゃないんですか? そうじゃないと、こんなに沢山の服を買えないと思うんですが」
クララの答えを聞いて、サーファは目をぱちくりとさせる。
「本当に知らないんだね」
「ユーリー様は、魔族領では有名な服のデザイナーです。簡単に言ってしまえば、服の設計者ですね」
「服の設計者……って、もしかして、今日着た服は……!」
「はい。全て、ユーリー様がデザインされた服です。恐らくですが、近くの提携店から服を集めてきたのでしょう。お金は払っていると思いますが」
リリンの言う通り、昨日クララを見ていたユーリーは、ずっとどんな服を着させるかについて考えていた。だが、結局その答えが出ず、今日の午前中に城下にあるいくつもの提携店から自身がデザインした服を次々に買い取ってきたのだ。店側からは、いつも世話になっているため、差し上げると言われたが、きちんと対価は払うと言って聞かなかった。
「……ユーリーさんってお姫様ですし、きっと高級店ですよね?」
クララは、ユーリーがカタリナ達の娘である事から、ユーリーの服は高級品なのではと予想していた。
「そうですね。比較的安い物もありますが、基本的には高級品になります。時にはドレス以上の物までありますね。ですが、ほとんどの物は、ドレス以下のお値段になっています」
どのみち高級品という事は変わらない、クララは、本当に貰って良いのかと心配になる。
「ユーリー様のご厚意を無視する事になりますよ?」
クララの心配を見抜いたリリンからそんな事を言われてしまう。
「うぅ……有り難く貰います。なるべく汚さないようにしないと」
「そうですね。演習の手伝いには、着ていかないようにしておきましょう」
「ところで、マーガレットさんも同じお仕事なんですか?」
ユーリーの仕事が予想外の仕事だったので、マーガレットも同じような仕事をしているのではとクララは思っていた。
「同じではないですが、ある意味似ているとは言えるかもしれません。マーガレット様のご職業は、芸術家です」
「芸術家? 絵を描くって事ですか?」
「いえ、絵だけに限らず、彫刻などもやっていらっしゃいます」
「もしかして、だから、私の身体を触っていたんですか?」
昨日の時点で、何でこんなに触られるのだろうと不思議に思っていたクララだったが、この話を聞いて、少し納得がいった。もしかしたら、被写体の事をよく知るために触ったりする癖があるのかもしれないからだ。
「どうでしょう? 単に気になったからの可能性もあります。マーガレット様は、そういう方ですから」
「あ、そうなんですね。でも、どうしてユーリーさんは、私に服をくれたんでしょうか? それに別れ際にお礼も言われました」
「恐らく、多くの服を着て貰う事で、クララ様からアイデアを頂いたからではないでしょうか? そのお礼にこの服を頂けたのだと思います」
「なるほど……私なんかで参考になったんでしょうか?」
起伏に乏しい身体のクララは、自分で参考になったのか不安になる。そんなクララをサーファが抱き上げて膝に乗せる。
「そんな事ないよ。クララちゃん可愛かったもん。参考にならないはずないよ」
そう言われながら、クララの背中にサーファの胸が押しつけられていた。
「絶対、サーファさんの方がなった気がします……」
「私じゃ参考にならないよ。多分、クララちゃんの服を作るためだもん」
「えっ!?」
てっきり皆の服を作るために自分をモデルにしていると思っていたクララは、サーファの言葉に驚いて、クララは後ろを向く。すると、サーファの胸に顎を乗せる形になる。その事に複雑な表情をするクララだったが、もういつもの事なのですぐに普通の表情になる。
「でも、何で私の服を?」
「自分達のお古などではなく、クララさんに似合う服を着て欲しいのではないでしょうか? そのために、クララさんが気に入る服、似合う服を探っていたのだと思います。近い内に、またお見えになると思いますよ」
「良いなぁ。私も作って欲しいよ。可愛い服とか全然着られないんだもん」
「サーファは、痩せるなどといった次元の話ではないですからね」
「贅沢な悩みだと思います」
クララは頬を膨らます。サーファは、ニコニコとその頬を突っついていた。サーファに遊ばれていると思ったクララは、そのまま拗ねてサーファの胸に顔を埋めた。その二分後。静かな寝息が聞こえてくる。
「寝ちゃいました」
「こんなに沢山の服に着替えた事なんてなかったでしょうから、疲れたのでしょう。ちょうど、サーファの胸が枕のようになっていたのでしょうね。恐らく、そのまま離れないでしょうから、一緒に寝てあげて下さい」
「えっ? あっ、本当だ」
クララを離そうとするサーファだったが、クララが服をしっかりと掴んでおり、離すことが出来なかった。前にも似たような事があったリリンは、そうなるだろうと見抜いていた。
このまま起こすのも悪いので、サーファは、クララを抱えて一緒に布団に入り、五秒後には一緒に寝息を立て始めた。
「ぶ、無事で良かったよ」
「うん。ごめんね。心配掛けて。明日からは、薬室にも復帰するから、今日はよろしくね」
「うん。何か優先して作った方が良いものってある?」
「取りあえず、火傷薬とかは後回しで、いつも通りのものを最優先にお願い。そっちは、結構常用するものもあるから」
「わ、分かった。頑張るね」
「ああ、うん。ところで、話は変わるんだけど」
このタイミングで、クララはちらっとリリンを見て確認する。視線を受けたリリンは縦に頷いた。
「実は、昨日からマーガレットさんとユーリーさんがお城に帰ってきているんだ」
「……マー……ユー……」
アリエスは、突然の報告に脳内処理が間に合わず、上手く声に出せていなかった。
「だから、薬室にもマーガレットさんやユーリーさんが来るかもしれないから、そのつもりでいて。そろそろ慣れないと、カタリナさんも来られないから」
「ア……ウン……ガンバル……」
若干涙目で、片言になりつつもアリエスは頷いた。
「うん。頑張ってアリエスなら出来るって信じてるから」
クララからこう言われて、アリエスは、少しだけやる気が出る。クララに信じて貰えるというのは、アリエスにとってそれほどまでに大きな事なのだ。
「じゃ、じゃあ、薬室にいるね」
「うん。時間になったら、ちゃんと帰ってね。残って作業を続けようとか考えないように」
「うん。分かってる」
アリエスは、クララに手を振って薬室に入っていった。
「では、今日も講義をしていきましょうか」
「はい!」
「クララちゃんは、勉強熱心だなぁ」
「あなたも見習いなさい。クララさんがどこかへ出掛ける際、ある程度の地形を把握しているのと把握していないのでは、大きな差があります」
「それは……分かりますけど……」
「けどじゃありません。要領は良いのですから、あなたも頑張りなさい」
「はい……」
若干落ち込み気味なサーファの手をクララが握る。
「一緒に頑張りましょう」
「うん。そうだね。クララちゃんのためにも頑張ろう!」
クララの前で元気に手を突き上げると、クララも真似して、手を突き上げる。互いに互いを鼓舞する二人を、リリンは内心微笑ましく見ていた。
そこからまた一時間程講義をして、休憩を挟み、また一時間講義をしてから、昼食を食べる。この時は、アリエスも一緒に昼食を食べた。
そうして昼食を済ませたクララは、サーファの膝の上で薬学書を読み始めた。その間に、リリンが部屋の掃除を始める。
いつもの和やかな時間が流れる。だが、その時間は長続きしなかった。その理由は簡単だ。毎度の如くクララの部屋の扉が勢いよく開かれたからだ。
「クララいる?」
入ってきたのは、ユーリーだった。その後から大きな荷物を持ったメイドが、四人も入ってきた。メイド達は荷物を置いて、すぐに出て行く。
「えっと……ユーリーさん?」
「うん。正解。良く覚えてました」
ユーリーは、無表情のままクララを撫でる。そして、そのクララを膝に乗せているサーファに視線を向けた。
「この子は?」
「クララさんの護衛をしているサーファです。昨日は、色々とあり、席を外していました」
リリンがサーファの紹介をする。それに合わせて、サーファもクララを椅子に乗せて立ち上がる。
「サーファ・フロズヴィトニルです」
サーファはそう言って頭を下げる。
「うん。分かった。よろしく」
ユーリーは、そう言いながらサーファの事をジロジロと見る。サーファは、少し恥ずかしそうにしていたが、それでも一歩も動かずに視線に耐えていた。
「胸、大きくて大変?」
「え? えっと、動くときとかは大変です。後、着られる服が減っちゃいます」
「そう。服の尻尾穴は、どんな感じ?」
「物によっては小さかったり、すぐに破れたりします。私は、色々と動き回る事が多いので、余計にそういう経験が多いです」
「なるほど」
ユーリーは、サーファの話を聞いて、それをメモしていった。
「分かった」
メモを終えたユーリーは、クララの方を見る。
「クララに服を持ってきた。プレゼント。全部今すぐ着て」
「うぇ!? い、今すぐですか!?」
「そう。今すぐ。数が多いから」
「は、はい!」
突然の事に戸惑いつつも、クララはメイド達が置いていった荷物の一つを開く。そこには、大量のワンピースが入っていた。様々な色。様々な柄。様々な形。全く一緒のワンピースは、一つも存在しなかった。
クララは、リリンに手伝って貰いながら服を着替えていく。最初に着た服は、今までの物と違い、腰にベルトを着けるような服だった。そのおかげでウエストが強調されるようになる。
「可愛い! いつもよりもちょっとだけ大人っぽいよ」
ユーリーの表情は動かないが、サーファはニコニコで褒める。
次に着た服は、肩が紐の黒いワンピースだった。さすがに露出が多くなるので、上にはシャツを着ている。
「スカートに白い刺繍も入っているからか、おしゃれな感じ!」
次に着た服は、スカートが広がっている膝丈の黒いワンピースで、刺繍も柄もないシンプルなものだった。
「黒く広がっているスカートから見えてくるクララちゃんの白い足が本当に綺麗だよ!」
次に着たのは、前が短く後ろが長いスカートの水色のワンピースだ。
「後ろからは清楚だけど、正面から見たら扇情的だね! さすがに、太腿までは出し過ぎかも」
ここでは、サーファも褒めるだけではなかった。理由は、サーファ自身も言っている通り、短い部分が太腿まで露わになる程短かったからだ。さすがに、サーファもそこまでは許容出来なかった。
その後もユーリーが持ってきた服を全部着るまでファッションショーが、数時間も続いた。ユーリーは、ただただ見ているだけだったが、一つ一つでサーファが感想を言ってくれるので、クララも楽しくなっていた。
「うん。ありがとう」
ユーリーはそう言うと、クララの額にキスをしてからクララの部屋を出て行った。
「……行っちゃいました。この服って本当に全部貰って良いんでしょうか?」
「そのつもりでしょうから、頂きましょう」
「何だか、一生分の服を貰った気がします」
「恐らくですが、これからも服は増えていく事になりますよ」
「私の身体が成長するからですか?」
クララ的には、もう服を買いに行かなくても、この服だけで過ごしていく事が出来ると思っていた。そのため、これから着る服が増えるといわれても、それは自分の身体が成長するからとしか思えなかった。
「それもありますが、もっと別の理由があります」
「別の理由ですか?」
クララは、全くピンと来ていなかった。その様子を見て、サーファも気付いた事があった。
「もしかして、クララちゃんはユーリー様のご職業を知らないの?」
「え、お姫様じゃないんですか? そうじゃないと、こんなに沢山の服を買えないと思うんですが」
クララの答えを聞いて、サーファは目をぱちくりとさせる。
「本当に知らないんだね」
「ユーリー様は、魔族領では有名な服のデザイナーです。簡単に言ってしまえば、服の設計者ですね」
「服の設計者……って、もしかして、今日着た服は……!」
「はい。全て、ユーリー様がデザインされた服です。恐らくですが、近くの提携店から服を集めてきたのでしょう。お金は払っていると思いますが」
リリンの言う通り、昨日クララを見ていたユーリーは、ずっとどんな服を着させるかについて考えていた。だが、結局その答えが出ず、今日の午前中に城下にあるいくつもの提携店から自身がデザインした服を次々に買い取ってきたのだ。店側からは、いつも世話になっているため、差し上げると言われたが、きちんと対価は払うと言って聞かなかった。
「……ユーリーさんってお姫様ですし、きっと高級店ですよね?」
クララは、ユーリーがカタリナ達の娘である事から、ユーリーの服は高級品なのではと予想していた。
「そうですね。比較的安い物もありますが、基本的には高級品になります。時にはドレス以上の物までありますね。ですが、ほとんどの物は、ドレス以下のお値段になっています」
どのみち高級品という事は変わらない、クララは、本当に貰って良いのかと心配になる。
「ユーリー様のご厚意を無視する事になりますよ?」
クララの心配を見抜いたリリンからそんな事を言われてしまう。
「うぅ……有り難く貰います。なるべく汚さないようにしないと」
「そうですね。演習の手伝いには、着ていかないようにしておきましょう」
「ところで、マーガレットさんも同じお仕事なんですか?」
ユーリーの仕事が予想外の仕事だったので、マーガレットも同じような仕事をしているのではとクララは思っていた。
「同じではないですが、ある意味似ているとは言えるかもしれません。マーガレット様のご職業は、芸術家です」
「芸術家? 絵を描くって事ですか?」
「いえ、絵だけに限らず、彫刻などもやっていらっしゃいます」
「もしかして、だから、私の身体を触っていたんですか?」
昨日の時点で、何でこんなに触られるのだろうと不思議に思っていたクララだったが、この話を聞いて、少し納得がいった。もしかしたら、被写体の事をよく知るために触ったりする癖があるのかもしれないからだ。
「どうでしょう? 単に気になったからの可能性もあります。マーガレット様は、そういう方ですから」
「あ、そうなんですね。でも、どうしてユーリーさんは、私に服をくれたんでしょうか? それに別れ際にお礼も言われました」
「恐らく、多くの服を着て貰う事で、クララ様からアイデアを頂いたからではないでしょうか? そのお礼にこの服を頂けたのだと思います」
「なるほど……私なんかで参考になったんでしょうか?」
起伏に乏しい身体のクララは、自分で参考になったのか不安になる。そんなクララをサーファが抱き上げて膝に乗せる。
「そんな事ないよ。クララちゃん可愛かったもん。参考にならないはずないよ」
そう言われながら、クララの背中にサーファの胸が押しつけられていた。
「絶対、サーファさんの方がなった気がします……」
「私じゃ参考にならないよ。多分、クララちゃんの服を作るためだもん」
「えっ!?」
てっきり皆の服を作るために自分をモデルにしていると思っていたクララは、サーファの言葉に驚いて、クララは後ろを向く。すると、サーファの胸に顎を乗せる形になる。その事に複雑な表情をするクララだったが、もういつもの事なのですぐに普通の表情になる。
「でも、何で私の服を?」
「自分達のお古などではなく、クララさんに似合う服を着て欲しいのではないでしょうか? そのために、クララさんが気に入る服、似合う服を探っていたのだと思います。近い内に、またお見えになると思いますよ」
「良いなぁ。私も作って欲しいよ。可愛い服とか全然着られないんだもん」
「サーファは、痩せるなどといった次元の話ではないですからね」
「贅沢な悩みだと思います」
クララは頬を膨らます。サーファは、ニコニコとその頬を突っついていた。サーファに遊ばれていると思ったクララは、そのまま拗ねてサーファの胸に顔を埋めた。その二分後。静かな寝息が聞こえてくる。
「寝ちゃいました」
「こんなに沢山の服に着替えた事なんてなかったでしょうから、疲れたのでしょう。ちょうど、サーファの胸が枕のようになっていたのでしょうね。恐らく、そのまま離れないでしょうから、一緒に寝てあげて下さい」
「えっ? あっ、本当だ」
クララを離そうとするサーファだったが、クララが服をしっかりと掴んでおり、離すことが出来なかった。前にも似たような事があったリリンは、そうなるだろうと見抜いていた。
このまま起こすのも悪いので、サーファは、クララを抱えて一緒に布団に入り、五秒後には一緒に寝息を立て始めた。
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